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日本マイクロソフト、スタートアップ支援の目標企業数を2000社へと倍増 AIで業務効率化を後押し

 日本マイクロソフト株式会社は22日、中小企業支援策の一環として実施しているスタートアップ支援を強化し、2026年時点で1000社という目標を2000社に拡大する。

スタートアップ企業支援の加速

 大幅な目標増加の要因となっているのはAIだ。日本マイクロソフト 執行役員常務 コーポレートソリューション事業本部長兼デジタルセールス事業本部長の三上智子氏は、「今年1月、OpenAIに追加投資を行うことを発表して以降、引き合いの数がとんでもなく増加した。具体的な数は明らかにできないが、ターゲットを倍増させた最大の要因がAIへの期待だと思ってもらってよい」と説明した。

 スタートアップ企業がAIを組み込んだ新しいサービスを創出することで、「日本の中小企業の業務効率を上げるサービスが増えることにつながる」としており、スタートアップ企業支援が中小企業向け施策にもプラスに働くという。中小企業に対してもクラウド、AI活用によって業務の効率化が実現するとアピールしていく。

日本マイクロソフト 執行役員常務 コーポレートソリューション事業本部長兼デジタルセールス事業本部長の三上智子氏

AIで中堅中小企業の業務効率化を後押しする

 日本マイクロソフトの中小企業向け支援策は継続的に行われ、ちょうど1年前にも中小企業向け施策の発表を行っている。基本的な方針として、「中堅中小企業のデジタルトランスフォーメーションの推進支援強化」を掲げる。それを実現する4つの施策として「ハイブリッドワークの推進:Teamsをデフォルトのコミュニケーションツールへ」、「ビジネスプロセスのデジタル化:TeamsとつながるSaaSサービスの急拡大」、「スタートアップ企業と連携したインダストリーDX」、「高度化するサイバー攻撃への対応力強化」を挙げている。

中堅中小企業のデジタルトランスフォーメーション推進支援の取り組みの強化

 三上執行役員常務は、「クラウド利用割合が低いといわれている日本の中小企業だが、Covid-19以降、クラウド利用は増加傾向にある。2020年時点と2023年を比較すると、クラウドシフトを実践した企業は2倍となった」と、デジタルトランスフォーメーション(DX)が順調に進んでいると指摘する。

COVID-19以降、中堅中小企業のクラウドシフトが進展している

 今後、さらにそれを後押しするのがAIになると、三上執行役員常務はアピールする。「日本の中堅中小企業を取り巻く課題として、企業の労働生産性が低いことが挙げられる。AI導入によって自分の仕事を効率化することを期待する声が多い。AIが日本の中堅中小企業を効率化する起爆剤となる可能性がある。マイクロソフトとしても、AI機能が搭載されたMicrosoft Copilot製品を順次投入していく計画で、これを利用することで、効率化を実現してほしい」。

AIが日本の中堅中小企業の生産性向上に向けた大きな起爆剤となる可能性を秘めている

 AIに対しては懸念の声も上がっているが、「マイクロソフトでは主役はあくまでも人間で、人間を支援する副操縦士、CopilotとしてAIを提供していく。皆さまのビジネスをサポートする役割をAIが担う」(三上執行役員常務)と主役は人間となることを強調している。

 スタートアップ企業支援は、「スタートアップ企業自身が中堅中小企業であるが、スタートアップ企業は最新テクノロジーを活用したサービスを世に出してくれる存在でもある。スタートアップの皆さんのサービスをどんどん世の中に出し、中堅中小企業の皆さまがこのサービスを使って、自身のDXをどんどん進めるサイクルを加速していきたいという思いがある」(三上執行役員常務)と、中小企業がDXを進める原動力とすることも狙い、実施しているという。

 昨年の中小企業向け施策の発表時点では、380社のスタートアップ企業に支援を実施しており、2026年に1000社の支援を目指すという目標を出していた。「2023年6月時点で支援企業実績が862社と、1年で500社以上のスタートアップの皆さまにわれわれのスタートアッププログラムに参加していただいた。2026年には、2000社のスタートアップ企業参加を目標とする上方修正を行う」(三上執行役員常務)。

 実際にAzure OpenAIを活用したサービスを開発したスタートアップ企業として、株式会社IVRyが開発した中小企業・スモールビジネスを主な対象として、電話業務におけるDXを推進する電話自動応答サービス「IVRy」、Thinkings株式会社が開発したAIを活用したHRプラットフォーム「sonar ATS」、株式会社wevnalが開発した接客オートメーションサービス「BOTCHAN AI」の3サービスが紹介された。

中堅中小企業が利用するサービスにおいてもAzure OpenAIの利活用が進む

 株式会社LegalOnTechnologiesは、Azure OpenAI Serviceで提供されている「ChatGPT」APIを活用した「条文修正アシスト」機能のオープンβ版を提供開始した。AIを活用することで、修正文案の検討にかける労力や時間の軽減するよう支援していくサービスだ。同社は2022年ごろから大規模言語モデルを活用した機能を提供すること米国子会社から提案され、日本での実証実験を経て今回のオープンβ版を提供している。

条文修正アシストについて

 このサービスを開発したLegalOnTechnologies 執行役員・CTOの深川真一郎氏は、Azure OpenAIを採用した理由について、「OpenAIが提供するChatGPTでも十分に実用に足りるが、契約を扱うという事業ドメイン上、信頼性やセキュリティには細心の注意を払った。そのため条文修正アシストには、ネットワークの安定性や複数リージョンでの冗長化が可能な信頼性を持っていること、そして、オプトアウト申請が受理されればHarmful Content/Abuse Monitoringを目的としたデータの一時保存を回避可能なセキュリティ面が決めてとなり、Azure OpenAI Serviceを選定した」と説明する。

LegalOnTechnologies 執行役員・CTOの深川真一郎氏
ツール選定の理由

 さらに、マイクロソフトとのパートナーシップは、Azure OpenAI Serviceのメリットに加え、「現時点ではマイクロソフトが業界のAIトップランナーであり、当社がパートナーシップを結ぶことによるプラス効果が見込めると考えた。また、マイクロソフト自身も生成AI領域に積極的に投資を行い、先日のBuildでもさまざまな発表が行われた。マイクロソフトの生成AIにかける本気度が伝わってくる内容で、パートナーシップを結ぶ相手としてはベストだと判断した」(深川氏)と説明している。