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NICT、1本の光ファイバーで世界最大の伝送容量となる毎秒22.9ペタビットの通信を実証

 国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)のフォトニックネットワーク研究室を中心とした国際共同研究グループは5日、1本の光ファイバーで世界最大の伝送容量となる毎秒22.9ペタビットの通信が可能であることを実証し、これまでの世界記録であった毎秒10.66ペタビットを2倍以上更新したと発表した。

 増大し続ける通信量への対応として、現在敷設されている光ファイバーよりも光経路の数が多い空間多重光ファイバーを用いる技術や、波長ごとに異なるデータを載せて全体の伝送容量を増やす波長多重などの技術が開発されている。NICTでは、マルチコア方式とマルチモード方式を組み合わせた、100通り以上の光経路を有する空間多重や、商用の波長帯(C、L)と商用化されていないS波長帯のほぼ全域を活用した、合計20THzの周波数帯域を有するマルチバンド波長多重などをこれまでに実現している。

 しかし、空間多重とマルチバンド波長多重の併用に関しては、4コアファイバー中心に検討が進められており、より多数の光経路を有する光ファイバー(例えば、38コア3モード)においては、伝搬に伴い各コアやモード間で生じる信号同士の干渉を分離するためのMIMO受信機を、マルチバンド伝送に対応させる必要があった。

 NICTは、2020年に毎秒10.66ペタビット伝送を実証した、38コア3モード光ファイバー伝送システムのMIMO受信機をマルチバンド伝送用に拡張することで、マルチコア・マルチモード方式による空間多重と、マルチバンド波長多重の融合に成功し、合計毎秒22.9ペタビットに及ぶ超大容量光通信の可能性を実証した。

過去の関連成果との比較
今回の伝送システムを用いた超大容量光通信のイメージ

 実験では、S帯で293波、C帯とL帯で457波の合計750波で、18.8THzの周波数帯域を使用。信号の変調には、情報量が多い偏波多重256 QAM方式を使用した。ほぼ周波数帯域の等しい4コアファイバーでの実験と比べ、光経路の数を28.5倍に拡大した。これにより、コアごとに毎秒約0.3~0.7ペタビット、全38コアの合計で毎秒22.9ペタビットの伝送容量が得られた。これは、現在の商用の光通信システムにおける伝送容量の約1000倍に相当し、3年前の記録に比べて2倍以上の伝送容量拡大を果たした。

 NICTでは、現在、4コアファイバーの実用化が推進されているが、通信量が1000倍になるといわれる将来に向けては、光通信インフラのさらなる高度化が求められ、超大容量の光ファイバーを実用化していく必要があると説明。今回の研究は、将来の超大容量な情報通信ネットワークの実現に向けた、マルチコア・マルチモード方式による空間多重技術とマルチバンド波長多重技術の併用の初実証と位置付けられるとしている。