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NEDOとNEC、柔軟性と高信頼性を併せ持つ5Gコアネットワークを開発

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は17日、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」で、日本電気株式会社(以下、NEC)は、「ポスト5G時代のモバイルコアの実現に向けた高信頼性・柔軟性を両立するクラウド技術拡張に関する研究開発」において、クラウド技術による柔軟性と、テレコムネットワークへの導入に対応した高信頼性を併せ持つ5Gコアネットワーク(5GC)の開発に成功したと発表した。

 5Gネットワークの普及に伴い、ネットワークの使われ方が多様化し、トラフィックの計画・管理が困難となることが予想され、変化に追従できる機敏性・柔軟性と、テレコムネットワークとして求められる高信頼性の両立が必要になると説明。また、トラフィックや収容回線数の肥大化などの課題に対して、大容量・省エネルギーで運用できるシステムの実現が求められるとしている。

 こうした背景の下、NEDOとNECは共同で、産業ITシステムでの活用を見据えた、5G無線を収容するモバイルコアネットワーク(5GC:5th Generation Core network)を開発した。

 従来の仮想化技術は、1システムを一つの制御単位として扱う構造だったが、今回の開発では、コンテナ化技術や分散ソフトウェア技術、個々の独立したサービスを組み合わせてアプリケーションを構成するマイクロサービスアーキテクチャといったクラウド技術を用いることで、サービスや通信処理をマイクロサービスの単位に適切に分割する。これにより、従来の仮想化技術に比べて、非常に高いネットワークリソースアサインの機敏性や柔軟性をもたらすとともに、マイクロサービス単位でのシステムの配備・運用が可能となることで、モジュールの新設・増設にかかる時間を従来の10分の1に短縮できるとしている。

 また、産業ITシステムでの活用を見据え、ネットワークの設定・制御に外部のネットワークシステムからアクセスを可能とするオープンAPIを搭載した。これにより、汎用的なWebサービスで用いられるプロトコルによるシステム間インターフェイスを介して、5GCを産業ITシステムの延長として直接利活用できるオープンなネットワークシステムを可能にしている。

 さらに、社会基盤となるテレコムネットワークが満たすべき信頼性を確保するため、テレコムネットワークの制御特性に応じた可用性モデルを実現することで、サービスの中断なく機能アップデートを可能とし、過剰な負荷が集中した際にもシステムダウンしない仕組みなどを搭載している。

 ネットワークリソースアサインの機敏性・柔軟性とテレコムネットワーク水準の信頼性を両立した5GCは、これまでの通信事業者の専用のデータセンターだけでなく、企業のプライベートネットワーク、さらには、パブリッククラウドサービス上でのシステムの配備・運用を容易に可能とし、モバイルネットワークとクラウドサービス、産業ITシステムを融合した本格的な5Gサービスの展開に向けての活用が期待できるとしている。

5GCの構成

 モバイルネットワークの大容量化への対応では、CPUなどのリソース利用効率を改善してパケット転送効率の向上(パケット高速転送技術)を実現すると同時に、ソフトウェア処理を汎用ネットワークカードへオフロードする技術を開発。これにより、さらなる高効率化と、消費電力当たりのスループットで、従来比最大2.8倍の大容量化を実現した。

 また、省電力化技術に関しては、従来はトラフィック変動によらず一定のハードウェアリソースを使用するため、電力も一定に消費していたが、トラフィックの時間変動に合わせて、ハードウェアリソースを動的制御することで、省電力化を実現した。これにより、トラフィックの閑散時には、消費電力を従来比で最大20%削減可能であることを確認したという。

 これらの技術を活用することにより、大容量化と省電力化を両立し、消費電力当たりのデータ処理速度の最大化を実現した。

 NECは今後、次世代モバイルインフラに求められるネットワークパフォーマンスの最適化を考慮した5GCの提供により、5G時代の高度なサービスやソリューションの提供および持続可能な社会の実現に貢献するとしている。NEDOは、今回の技術開発をはじめ、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの構築・製造基盤強化を目指すとしている。