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NTTコミュニケーションズ、2024年度に直接液冷の商用コロケーションサービスを開始

 NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は10月4日、2024年度内に直接液冷(Direct Liquid Cooling)方式の商用コロケーションサービスを開始すると発表した。NTT Comのデータセンターは「Nexcenter」というブランドで展開しているが、これをさらにグリーンにするという意味で、「Green Nexcenter」という新ブランドで提供する。NTTコミュニケーションズ金井俊夫氏(執行役員 プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部長)によれば、「直接液冷による商用コロケーションサービスは国内初」という。

データセンターを取り巻く環境変化

 生成AIなどの利用拡大により、サーバーの高発熱化が加速している。最新のCPUやGPUは、従来方式の空冷空調では冷却限界がきていると言われており、高発熱サーバーを置けるデータセンターへのニーズが高まっている。

 企業にとっては、ハイパースケーラーが提供するGPUクラウドを利用するという手段があるが、こちらは利用料金が高額化しており、オンプレミスのGPUサーバーとうまく使い分けたいという要望も増えている。NTT Comに対しても、高発熱サーバー対応のデータセンターに関する問い合わせが、2022年から2023年にかけて急増しているという。

 1ラック当たりの消費電力量に応じた適切な冷却方式をサーバーメーカー各社のデータからまとめたのが以下の図だ。

電力量と冷却方式

 1ラック当たりの電力量が15kW程度を越えると従来の空冷式空調では対応できないとされているが、例えばNVIDIAの最新GPUの場合は最大消費電力が10.2kW。1ラックに2サーバーというのが標準的な設置方法なので、1ラックの消費電力は20kWを超える。数値的に見ても、従来型空調では冷却が追いつかない。

Green Nexcenterの液冷方式

 これらをふまえて、NTT Comでは「Green Nexcenter」を提供する。従来から対応してきた再生可能エネルギーを活用したゼロカーボンに加えて、水を使った直接液冷方式によって高発熱サーバーに対応した、環境配慮型の超省エネデータセンターサービスである。

 NTT Comでは、2017年から「Nexcenter Lab」(PoC環境、川崎市)において、空調機を搭載したリアドアラック、サーバー機器を直接冷却液に浸す液浸方式、プロセッサーに取り付けた冷却プレート内に冷媒となる液体を循環させて冷却する直接液冷方式など、さまざまな冷却方式の性能などを比較検討してきた。

 これらの中から、商用サービスとしてラック単位で提供しやすい方式と判断したのが、今回採用した直接液冷方式だ。

 「液浸はオペレーションが大変で、サービス化のハードルが高そう。リアドアは冷却性能が少し落ちることと、ファンの騒音で作業性が悪い。さらにこれらは、1ラックごとにサービス提供するのは難しい。一方、直接液冷はオペレーションも楽だし、冷却性能も液浸と遜色ない。音も静か」(金井氏)

 直接液冷方式を簡単に示したのが以下の図だ。

液冷方式(Direct Liquid Cooling)とは

 屋上チラーで冷却した水がサーバールームに送られ、液冷対応ラック内の冷却水サプライ(冷水管)を循環して、CPU/GPU上に配置されるコールドプレートを冷却する。冷却水は熱交換後チラーに戻されるので、水資源を無駄にしない。

 また、Green Nexcenterの特徴として、金井氏は以下の点を挙げた。

①液冷方式に対応する国内初のデータセンター(コロケーション)サービス
②生成AI/GPUなどの高発熱サーバーに対応(理論値で、最大80kWまで対応可能)
③消費電力を約30%(最大で50%)削減(pPUE1.15)
④今までと同様にラック単位での利用が可能
⑤ご要望に応じて再生可能エネルギーの利用可

