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UiPath、テキスト入力した情報をもとに作業を自動化するAI機能「UiPath Autopilot」を発表

 UiPath株式会社は23日、AIを搭載した新製品や、日本における取り組みについて説明。テキスト入力した情報をもとに作業を自動化する「UiPath Autopilot」を発表したほか、「UiPath Communications Mining」の日本語版を11月15日から提供開始することなども発表した。

 米UiPathは、年次イベント「FORWARD Ⅵ」を10月9~12日(現地時間)に、米国ラスベガスで開催。「AI at Work」をテーマに、AIを組み合わせた新たな働き方を提案するとともに、UiPath Autopilotなどの新製品を発表している。日本でも、10月24・25日に、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で、FORWARD Ⅵ Japanを開催し、米国で発表した内容などについても説明することになる。

 UiPath 代表取締役CEOの長谷川康一氏は、「UiPathは、AI-Powered Automation Platform(AI搭載の自動化プラットフォーム)を製品戦略に掲げている。この3カ月間で50人以上の経営者、CIO、CDOなどと話をする機会があった。彼らの関心が高いのは、生成AIをビジネスに活用し、安全に、成果をあげたいという点であった」とし、「確信を深めたのは、AI at Workの可能性である。AIと自動化の密接な統合によって、オフィスの現場に『神』が宿り、価値を創出できる。企業ごとの独自システム、SAPをはじめとしたERP、スプレッドシートやeメールなどの汎用アプリケーション、物理ロボットなどの新たなデジタルテクノロジーと、神経系となるオートメーションが結びつき、いまのシステム環境下で、頭脳となるAIが動くような自動化によって、企業全体の生産性が向上することになる」と述べた。

UiPath 代表取締役CEOの長谷川康一氏

 なお今回の会見では、5つの観点から、日本における新たな取り組みについて説明した。

 ひとつめは、UiPath Autopilotである。Wingmanの名称で開発が進められていたもので、「生成AI、特化型AI、オートメーションの統合により、UiPathの主要な製品において、あらゆるユーザーが、AIのサポートを受けて仕事ができるようになる」(長谷川CEO)と位置づけた。

 開発者向けには、自然言語を使ってワークフローやコード、式を自動生成するAutopilot for UiPath Studioをプライベートプレビュー版として提供。近いうちにパブリックプレビュー版として、多くの人が利用できるようになるという。また、テキストやドキュメント、画像イメージから、入力フォームなどのインターフェイスを含んだアプリケーションを自動作成するAutopilot for UiPath Appsも提供する。

 テスター向けには、要件やコメントから、テストを行ったり、テストコードを自動的に生成したりするほか、テスト実行の結果から実用的な洞察を提示するAutopilot for Test Suiteを提供する。

 そしてアナリスト向けには、自然言語による分析を支援し、フィルタリングやサマリーの生成、ダッシュボードの作成を行うAutopilot for UiPath Process Miningと、テキストからクエリを自動生成し、分析用フィルターを適用するAutopilot for UiPath Communications Miningを提供する。いずれもプライベートプレビュー版の提供を間もなく開始する予定だ。

 さらにビジネスユーザー向けには、Autopilot for UiPath Assistantを提供。自然言語でのコミュニケーションにより、アシスタントが、適切なオートメーションの提案や、新規のオートメーションの作成を実施。日常的に発生している時間がかかる作業を、AIを通じて解消する。アプリケーション間での複雑なデータのコピーおよびペーストにかかる時間を節約できるClipboard AIも提供する予定だ。

 「特別なAIスキルを持たないビジネスユーザーが、テキストベースで日常業務のオートメーション化に取り組むことができる。テキストやドキュメント、画像を理解することができる生成AIの能力を、UiPathのすべての製品に取り込み、多くの人たちの日常的作業の効率化を支援する」と述べた。

UiPath Autopilot

 2つめは、新たに日本語版の提供を開始するUiPath Communications Miningである。自然言語処理の技術を使ってメールなどの文章を解析し、業務を分析して自動化するものだ。日本語でのメールやカスタマーサポートのやりとりを分析、分類することができるようになる。

 「メールのなかから、発注に関するものを分類し、発注番号や商品ID、数量などを認識するとともに、メッセージの内容からポジティブ、ネガティブのスコアを算出し、分析する。ERPへの登録のほか、相手のメールの内容を理解した上で、返信メールの作成が可能になる」という。

UiPath Communications Mining

 会見のなかでは、三井住友信託銀行におけるUiPath Communications Miningの活用事例についても説明が行われた。

 同行では、未公開株式や不動産などを対象にしたプライベートアセットビジネスの効率化に、UiPath Communications Miningを利用しているという。

 プライベートアセットビジネスでは、世界中で約300ファンドを提供。必要な情報を得て、機関投資家や年金ファンド、金融機関をはじめとした投資家に適切なレポーティングを行っており、高度な専門性が求められる分野であるため、個別のアセットに特化した運用となり、標準化が難しく、労働集約型業務が残るという課題があった。

 そこでUiPath Communications Miningを使い、海外から送られる1日1000通のメールを、添付ファイルがあるメール、サイトからの情報取得が必要なメール、本文から情報を抽出するメールなどに自動的に仕分けを行ったのち、UiPath Robotsを利用し、それぞれに得た情報を1カ所に格納。さらにUiPath Document Understandingにより、必要な業務に応じて帳票を作成し、業務プロセス用システムに流し込むという仕組みを構築した。

