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NECとBIRD INITIATIVEなど3者、自動交渉AIの実証実験を実施 部品購買業務における調整業務を効率化

 日本電気株式会社(以下、NEC)、BIRD INITIATIVE株式会社、自律調整SCMコンソーシアムの3者は24日、電子部品購買業務において、購買側のAIが販売側の人と納期や数量の調整を行う自動交渉AIの実証実験を実施したと発表した。この結果、通常数日から数週間かかる調整が分単位に短縮され、大幅な効率化が見込まれることを確認したという。

 自動交渉AIとは、交渉の場面において相手との調整や双方の利益を最大化するような最適解を自動で導く技術。購買担当者は従来、生産計画変更の際、必要部品の在庫を確認して不足量を予測し、需給状況に応じたサプライヤとの交渉に多くの手間と時間をかけていたが、自動交渉AIを利用すると、状況によって異なる複雑な条件を考慮し、適時・適量の確保に向けて瞬時に最適解を導き出せるため、効率化が図れるという。

 今回の実証実験では、NEC関係会社が実際に取引先企業から購入している部品に関して、購買側(NEC関係会社側)が生産計画の変更を受けて発注数量や納期の変更が必要になったシーンを想定。部品の在庫状況と手配状況の実データを利用し、購買側に導入された自動交渉AIが、チャットボットを介して販売側(取引先企業)の担当者と納入条件の変更調整を行えるかを検証した。

 具体的には、在庫に余裕がない場合の購入量を増やす手配や、急な生産計画変更に伴う部品の手配数量の増減といったいくつかの需要変動のパターンについて、調整結果の妥当性や調整に要した時間・工数を評価している。

 例としては、以下のような手順を踏んだ。

1)購買側で生産計画の変更に伴う部品の需要変動が発生したことを受け、当該部品の数量、納期の調整を行うために、自動交渉AIが変更要求を販売側(取引先企業)に送信
2)販売側は1)の要求を受領し、チャットボット画面にて、対応可能な数量や納期を担当者が回答
3)購買側で2)の回答を受領し、追加あるいは削減数量と希望納期を自動交渉AIがチャットボット画面に回答
4)上記2)、3)の調整・交渉を合意に至るまで自動交渉AI(購買側)と人(販売側)で実施

 その結果、販売側の在庫で購買側と調整可能な解が存在する場合には、自動交渉AIと販売側担当者の間で合意ができ、従来、販売側との調整・交渉にかかっていた時間を短縮できたとのこと。

 自動交渉AIにより、在庫確認、発注量算出、販売側担当者とのやり取りが自動化され、取引先との調整がスピードアップすることで、購買担当者は部品在庫の適正化や予期せぬ需要変動への対応などに取り組める余力が増え、変動対応力の向上につながることが期待されている。

 なお、今回は購買側が自動交渉AI、販売側が人という形態で実証を行ったが、今後は購買側が人で販売側が自動交渉AI、または購買側・販売側の双方が自動交渉AIといった形態での検証も進めるとしている。

 また今回の結果を踏まえ、NECとBIRD INITIATIVEは自律調整SCMコンソーシアムの活動を通じて、自動交渉AIの適用業務の選定、社会実装を推進し、2023年度の実用化を目指す考え。NECは自動交渉AIの精度向上や他のユースケース向けアルゴリズム開発、BIRD INITIATIVEは自動交渉AIを用いたサプライチェーン上のさまざまな調整を自動化するプラットフォーム事業を推進するとのことだ。