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Google Cloud日本法人に、VMwareブランドを所有するBroadcomとの取り組みを聞く
2024年6月4日 06:30
VMwareベースの環境で動く企業システムを、管理上の理由やサーバーのリプレースのタイミングなどでクラウドに移行するケースも増えている。クラウド大手各社とも、そのための受け皿として、仮想マシンおよびその周辺を含むVMware環境を、できるだけそのままクラウド上のVMware環境に移行できるサービスを提供している。
その1つとして、VMwareプラットフォーム「Google Cloud VMware Engine(GCVE)」を提供するGoogle Cloudは、4月に、VMwareブランドを所有するBroadcom社とのパートナーシップの拡大を発表した。
内容としては、Broadcom社自身のVMwareワークロードをGoogle Cloudに移行して、さらにAIなどのGoogle Cloudの機能も利用することに加え、両社共通の顧客サポート、Google Cloud MarketplaceでBroadcom社が提供しているプロダクトを拡充する、というものだ。さらに、VMware Cloud FoundationライセンスのポータビリティをGCVEに拡大することも、近日提供予定として発表された。
こうしたGoogle CloudとBroadcom社(VMware)との取り組みについて、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社の堀地聡太朗氏(ソリューション事業開発部長(インフラストラクチャー担当))に話を聞いた。
クラウドの中で唯一、VCFライセンスのポータビリティを実現
――あらためて、今回の発表の概要を教えてください。
1つ目としては、年次イベント「Google Cloud Next」にBroadcom社が登壇して、どうGoogle Cloudを活用しているかについて発表しました。Broadcom社では、VMware社を買収する前から自社内のVMwareの環境をお持ちで、その環境をオンプレミスからGoogle Cloudに移行して使っていただいています。移行するだけでなく、例えばVertex AIによるカスタマーエクスペリエンス向上など、Google Cloudの機能を活用していただいています。
2つ目は、Broadcom社では買収などを通していくつかのプロダクトをお持ちで、それらをGoogle Cloud Marketplaceでラインアップとして並べていただいていることです。
また、VMwareについての市場開拓のコラボレーションということで、いくつかプロモーションをしているのが3つ目です。その1つとして、例えば、VMwareを使っているお客さまがGCVEを使うことで、どのようなイノベーションが実現できるか、どのような生産性の向上につながるか、といったことを、イベントにて共同で訴求しています。
もう1つ、VMwareではいろいろな機能をバンドルしたスイート「VMware Cloud Foundation(VCF)」というライセンスがあり、そのライセンスをGCVEに持ち込むポータビリティを実現できるということも発表しました。
もともと、VCFライセンスがついたGCVEのサービスは提供していました。それに加えて、お客さまでVCFライセンスをお持ちで、オンプレミスで使っていて、一部や全部をクラウドに移行したいというときに、VCFライセンスを無駄にすることなくGCVEに持ち込めるというものです。強調したいのは、現時点では、クラウドサービスプロバイダーの中でGoogle Cloudが唯一、VCFライセンスのポータビリティを実現できるという点です。
――VMwareワークロードのクラウド移行について、Google CloudとBroadcom社によるパートナーシップは、どういった意義がありますか?