プライベートアセットビジネスの業務プロセスイメージ
コミュニケーションズ・マイニング メール仕分け

 三井住友信託銀行 経営企画部デジタル企画部長兼Trust Base取締役COOの平方壽人氏は、「UiPath Communications Miningでは、教師データを生成して、メールの仕分けをするところから開始した。類推でタグが表示されるため、学習が手軽に重ねることができるという特徴がある。ひとつの分類で300通程度の補正をかけたところ、約97%の精度で判別ができるようになった。メール開封から、仕分け、情報抽出、情報転機までのほとんどの業務を自動化でき、確認作業だけが残るだけになった。4人で行っていた作業が2人に減ったが、これは確認という作業のため複数人で行うため。実際には、5627時間かかっていた年間工数は、120時間となり、98%もの削減ができた。作業工数の削減、生産性向上というメリットだけでなく、専門人材を、メールをさばくという労働集約的な業務から解放できたことが大きかった。また、AIとRPAの組み合わせによって、対象業務範囲を拡大できることを実感した。AIと共生した働き方の可能性に手応えを感じている」と述べた。

 これまでは英語版を先行利用していたが、日本語版の導入により、対象領域のさらなる拡大に取り組む考えを示した。

三井住友信託銀行 経営企画部デジタル企画部長兼Trust Base取締役COOの平方壽人氏

 3つめの発表は、高度な文書処理を自動化するIntelligent Document Processing(IDP)において、特化型AIと生成AIを活用して機能強化を行ったことである。これにより、AIモデルのトレーニング時間を80%短縮できるといった効果も見込んでいる。

 ドキュメントサンプルとメッセージクラスタに、自動的にアノテーションを行い、モデルのトレーニング時間を短縮するGenerative Annotationは、すでに日本語にも対応。「生成AIが自動的にアノテーションを行うため、ユーザーは確認と修正のみに対応するだけで済む」という。

 また、生成AIによりドキュメントの分類を高速化するGenerative Classificationと、生成AIが持つ文書を読む能力を活用して、ドキュメントやメッセージから指定した情報を抽出するGenerative Extractionは、11月15日に日本語対応する予定だ。

 AIにより効率的なモデルトレーニングの進め方を提案し、機械学習やコーディングのスキルがなくても、GUI操作からAIモデルのトレーニングが可能なActive Learningは、今後、日本語対応を行うことになる。「請求書番号のギャザリングで、あと300枚読む必要があるといったAIの提案をもとに、より精度の高いモデリングを構築できる」という。

特化型AIと生成AIを活用したIDP機能強化

 4つめは、UiPath AI Trust Layerである。データセキュリティやアクセスコントロールなどを通じて、責任あるAIを実現するための信頼性、透明性、管理性を強化するものになる。

 長谷川CEOは、「企業においては安全で、責任があるAI活用が求められている。自社のデータがどこに送られて、それが保存される可能性があるのか、プライバシーとセキュリティは担保されているのか、サードパーティーのLLMの学習に自社のデータが利用されることはないか、といった管理への要求に応えることができる。LLMへのユーザーアクセス権限の制御を実現し、利用状況の監査のほか、個人情報や秘匿情報のフィルタリングも行える」という。

UiPath AI Trust Layer

 5つめは、生成AI連携コネクタの対象拡大である。

 これまでプレビュー版として提供していたGoogle Vertex AIコネクタを正式版としてリリース。Amazon SageMakerコネクタでは、Llama2 およびcustom AWS modelsが利用可能になった。また、新たにプレビュー版として、Amazon BedrockおよびAnthropicのコネクタが提供されている。「世界中で利用が拡大しているさまざまなサードパーティーの生成AIと連携することで、テキスト生成や要約、チャットボット、言語翻訳、画像認識、画像からのテキストの抽出といった機能を網羅でき、業務プロセス全体のオートメーションの実現につながる」と述べた。

生成AI連携コネクタの対象拡大

 一方、来日した米UiPath 共同創立者兼共同最高経営責任者のダニエル・ディネス氏は、「ルーマニアで生まれたUiPathは、日本でいち早く事業を展開し、製品づくりの上でも、日本の大手企業からの声を数多く反映した。その成果をもとに米国市場に展開した経緯がある。欧州で生まれ、日本で製品をパーフェクトにし、それを巨大な米国市場で展開し、規模を拡大するというユニークなサクセスストーリーを持った会社である。日本での学びをもとに、グローバルで事業を拡大し、2021年に上場することができた」とコメント。

 「高齢化が進む日本においては、生産性を高めるには、自動化が課題解決ら向けた唯一の手段になる。また、日本は紙ベースでの仕事が多い国でもある。生成AIによって、これを読み取ることができ、さまざまな文書の理解を深めることができるようになる。UiPathのテクノロジーは、数100万人の仕事の改善に寄与している。ルーティンワークの仕事をすることがなくなり、よりクリエイティブな仕事ができるようになり、働き方に大きなインパクトをもたらす。また、生成AIを組み合わせることによって、より優れた自動化を実現できる。自分がやりたいプロセスを生成AIに説明すれば、AIがプロセスをシンプルなタスクに分解し、それを最適な形で自動化してくれる。そうした世界の実現にUiPathは貢献できる」などと語った。

米UiPath 共同創立者兼共同最高経営責任者のダニエル・ディネス氏

 なお、UiPathは、本社を東京・大手町の大手町パークビルディングに移転。10月25日にグランドオープンを予定している。今回の会見は、これに先立ち新本社で行われた。

新オフィスの入り口の様子
ミーティングできるスペースやセミナーなどを開催できるエリアもある
飲み物を自由に飲むことができるカウンター