 Green Nexcenterの当面の提供スケジュールとしては、既存の横浜第1データセンターの一部をリノベーションし、液冷方式に対応したラックを2024年度第4四半期頃に提供の予定。また、新規データセンターとしては、液冷方式を標準装備した京阪奈データセンター(仮称)を、2025年度内に提供する予定としている。さらに、今後の新設データセンターにおいては、Green Nexcenterを標準装備として提供する。

Green Nexcenterの当面の提供スケジュール

 ちなみに、提供開始が約1年後だが、NVIDIAの最新GPUを搭載したサーバーの調達には9カ月以上かかると言われており、ちょうどいい頃合いだと金井氏は言う。

 今後の展開構想としては、Green Nexcenterをさらに広げていくと同時に、NTTグループ全体で取り組んでいるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)のAPN(All-Photonics Network)で各データセンター間を接続し、超低消費電力ICT基盤を実現したいと考えている。

統合型ネットワークサービス「docomo business RINK」の提供

 また同日、NTT Comはクラウド型セキュリティと一体化した統合型ネットワークサービス「docomo business RINK」の提供も発表した。

 新型コロナの5類移行に伴い、企業では出社回帰が加速している。一方で、オフィスに出社していても取引先や自宅で勤務する同僚とのWeb会議が増えるなど、これまでとは異なる働き方に対応したICT環境が求められている。そして、このように広がったICT環境を、悪意のある攻撃者が狙っているという状況だ。このため、企業においては、以下のような点が課題となっている。

①出社してWeb会議すると、オフィスの回線が逼迫(ひっぱく)する
②セキュリティ対策は多様なベンダーの製品を使い、SIerがインテグレーションするので、運用が煩雑でコストが高い
③経営スピードに合わせたセキュアなICT環境が必要

 これをふまえて、NTT Comの目指すネットワークの姿が、クラウド化された統合ネットワークサービス、つまりNaaS(Network as a Service)だ。

クラウド化された統合ネットワークサービス

 コンセプトとしては、まずクラウド型セキュリティとネットワークを統合することで、セキュリティ機能のSI実装を不要にし、スピーディかつ低コストを実現。

 さらにネットワークでは、閉域網とインターネットを統合し、適材適所で使い分けできるようにする。日本では専用線とインターネットアクセスの価格にあまり差がないため、欧米などと違って重要なデータはやはり専用線を通したいという企業が多く、ハイブリッドの構成でネットワークを構築するケースが多い。この日本の特性に合わせたものとなっている。

 加えて、モバイルアクセスと固定回線も統合し、ファイバー敷設が難しい場所でも専用のレンタルルーターを設置するだけでネットワーク利用が可能になる。

 これらをソフトウェアデファインドで、ポータルから設定できるようにしたのがね新サー秘図の「docomobusiness RINK」だ。RINKは、スケートリンクなどのリンクという意味のワードだが、サービス名の由来は「ResilientIntegrated NetworKでRINK」(金井氏)という。2023年11月に提供を開始し、主な特徴は以下の通り。

①スピーディにセキュアなICT環境を実現

 ネットワークと一体でセキュリティ機能をサービスとして提供することでトータルコストの削減が可能。モバイル回線はdocomoの5G対応のSIMを搭載。固定アクセスは、まずはベストエフォートで提供するが、2024年度第1四半期にはギャランティー回線を提供する予定。

スピーディにセキュアなICT環境を実現

②ハイブリッドワークをどこでもセキュアに快適に

 通信品質を左右する利用帯域などの設定を、Webポータルからオンデマンドで変更可能。ローカルブレイクアウトにより、回線帯域の逼迫による通信品質の低下を回避できる。

③リーズナブルにセキュアなICT基盤を実現

 クラウドと同様に原則SI不要で、クラウド型セキュリティとネットワークをセットで利用可能。サービス化によりリーズナブルな価格で提供可能。

 今後の展開としては、ICT環境に加えOT環境のさらなる安全性向上も視野に、IoTやOTデバイスのセキュリティ対策に向けた機能を予定しているという。