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NECと自律調整SCMコンソーシアム、AIを活用した部品購買業務の納期調整を自動化する検証を実施

 日本電気株式会社(以下、NEC)と自律調整SCMコンソーシアムは30日、NECプラットフォームズ株式会社の調達関連システムに自動交渉AIを連携させ、サプライヤーからの部品購買業務における納期調整を自動化する検証を10月に実施したと発表した。検証の結果、NECプラットフォームズの調達担当者が実施していた業務をAIが行うことで、従来は数時間から数日要していた業務時間を分単位に短縮し、業務効率を大幅に向上できることを確認したという。

 多くの産業のサプライチェーンにおいて、企業間取引における納期、数量、価格や、物流の配送条件など、さまざまな調整が日々大量に発生・遂行されており、中でも電子部品の購買では、部品の種類が膨大かつメーカーも多数におよび、製品ライフサイクルも短くなっている。加えて、世界情勢の変化によるサプライチェーン不安定化の影響を受けて、購買側と販売側の間でイレギュラーな調整が増加するなど、業務の負担がますます増えているという。

 従来、こうした個々の条件が異なる調整や交渉は、人でなければ対応できない領域と考えられてきたが、人でしかできない交渉はあるものの、AIに任せられる領域もでてきているとして、NECは自律調整SCMコンソーシアムの活動の一環として、電子部品購買の実業務に調整・交渉自動化を適用する実証を行い、その効果を検証した。

AIによる納期交渉

 検証では、NECプラットフォームズがサプライヤーに対して発注済みの部品に関して、サプライヤーの納期回答が注文納期よりも遅延している場合、あるいは、生産計画の変更を受け、納期に前倒し依頼が必要になった場合を想定。購買側(NECプラットフォームズ側)に導入した自動交渉AIが、部品の在庫状況や生産計画情報などを活用して、チャットボットを介して販売側の担当者(人)と納期調整を行った。NECプラットフォームズの実ラインで稼働しているシステムと連携して、納期変更が必要となったPO(購買発注)について納期調整を行い、変更された納期で納品されたことを確認した。

 具体的な手順は、1)購買側(NECプラットフォームズ側)で生産計画の変更に伴う部品の需要変動が発生し、自動交渉AIが当該部品の納期の調整を行うために、変更依頼メールを販売側に送信、2)販売側は変更依頼メールに記載のURLから納期調整依頼一覧画面にアクセスし、納期調整が必要な品目を確認、3)販売側は、各品目の交渉チャット画面から、購買側の変更希望納期を確認し、可能な納期・数量を回答、4)自動交渉AI(購買側)は回答を受けて、合意、もしくは新たな提案を回答、5)これらの調整・交渉を、合意か中断に至るまで自動交渉AI(購買側)と人(販売側)で実施、6)AIとの交渉ではまとまらない場合、自動交渉を中断して、人間の担当者同士で調整する。

 なお、1)の依頼は週1回(週初めの営業日)に送信され、販売側は週の間に調整・交渉を実施し、調整がつかない場合は翌週の交渉対象とした。

 検証の結果、自動交渉AIにより、在庫確認、発注量算出、販売側担当者とのやりとりが自動化され、取引先との納期調整がスピードアップした。これにより購買担当者は、部品在庫の適正化や予期せぬ需要変動への対応などに取り組めるようになり、変動対応力の向上につながることが期待されるとしている。

 今回は、購買側が自動交渉AIで、販売側が人という形態で実証を行ったが、今後は購買側が人で販売側が自動交渉AI、または購買側・販売側の双方に自動交渉AIを導入する形態での検証も進めていくとしている。