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AWSジャパン、生成系AI関連のアップデートなど「AWS Summit New York 2023」の発表内容について説明
2023年8月4日 06:00
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWSジャパン)は、米Amazon Web Services(AWS)が2023年7月26日(現地時間)に開催した年次グローバルカンファレンス「AWS Summit New York 2023」の発表内容について説明した。
AWS Summit New York 2023の基調講演では、AWS データベース・アナリティクス・機械学習担当バイスプレジデントのスワミ・シヴァスブラマニアン氏が登壇し、生成系AIを中心にしたさまざまなサービスの発表を行っており、説明会ではそれらの内容について触れた。
アマゾンウェブサービスジャパン 技術統括本部 技術推進グループの小林正人本部長は、「AWS Summit New York 2023では、AWSに対するお客さまからのフィードバックをもとにした新たなサービスの発表が多かった。生成系AIに関する発表が多かったのも、その結果だといえる。AWSは、生成AIを、一から開発したいユーザー、最小限のチューニングで利用したいユーザーなど、すべての領域のお客さまを、フィードバックに基づいた製品やサービスで支援したいと考えている」と総括した。
Amazon Bedrockの拡張
最初に触れたのは、Amazon Bedrockの拡張である。Amazon Bedrockは、現在、日本のユーザーには、プレビュー版を提供しており、今回の発表によって、実験とイノベーションのための選択肢を広げることができると位置づけた。
ここでは、新たな基盤モデル提供企業としてCohereが加わったことを発表。さらに、専門知識がなくても数回クリックするだけで、フルマネージドエージェントを作成できる新機能も追加した。「お客さまのビジネスに合わせて適切な基盤モデルを選択してもらえるのがAmazon Bedrockの特徴である。また、フルマネージドサービスであることから、基盤モデルを実行するためのインフラを管理することなく、生成系AIを活用したアプリケーションを構築でき、ユーザーは価値の創出に注力できるようになる」と述べた。
Cohereでは、文書の要約や質問への対応などビジネスアプリケーションに最適化した言語生成モデルであるCommandと、100以上の言語にまたがる検索などが可能になる言語解釈モデル、Embedが提供される。
また、Anthropic Claude 2 on Amazon Bedrockを発表。Claude 2が持つ対話型タスクプロンプト1件につき、最大で10万個のトークンを入力できる特徴を生かし、丸ごと1冊の本を処理することも可能だ。さらに、Stability AI Stable Diffusion XL 1.0 on Amazon Bedrockも発表。テキストから画像を生成する基盤モデルを提供。映画やテレビ、音楽、説明動画など向けに、リアルな創作が行えるようになる。
新たにAmazon Bedrockにエージェント機能を追加したAgents for Amazon Bedrockを発表。複雑なタスクを解決するための生成系AIアプリケーションを簡単に開発できるようにした。基盤モデルと社内データソース、既存システム、ユーザー間のやりとりを、APIを通じて安全に連携。受注に対する発送状況や、顧客の申し込みに対する処理状況など、企業が固有に持つ最新データを取得し、それに基づいた正確な情報を、AIが返すことができる。また、わずか数クリックで自動的にタスクを分解し、手作業でコーディングすることなく、複数のステップを自動化するオーケストレーションプランを作成するなど、マネージドで実行できる部分が増えた点も特徴に挙げた。
その他の生成系AI関連の拡張
Vector engine for OpenSearch Serverlessは、オープンソースのOpenSearchプロジェクトの成果である「k近傍法」による検索機能をOpenSearch Serverlessでも利用可能にするもので、インフラ管理を行うことなく、ベクトルデータベース機能を実現。Amazon BedrockやAmazon SageMakerとの組み合わせなどにより、高度な生成系AIアプリケーションを開発できる。プレビュー版として提供しているが、東京リージョンでの利用が可能だ。
Amazon QuickSightのGenerative BI機能は、自然言語でデータに関する問い合わせが可能なAmazon QuickSight Qを、Amazon Bedrockによって提供する大規模言語モデルによって機能を強化。自然言語による計算処理の実行をはじめ、自然言語のプロンプトによるダッシュボードビジュアルの生成、カスタマイズ、共有が可能なストーリー機能も提供する。近日中にプレビューを開始する予定だという。
生成系AIにより、臨床文書を自動で作成する新サービスとして「AWS HealthScribe」を発表した。患者と医師の会話を分析して、来院理由や症状、今後の計画などのカテゴリーに基づいた臨床メモを自動的に生成。AIのメモが間違っているのではないかと感じる場合には、もととなった書き下し文を確認し、安全なAI活用ができるようにしている。
新たなインスタンスでは、生成系AIの基盤モデルを構築したり、科学技術計算を行ったりするユーザーを対象にしたAmazon EC2 P5インスタンスを発表した。NVIDIA H100 Tensor Core GPUを搭載しており、従来のインスタンスに比べてAIおよびMLのトレーニング処理を最大6分の1に短縮でき、トレーニング処理コストを40%削減できる。「第2世代Amazon EC2 UltraClusterと、Elastic Fabric Adaptorにより、最大20エクサFLOPSの分散計算能力を提供できる」という。
生成系AIの理解、導入、活用を支援するためのトレーニングコースとして、Generative AI Foundations on AWSの提供も発表した。開発者やエンジニア、データサイエンティストのほか、生成系AIの活用に興味を持つビジネスリーダー、AWSのパートナー企業を想定したコンテンツを、無償および低料金で提供し、AIのスキルを持った人材不足の解消に貢献できるという。2023年内には日本語でのコース提供を予定している。
また、AWS Glue Studio notebooksが、Amazon CodeWhispererをサポートすることも発表した。
生成系AI以外の新サービス
一方、生成系AI以外の新たなサービスについても発表している。
AWS Entity Resolutionは、機械学習技術を活用して、複数のアプリケーションやデータストアに保存された関連データを相互にひもづけするもので、これをもとに精度の高いマーケティングキャンペーンを実施したり、サプライチェーンの各システムで製品コードや製品IDが異なる場合にも、それぞれをひもづけて可視化し、管理することができる。すでに東京リージョンでも利用できる。
AWS HealthImagingでは、医療サービス事業者とパートナーが、医療画像をペタバイト規模で保存、分析、共有ができるクラウドネイティブアプリケーションを開発できるサービスであり、医療画像データを安全に格納できるデータストアを提供したり、複製せずに単一のデータソースから必要に応じてデータにアクセスができたりする。30日間を超えて保存されるデータはアーカイブ層に移行されることから、TCOを最大40%削減でき、必要になった場合には1秒未満の遅延でアクセスを行えるという。