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TIS、金融業界向けモダナイゼーションサービスで生成AIを活用した仕様書作成オプションを提供

 TIS株式会社は17日、金融業界で稼働する基幹系システムのモダナイゼーション実施後のJavaプログラムに対して、生成AIを活用して仕様書を自動生成する生成AI仕様書作成オプションを提供開始した。

 生成AI仕様書作成オプションは、TISの金融業界向けモダナイゼーションの既存サービス群を体系化したカテゴリー「金融×モダナイゼーション」のラインアップの一つとして展開する。生成AI仕様書作成オプションでは、モダナイゼーション後の仕様書がない場合や実態と乖離(かいり)している場合でも、生成AIによってプログラムの意図や処理構造を自動的に把握・整理できるようになり、保守や追加開発時の不安を軽減する。

生成AI仕様書作成オプションの提供イメージ

 TISではこれまで、レガシー資産に対してコストを抑えながら中長期的な保守・運用を可能とする「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」を提供してきた。「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」は、プログラムソースレベルで品質を担保しながら変換を行うため、最新の業務仕様を把握するための仕様書が存在しない、あるいは実態と乖離している場合でもモダナイゼーションに対応できる点が特長となる。また、COBOL資産で現行の仕様書が整備されている場合には、モダナイゼーション後も既存の仕様書をそのまま活用できるケースもあり、変換後の工程の効率化に貢献している。

 しかし、実際の現場では、「そもそも仕様書が存在しないため作成したい」「仕様書が長年更新されておらず実態と乖離しているため最新化したい」といったケースも多く、保守フェーズや追加開発における仕様書作成ニーズは根強く存在しているという。特に金融業界では、制度改正に伴う頻繁な改修対応に加え、数十年単位で長期稼働しているシステムが多く、当初の設計・開発に関わった担当者の異動や退職、委託先の変更などにより、交代や引き継ぎが繰り返されてきた経緯があるため、正確な仕様把握の重要性が高い一方で、仕様書が存在しない、または更新されていないことが、保守・追加開発時の障害となっていた。

 TISではこれまで、こうしたニーズに対し、モダナイゼーション後の既存の仕様書のアップデート対応や、仕様変更の多い領域に絞った仕様書の再作成など、企業ごとの投資対効果を見極めた柔軟な対応を行ってきた。それと同時に、生成AIの特性を正しく理解・活用し、業務における価値と安全性の両立を図るための実践的な取り組みとして、モダナイゼーション後のシステムに対し、仕様書を自動生成する仕組みの実装検証を進めた。

 今回、社内検証を通じて実用性と品質の両面で一定の成果が得られたことから、「金融×モダナイゼーション」サービスのラインアップの一つとして、生成AI仕様書作成オプションを提供する。

 生成AI仕様書作成オプションでは、プログラム解析を通して、製造工程や単体テストにおいて特に重要となる6項目の情報を出力し、仕様書作成をサポートする。

 作成結果は、テキスト形式に加えて、フローチャートや表形式などを用いて表現され、直感的に処理の流れや構造を把握できる設計となっている。これにより、既存のシステムに仕様書が存在しない場合でも、仕様を可視化することが可能となり、プログラムの理解や保守対応の確実性が向上する。さらに、エンタープライズ領域での活用にも耐えうるよう、セキュリティ面にも十分配慮し、大規模言語モデル(LLM)に機密情報が保管・学習されることがないようサービスを提供する。

 提供価格は個別見積もり。TISでは、当面は「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」でリライトされたJavaプログラムに対して、オプションとして適用する形で展開していく。今後は、2026年度内の実用化を目標に、「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」による変換の有無やプログラム言語を問わず、稼働中のさまざまなシステム資産に対して、仕様の把握や保守対応を支援する仕組みとしての活用を想定し、対象言語の拡大やツールの汎用化に向けた技術検証を継続する。

 将来的には、生成AIの解析精度をさらに高めるとともに、仕様書にとどまらず、業務要件整理資料や外部接続仕様書、画面遷移図など、開発初期フェーズで用いられる設計文書への応用にも積極的に取り組み、質・量の両面から仕様書の充実を図る。さらに、企業ごとの仕様書フォーマットやドキュメント管理基準に応じた柔軟な出力レイアウト機能の実装にも取り組み、さまざまな業界・業種にも展開を広げていくとしている。