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IIJ、みかん栽培の品質・収量の向上を推進するスマート農業実装プロジェクトを愛媛県にて実施

 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は14日、愛媛県の「令和5年度愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト(トライアングルエヒメ)」に採択され、ICTを活用してみかん栽培の品質・収量の向上を推進するスマート農業実装プロジェクトを、8月より開始したと発表した。

 IIJによれば、果樹の収穫量が減少する主な原因は、土壌の過乾燥による落葉であり、この発生を防ぐためには、灌水(かんすい)により土壌の水分を適切に管理することが必要だという。しかし、灌水の判断は生産者個人の経験や感覚に依存しているうえ、地区全体で土壌水分量を計測できるインフラがないため、乾燥地を優先してスプリンクラー灌水を行うことも難しいのが現状とのこと。

 一方、温州みかん産地である愛媛県 真穴柑橘共同選果部会(真穴共選)では、マルドリ方式(マルチ点滴灌水同時施肥法)を用いて、平均収量の2倍以上の収穫を実現している生産者がおり、これらの「匠の技術」を可視化することで地区全体の生産性向上を目指す、といったプロジェクトも進められているという。

 そこで今回の実装検証では、真穴共選と共同で、真穴共選のみかん畑240ha全体をカバーするLoRaWANネットワークを構築。このネットワークを通じ、畑に設置するセンサーで計測した土壌水分量データをクラウド上に収集し、みかん栽培における品質および収量向上に効果的な値を分析・可視化することで、最適な栽培モデルの確立を目指すとした。

 この栽培モデルの値に基づいて土壌の水分量を常時監視し、スプリンクラー灌水を適切に行うことで、糖度をキープしつつ収量を安定化させるための最適な灌水タイミングを把握でき、減産のリスク回避が可能になるとのこと。また一方で、水分量を自身の積み重ねた経験・感覚で適切に管理し、安定した生産性を維持しているベテラン生産者の“知恵”をデータ化し、地域で共有することにより、スキル継承の一助とすることも可能になるとしている。

 さらに、LoRaWANにはさまざまなセンサーを接続できるので、同プロジェクトでは、気象センサー、罠センサーを設置し、生育状況の把握、鳥獣害対策の罠監視などの実装検証も行う。これらのセンサーや機器類の設置にあたっては、愛媛県内の事業者と連携することで、現地の保守やサポートをより円滑に行うための体制を構築する考えである。

センサー設置イメージ
真穴地区基地局配置場所 / 電波到達イメージ