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NICT、既存の光ファイバーにおける伝送容量の世界記録を更新、301Tbps伝送を実証

 国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は11月30日、NICTフォトニックネットワーク研究室を中心とした国際共同研究グループが、既存の光ファイバーで世界最大の伝送容量となる毎秒301テラビット(301Tbps)の伝送実験に成功し、従来の世界記録を更新したと発表した。

 今回の記録は、既存の光ファイバーでは未使用であった新しい波長領域を開拓するために、光増幅器と光強度調整器を新たに開発し、多数の波長を利用可能にすることで達成した。

 これまでNICTは、希土類添加光ファイバーを使った増幅器とラマン増幅の増幅方式を駆使して、商用で利用されている波長帯(C帯、L帯)に加え、一般的に商用化されていないS帯も使用した光ファイバー伝送システムを構築し、大容量伝送を実証してきた。さらなる大容量化を実現するためには、新たな波長領域の開拓が必要だが、これまでE帯を含んだマルチバンド波長多重光ファイバー伝送システムは実現されていなかった。

 NICTは、国際共同研究グループが製作したE帯向けビスマス添加ファイバー光増幅器・光強度調整器を利用して、既存の光ファイバーで世界最大の波長領域を持つ光ファイバー伝送システムを開発した。伝送システムは、光ファイバー、複数の光増幅器(ビスマス添加光ファイバー増幅器、ツリウム添加光ファイバー増幅器、エルビウム添加光ファイバー増幅器、ラマン増幅)、送受信器、光強度調整器、合波器/分波器などからなる。

 今回は、E帯、S帯、C帯、L帯を合わせて、世界最大の27.8THzの周波数帯域幅(212nmの波長幅)、1097の波長数(E帯: 315波、S帯: 315波、C帯: 200波、L帯: 267波)を用いて、301Tbpsの波長多重信号の51km伝送を達成した。信号の変調には、情報量が多い偏波多重QAM方式を使用し、64QAMをE帯、256QAMをS帯、C帯、L帯に使用した。過去の成果と比較して、伝送容量23%、周波数帯域幅41%の増加を達成した。

マルチバンド波長多重光ファイバー伝送イメージ
過去の成果との比較

 NICTでは、今回開発した技術は、通信需要が高まる将来において、光通信インフラの通信容量拡大に大きく貢献することが期待されると説明。今後は、光ファイバー伝送システムのさらなる伝送能力の向上を目指し、波長領域の拡張を目指すとしている。