これは両社にとってWin-Winになると思っています。VMwareワークロードを従来どおりオンプレミスでお使いいただくこともできますし、Google Cloudに持ってきていただくこともできます。Google Cloudに持ってきていただくことで、例えばAIやデータ分析基盤のようなGoogle Cloudのサービスをシームレスに利用でき、お客さまの生産性の向上やイノベーションの発出の場につながります。このように、お客さまにとってもオプションが広がることになると考えています。
――その場合において、Broadcom社にとってのパートナーシップのメリットはどのようなことがあるでしょうか。
私の考えになりますが、Broadcom社にとっても、例えばVMwareではオンプレミスが主軸になっているところに付加価値を足すことができ、ライセンスビジネスとして広がる可能性があると思います。ハイブリッドクラウドやデータ主権の要望は今後も残るのは間違いないと思っていますので、ハイブリッドで用途によって使い分けるという形態は続くと思っています。
クラウド移行からクラウドネイティブ化まで、顧客の目的や段階に合わせて対応
―― 一方で、Google Cloudに移行してGoogle Cloudサービスと組み合わせてイノベーションを狙う場合、Google CloudネイティブではなくVMwareを使う理由はどのようなことがあるのでしょうか。
十把ひとからげに、すべてがVMwareにとどまるとか、すべてがGoogle Cloudネイティブなプラットフォームに行くとか、そういうわけではないと考えています。お客さまのワークロードの都合によって、新しいプラットフォームに移行しにくいワークロードもあれば、われわれのCompute Engineやコンテナ環境との親和性が高いワークロードもあります。
お客さまとディスカッションしていても、オンプレミスで動かさなければいけないものもあれば、クラウドに一歩踏み出していただく場合もありますし、さらにクラウドネイティブなプラットフォームに移行する場合もあります。中長期的に描く姿とタイミングを見計らって段階的に移行する場合もあります。お客さまの目的に従って、いろんなオプションから選択いただけるのが特徴と考えています。
――企業がVMwareワークロードをクラウドに移し、Google Cloudサービスと組み合わせて生産性向上などのモダナイゼーションを目指すときに、それを支援する施策などはありますか?
はい。「Infrastructure Modernization 支援パートナー」、つまりハイブリッドクラウドにおける導入支援パートナーとして、アクセンチュア、CTC、富士ソフト、アイレット、SCSKに参加いただいています。もちろんクラウドに持ってくる部分もありますが、その後の新しい取り組みも含めて、支援していくパートナーと考えています。
――VMwareワークロードをGoogle Cloudに移す企業は、例えばプラットフォームをクラウドに移せればよいのか、それともデータ分析サービスとの組み合わせのようなプラスアルファを求めるのか、どちらが多い感じでしょうか。
お客さまにもよりますし、お話をしている間に変わってくることもあります。最近多いのは、Broadcom社のVMware買収によるライセンス体系の変更により、お客さまにとって価格面でのインパクトが生まれて、相談いただくケースですね。それに対してわれわれとしては、なるべく価格を固定してインパクトを低減するようなオファリングを提案させていただいたりしています。
ただし、そういう説明をしている中で、価格面だけでなくGoogle Cloudの機能などについても考えていただき、ワークロードの価値を高めるかといったことに話が及ぶケースも増えています。そういったケースの組み合わせで、Google Cloud移行の検討や決断をいただいているケースが増えていく、という様相です。
大きな変更を伴わずにクラウドに移行、Googleサービスとのシームレスな連携も
――ちなみに、これまでのGCVEのお客さまの事例や評価などはいかがでしょうか。
GCVEは2020年からサービス提供して、クラウドでVMwareを使うことに利点を見いだしていただいているお客さまを中心に、実績が積み上がっています。非常に多くのセクターのお客さまに利用いただいており、日本国内についても、例えばリクシルの事例が発表されています。この事例のように、製造業において多拠点でいろいろなアプリケーションがVMwareのオンプレミスの環境で走っている、といったケースがGCVEの活用において多く見られるケースかと思います。
いろいろな点で評価いただいていますが、共通して評価されているのは、既存のVMware環境を大きな変更を伴わずにクラウド上に移行できる点かと思います。それはどのクラウドでも同じではありますが、それに加えてほかのGoogleのプロダクトとの総合的な観点で高い評価をいただいていると思います。
――そのうえで今回の発表により、ユーザーの選択肢が広がるというあたりが今回のメッセージになりますか?
そうですね。ライセンスのポータビリティが一番大きな話題ですが、Google Cloudで提供しているサービスもさらに増えています。シームレスな連携によってよりお客さまの生産性向上やイノベーションの面で非常に大きなメリットを感じていただけるのではないかなと思っています。