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IIJ、IoTとクラウドシステムの連携により、発育指数に基づいた水田の水管理を自動化する技術を開発

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は16日、稲作の水管理において、水田に設置したセンサーから取得したデータを元に稲の生育状況を算出し、算出した生育状況に応じて水管理を自動で行う仕組みを開発したと発表した。

 開発した水田水管理自動化システムは、水田センサーや給水装置といった現場のIoT機器とクラウドシステムをネットワークで連携させ、以下の水管理プロセスを自動で実現する。通常、栽培暦を参考に人手で行っている水管理を、稲の生育状況を指数化した「発育指数(以下、DVI:DeVelopment Index)」を用いて、自動で水管理をできるようにした。

 IIJでは、北海道美唄市営農者、美唄市ICT農業推進協議会、株式会社笑農和(えのわ)の協力のもと、美唄市の圃場において、2021年6月から2022年8月まで実証実験を行った。

 検証は広さ2.0ha、1.2haの2つの圃場に、水田センサー(IIJ)、給水装置(笑農和)を各1台ずつ設置、移植日(5月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間にDVIによる生育推定を行い、その中で幼穂形成期(6月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間、本システムを使って自動水管理を行った。

 栽培期間に低温になることが多い北海道では、熱帯植物の稲は気温によって収穫量・品質に影響を受けやすくなり、特に、幼穂形成期から出穂期の間に幼穂が低温にさらされると生育不良が起きやすく、この期間深水管理が推奨されているという。実証実験では、この期間、夜間に水温が高いパイプラインから給水し、早朝前後に停止して圃場の水温を効率よく保つといったスケジュール機能も実装し、検証を行った。

 システムは、圃場に設置したセンサーから、気温、水温など気象情報をクラウドシステムに送信し、クラウドシステムでDVIを算出。DVIの値に対応する適切な水位を決定し、決定した水位に合わせて給水装置を自動制御するとともに、水位測定デバイスで監視する。

 2年間にわたる実証実験の結果、開発した仕組みを利用することで、気象条件が異なる年においても同水準の生育を行えることが確認でき、DVIに基づいて水管理を自動化する仕組みの有効性を証明したという。

 DVIを利用した水管理では、移植日の違いや地域の違いを意識することなく、栽培管理の比較・再現が可能になる。またDVIの算出方式には、営農者が経験則で判断していた気象・気候要素が指数として取り込まれているため、気象条件にも影響されにくい安定した水管理を行えると説明。このように、水田の水管理を、リアルタイムでデータ取得・分析・制御を行うシステムを使い、DVIを用いたうえで自動化することで、作業負荷の大幅な軽減や栽培技術水準の維持が可能となるとしている。

 実証実験では、主に北海道で行われている深水管理についての自動化検証を行い、作業時間の大幅軽減に加えて、熟練された営農者の水管理方法をIoT技術で可視化・定量化することで、収穫量の増加や品質向上に加えて、水管理技術の継承のサポートも期待されると説明。IIJでは今後、この自動水管理システムを日本全国で利用できるよう、機能拡張・改良を進めていく予定としている。

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