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AIの2024年を予想する 「State of AI」レポート

 AIの「次」はどうなるのか――。2023年は、前年末のChatGPTショックで明け、あらゆる場でAIが話題になった。AIテクノロジーが実生活に大きな影響を与え始め、広く社会に認知された年だったと言える。本年の最後は、業界で評価の高いレポート「State of AI Report」から、そのエッセンスと2024年の予想をチェックしてみたい。

AIの安全性がより重要に

 State of AIは、AIに特化した英国のベンチャーキャピタル「Air Street Capital Management」が2018年から毎年公開しているAI関係の年次レポートだ。名称はAI業界で頻繁に使われる言葉「State of the Art」(SOTA=特定のタスクでの最高スコア達成、最先端)にちなんでいるようだ。

 2023年版は約160ページのスライドで10月12日に公開された。対象時期は正確には2022年第4四半期から2023年第3四半期で、研究動向、産業、政治、安全性(新規)、予測の5部構成となっている。膨大なレポートなので、重要なポイントだけにまとめる。

 研究動向では、AI開発におけるオープンソースとクローズドソースの論争を挙げる。これは「AI研究の産業化」と「AI技術の悪用への懸念」という2つに起因しているもので、今後のAI開発に大きな影響を与えるとみる。

 そして、後者の「悪用への懸念」の元となっている「AIの安全性」が世界の極めて重要な問題として浮上していることを指摘する。だが、グローバルなガバナンスの進展は鈍く、選挙や雇用などの分野での影響が今後出てくると予想する。

 産業面では、AIの覇権争いが計算能力の爆発的な需要増を生み出している。GPU需要を受けたNVIDIAが評価額1兆ドル企業になる一方で、代替アーキテクチャも活発化した。また、中国に対する米国の高性能GPU輸出禁止措置では、主要チップベンダーが規制を受けない代替品を開発している。