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日本オラクル、“他社より早く容易に移行できる”Oracle Cloud VMware Solutionの優位性をアピール
クラウド移行後の安定運用、クラウドを最大活用可能といったメリットも強調
2024年7月11日 06:15
日本オラクル株式会社は、クラウドサービスOracle Cloud Infrastructure上のVMwareサービス「Oracle Cloud VMware Solution」について説明するプレスブリーフィングを7月9日に開催した。
VMwareサービスは、大手メガクラウドであるAWS、Google Cloud、Azureがいずれも提供している。そうした中でのOracle Cloud VMware Solutionの特色が紹介された。
複数年にわたって価格を固定
最初に概要を紹介した日本オラクルの佐藤裕之氏(事業戦略統括 事業開発本部 本部長)は、同日に開催された新年度事業戦略説明会で使われたスライドをもとに、Oracle Cloud VMware Solutionの特徴を紹介した。
まず取り上げられたのは、複数年にわたって価格を固定していること。「(VMwareを買収した)Broadcom社の状況によって、VMware環境をどうしようかというお客さまが増えている」と佐藤氏。これに対して、価格を固定して提供する。
次に、オンプレミスからそのままクラウド移行でき、オンプレミスと同じ運用ができること。この点については次の近藤氏が説明する。
そのほか、移行支援サービスや、クラウド移行のためのパートナーとの協業などについても佐藤氏は触れた。
基幹系のOracle Database+VMwareの移行が増加
具体的な特徴については、日本オラクルの近藤暁太氏(事業戦略統括 事業開発本部 担当シニアマネジャー)が説明した。
近藤氏によると、ここ数年、Broadcomによる買収以前から、オンプレミスのVMwareからOCIへの移行が多いという。特に、基幹系のOracle DatabaseとVMware上のアプリケーションを使ったシステムをクラウドに移行するにあたって、Oracle Cloud VMware Solutionが選ばれることが多いと氏は語った。
国内事例としては、まず株式会社サンドラッグを近藤氏は紹介した。店舗システムをクラウドに集約したケースだ。クラウドにより、小さいところからスケールアップできること、新しい店舗ができてもすぐに用意できることがメリットだという。
また大日本印刷株式会社の事例は、Oracle DatabaseとVMwareを使った基幹システムをクラウド移行にしたケースだ。オンプレミスと同じ構成と規模を維持してクラウドに移行し、東京と大阪のDR構成も実現した。
オンプレミスの構成をそのまま持っていけるのが特徴
近藤氏はOracle Cloud VMware Solutionの特徴として、他社より早く容易に移行できること、クラウドに移行したあとで安定運用させることができること、クラウドを最大活用しやすいこと、の3点を主張した。
VMware環境を早く容易にクラウドに移行できる理由として、まずアーキテクチャの違いがある。氏は、他社のクラウドのVMwareサービスでは、VMware環境は通常のクラウドサービスとは異なるネットワークにデプロイされ、その間を工夫してつなぐ必要があると指摘する。これは、VMware環境にVLANが必要なところ、他社のクラウドサービスではL2(レイヤ2)接続を提供していないからだという。
一方OCIではL2接続を提供しているため、Oracle Cloud VMware Solutionでは顧客の仮想プライベートネットワークの中にVMware環境をデプロイして、同じネットワーク空間の中で使える、と近藤氏は述べた。
これによって、オンプレミスからクラウドに移行するときに、同じ構成のまま持っていけることを近藤氏はメリットとして強調した。そのため、移行のリスクや期間、テスト工数を減らせ、安定運用できるという。
そのほか、VMwareとそれ以外との間の転送速度が速くなることや、VMware専用ネットワークの中を顧客が触れることも近藤氏は挙げた。バックアップソフトなどサードパーティのソフトでは、VMwareの管理者権限がないと使えないものもあるという。
また、VMwareサービスで利用できる仮想サーバーの種類が他社より多く、5種類あることも近藤氏は特徴として挙げた。最小コア数は36コアで、必要に応じて増やせる。中でも、GPUサーバーも対応しているため、VMware上でVDIを使うときなどにも利用できると氏は語った。
加えて、アウトバウンドのデータ転送料が低コストなため、ハイブリッドクラウド構成で大きなVMが移動するときなどに有利なことを近藤氏は紹介。Microsoft製品のライセンスを持ち込めない「Listed Provider」の対象外なため、オンプレミスのWindowsをライセンスごと持ち込めることなども紹介した。
パッチやアッグレードのタイミングを顧客が制御
クラウドに移行したあとの安定運用については、OCIではパッチやアップグレードの適用を顧客が実行するため、タイミングを制御できる点を近藤氏はメリットとして挙げた。他社はよくも悪くもクラウドプロバイダーがプラットフォームの面倒をすべてみる。ただし、それによってクラウドプロバイダーがVMwareなどのバージョンを上げていくため、顧客側ではそのタイミングを制御できないと氏は主張した。
近藤氏は、特に基幹系だと勝手にバージョンが上がると問題になると述べ、OCIではクラウドの利点を使って短時間で本番と同じ構成のテスト環境を用意して検証してからバージョンアップができると語った。また、バージョンを顧客が選べるため、VMwareのバージョンをアップグレードすると動かないサードパーティソフトウェアがあることも紹介した。
OCIの特徴としては、ほかに障害ドメイン(FD)の考え方がある。ほかのメガクラウドでは、AWSのアベイラビリティゾーン(AZ)のように、1つのリージョンの中で複数系統のデータセンターを組み合わせて冗長化する仕組みがある。OCIではその代わりに、1つのデータセンターの中で電源などを別系統にしたFDが3つ用意されて、冗長化できるようになっている。この方式について近藤氏は、冗長化するのにAZではストレッチクラスターを作ることになって手間がかかるとして、OCIが優位だと主張した。
同一ネットワーク構成でクラウド活用も
クラウドの最大活用についても、前述した顧客のネットワーク内でVMware環境をデプロイできることを近藤氏は挙げた。クラウドに移行してから、例えばデータベースをマネージドサービスに変更したり、仮想マシンをOCIのコンピュートサービスに変更したりするのもやりやすいという。
また、AzureやGoogle Cloudとのインターコネクトも用意しているため、マルチクラウド構成もやりやすいことも挙げられた。
そのほか、Oracle Cloud VMware Solutionはグローバルのほぼすべてのリージョンで使えることも近藤氏は紹介した。パブリックリージョンのほか、専用リージョン(Dedicated Region)などでもサポートされる。