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NEDO・NEC・富士通の3者、ポスト5Gに向けた基地局装置間の相互接続性検証で効率化に成功

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は12日、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」で、日本電気株式会社(以下、NEC)と富士通株式会社が研究開発に取り組んでいる、ポスト5Gに対応した基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性を検証する技術が、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性の検証時間を30%以上短縮するなど、大幅な効率化に成功したと発表した。

 ポスト5Gでは、これまで以上に低消費電力化や仮想化への対応が進むことで、基地局装置の置き換えを含めた通信インフラ市場の拡大が続くものと見込まれると説明。こうした中、オペレーターがより高品質な通信サービスを顧客に提供するため、さまざまなベンダーの基地局装置から最適なものを選択して自社のネットワークに導入する動きが活発化している。

 世界のオペレーターとメーカーなどが参加する業界団体のO-RAN Allianceでは、基地局の複数装置間の接続における標準化を進め、異なるベンダーの基地局装置を接続する条件を整えてきた。しかし、接続した状態での動作検証はオペレーターが行うために多くの時間を要し、不具合解消のための再検証を含めるとさらに長い検証期間が必要となり、O-RAN仕様に準拠した装置導入の妨げとなっているという。

 こうした背景を踏まえ、NEDOが実施する今回の事業では、NECと富士通がO-RAN市場として期待される英国と北米で検証環境を構築してきた。さらに、2021年8月から2023年6月まで、NECの英国の拠点と富士通の米国の拠点において、海外を含めたさまざまなオペレーターが、実際の商用環境で使用するプロファイルや基地局装置ベンダーの組み合わせで動作検証を行い、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性の検証作業の効率化を実現する技術の開発に取り組んだ。

 NECと富士通は、O-RANに準拠して標準化された基地局の親局(CU/DU)と無線子局(RU)間のインターフェイス「O-RANフロントホール」での、さまざまなベンダーの基地局装置間における相互接続性の検証作業を自動化する技術を共同で開発し、各国や地域のオペレーターが実際に使用する接続条件に対応するための機能拡張を行った。同技術には、基地局装置間に接続してフロントホールプロトコルを検証するFHA(FrontHaul Analyzer)、無線子局の単体試験を行うP-DU(Pseudo-DU)、検証作業の各工程を自動化するテストシナリオ抽出ツール、テストパラメーター変更ツール、検証結果判定ツールなどの独自技術が含まれる。

事業の概要と成果

 この技術を、NECと富士通の英国および米国の拠点において、欧州および北米のオペレーターの実際の商用環境を想定した動作条件と、異なるベンダー基地局装置の複数の組み合わせで、O-RANフロントホールにおける相互接続性を検証した。その結果、最適なテストシナリオやパラメーターの生成から、検証結果の良否判定までの一連の流れを自動化することにより、従来の手動による検証作業に比べて、海外のオペレーターの商用環境を想定した異なるベンダーの基地局装置間における相互接続性の検証時間を、30%以上短縮することに成功したという。

 同技術を適用することにより、相互接続性検証の時間を短縮でき、オペレーターは異なるベンダーのO-RAN仕様に準拠した基地局装置を組み合わせたシステムを、導入するまでの時間を短縮できることから、現在普及している5Gネットワークにおけるオープン化の進展に加えて、将来のポスト5Gの展開を見据えた新たなネットワーク構築にも貢献するとしている。

 NECと富士通は同技術と、同技術を適用した検証環境を継続して国内外のオペレーターや基地局装置ベンダーとの共同検証に活用することで、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)を組み合わせたシステム導入までの期間をさらに短縮し、オープン化した5Gネットワークのグローバルな普及と発展を後押しすることにより、通信インフラ市場の活性化へ貢献していくと説明。NEDOは、同技術を始め、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発および製造基盤の強化を目指すとしている。