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パナソニック コネクトが社内用AIアシスタントを機能拡張、10月以降にカスタマーサポート業務での活用へ

 パナソニック コネクト株式会社は19日、OpenAIの大規模言語モデルをベースに開発した社内用AIアシスタントサービス「ConnectAI」の機能を拡張し、業務での活用を目的とした試験運用を開始すると発表した。10月以降にカスタマーサポートセンターでの活用を目指す。

 ConnectAIは、生成AIによる業務生産性の向上と、社員のAIスキル向上、またシャドーAI利用リスクの軽減を目的に、同社が今年2月より運用を開始したもの。現在国内の全社員約1万3400人に展開している。

ConnectAIについて

 パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャーの向野孔己氏によると、ConnectAIの運用を開始して3カ月経過した時点での利用回数は1日5000回以上で、社員からの評価は累計で5点満点中3.56。評価の内訳は、サービス開始当初のモデルGPT-3.5の時は2.8だったというが、ChatGPTになると一気に評価が3.8へと高まり、GPT-4では4.1にまで跳ね上がったという。

パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャー 向野孔己氏
社員からの評価

 業務での生産性向上については、「プログラミング業務におけるコーディング前の事前調査で、従来3時間かかっていた調査が5分で完了した。また、社員を対象としたミーティングのアンケート分析も、従来9時間かかっていたものが6分まで短縮された」と、実績を紹介した。

生産性向上の効果

 不適切な利用を検知する仕組みは、モデレーションAPI、コンテンツフィルター、OpenAIのシステムといったように、複数回のチェックを重ねた上で人が確認する手法を取っており、「重大な過失につながるような利用は0件だった」という。

 ただし、向野氏はConnectAIには課題もあるとして、「自社固有の質問に回答できないこと、回答の正確性を担保できないこと、長いプロンプトの入力が手間であること、最新の情報に回答できないこと」を挙げる。こうした課題に対しては、「企業データの活用や、回答の引用元の表示、音声入出力機能の追加などで対応する」と話す。

課題と解決策

 具体的には、公式の自社情報をConnectAIと連携し、有効に機能するか検証するプロジェクトを6月より開始する。9月から1カ月間、自社公式情報に基づいて回答するAIアシスタントの試験運用を社員に公開し、評価するという。利用する技術はセマンティック検索で、対象とする情報は、公式に公開されているウェブサイト約3700ページ、ニュースリリース495ページ、対外向けのパナソニック コネクトのホームページ3200ページだ。

6月に開始したプロジェクト

 また、プロンプトを音声で入力できるようにするほか、AIを活用する社員が回答結果の真偽を検証できるよう、回答の引用元を併せて表示する機能も開発する。9月からの試験運用期間で有効に機能するか確認し、情報漏えいに問題がないかについても検証する。

 試験運用の結果をもとに、10月以降は自社固有の社外秘情報に回答するAIの活用を開始する。まずは、カスタマーサポートセンターのデータを活用し、顧客への回答業務の改善と業務効率化を目指す。2024年度以降には個人特化型AIとして、個人の役割に応じた回答ができるAIの活用を検討するという。

今後のAI活用戦略

 向野氏は、「生成AIは一時的なトレンドではなく、インターネットやスマートフォンと同じような技術革新だ。やがて日常生活やビジネスに当たり前のように溶け込んでいくだろう」と述べた。