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介護業界を複雑な事務作業から解放――、freeeが介護業界向け統合パッケージを提供

 フリー株式会社(freee)は23日、介護事業者向けに「介護業界向け統合パッケージプラン」の提供を開始したと発表した。同プランを提供する背景について、フリー 医療福祉事業部長の和田矩明氏は、「介護業界は法改正が多く業務も複雑で、今でも紙やExcelを使ったアナログ作業が主流となっている。このようなアナログで複雑な事務作業から介護業界を解放することを目指したい」としている。

フリー 医療福祉事業部長 和田矩明氏

 和田氏は、介護業界の課題として、「人材不足」「低賃金と労働環境」「赤字経営」「DX化の遅れ」の4点を挙げる。まず人材不足について和田氏は、厚生労働省のデータから、「介護職員の不足は、2026年度には約25万人、2040年には約57万人にまで増加することが見込まれている。また、介護業界の有効求人倍率は、2019年をピークに低下傾向にはなっているが、2021年は3.6で、全業種の3倍以上にのぼっている」と指摘する。

介護業界での課題1:人材不足

 賃金と労働環境については、介護労働安定センターの調査から、「労働条件等の悩みや不安、不満として、『人手不足』の51%に次いで『仕事内容のわりに賃金が低い』との回答が41.4%となっており、厳しい労働条件が伺える」(和田氏)とした。

介護業界での課題2:低賃金&労働環境

 赤字経営の企業や倒産企業も増加しており、東京商工リサーチによると2024年1月~8月における介護事業者の倒産件数は114件(前年同期比44.3%増)。さらに、DX化についても、総務省の調査で医療・福祉業界が特に後れをとっていることが明らかになっており、同業界の78.7%が「DXの取り組み予定がない」と回答したという。

介護業界での課題3:赤字経営企業・倒産企業増加

 また和田氏は、厚労省のICT導入支援事業により、フロント部分では介護ソフトやタブレットなどの導入が加速しているものの、バックオフィスソフトの導入はわずか2.4%にとどまっている点を指摘。さらに、バックオフィス業務は領域ごとソフトが存在し、それぞれの領域で分断されていることや、業界で提供されているシステムやツールの数が非常に多く、介護事業者はどれが自社に最適か判断するのが困難だとし、「これがDX化が進まない要因になっているのではないか」と述べている。

介護業界での課題4:DX化の遅れ

 こうした課題を解決すべく、フリーでは2023年に医療福祉事業部を組成、同業界に特化したサービスや機能を提供してきた。それをまとめたものが、今回発表した介護業界向け統合パッケージプランだという。

freeeは介護業界に特化したニーズを実現

 介護業界に特化したサービスのひとつが、2023年6月に提供開始した「freee介護加算」だ。同サービスでは、必要情報を入力するだけで処遇改善加算計画書を自動で作成できるほか、処遇改善手当も自動計算が可能だ。また、処遇改善加算報告書の作成も、計画書や給与を転記することなくボタンひとつで自動作成できるという。

freee介護加算

 2024年9月には、電子契約サービス「freeeサイン」でも介護業界に特化した機能を提供開始した。介護業界で普及が進むタブレット端末を使い、その場で契約が締結できるというもので、契約者は契約内容をタブレット上で確認し、手書きで署名するだけだ。締結した文書はクラウド上に自動で保管され、保管場所や紙の管理にかかるコストの削減が見込める。

freeeサイン

 10月10日には、介護業界にも対応したサービスとして、「freee人事労務 AIシフト管理β版」を発表している。「介護業界では、配置基準や必要な資格保有者の人数が定められており、単純に人数を割り当てるだけでは不十分。そのため、シフト作成の知識やノウハウが施設長個人に属人化するという課題もあった」と和田氏。AIシフト管理を利用すれば、こうした複雑な要件を考慮しながら、AIで自動的にシフトが作成できるという。

freee人事労務 AIシフト管理における介護業界向け機能

 介護業界向け統合パッケージプランでは、これらのサービスを含めたさまざまなfreeeプロダクトを任意で組み合わせ、統合パッケージとして提供する。価格は、複数のプロダクトを同時導入することで、通常価格から15%を割引する。

 和田氏は、「フロント業務と同様、freeeプロダクトでバックオフィス業務を統合することで、法務、人事労務、会計といった領域ごとに分断されていた情報管理を一元化してもらいたい」と述べた。