ニュース
大塚商会が2022年連結業績を発表、2022年度売上高は8610億円に 2023年度は9000億円を目指す
2023年2月2日 06:00
株式会社大塚商会は1日、2022年12月期の決算を発表した。連結売上高は前年比1.1%増の8610億2200万円、営業利益は同1.9%減の547億6800万円、経常利益は同1.6%減の566億3900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は0.2%増の400億2200万円。なお、2022年度期首から、新たに「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しているため、前年度までの決算と比較すると売上が減少しており、前年度の皆生基準を適用した場合、売上高は前年比5.2%増になるという。
代表取締役社長の大塚裕司氏は、「2022年度は大塚商会にとって会計基準変更というイレギュラーな年となったが、連結売上、単体売上、各利益とも、久々にすべて計画を達成することができた。2021年度はGIGAスクールによる特需の売上233億円があった。さらに会計基準変更の336億円減と、合計570億円の特殊要因があったが、これを吸収できたことについてはうれしく思っている。わずかではあるが、2期連続の増収増益まで持ってくることができたのは、1円でも増収増益にしたいという気持ちで12月も取り組んだ結果」と業績を前向きに評価した。
2023年12月期の連結売上高予想は、売上高は前年比4.6%増の9010億円、営業利益は同7.0%増の586億円、経常利益は同5.2%増の596億円、親会社株主に帰属する当期純利益は0.4%増の401億700万円。大塚社長は、「売上9000億円に挑戦することになる。トップラインを確保し、3期連続で増収増益を実現したい」と予想実現に意欲を見せた。
2022年12月期の単体業績は、売上高は前年比0.1%増の7676億4900万円、営業利益は同0.7%減の482億9900万円、経常利益は同0.6%減の506億9200万円、当期純利益は同1.5%増の366億3100万円。
「2022年度から新たに採用した、収益認識に関する会計基準による代表的な変更点が保守契約。コピーのカウンター料金の場合、リコーのコピー機をお使いのお客さまは、購入は大塚商会から購入したものの、コピー機を使ってのカウンター料金についてはリコーとの契約になるため大塚商会の売上にはカウントされない。これらの分を合計すると365億円となる。この分を売上に合算すると売上高9000億円に近づいてきた」(大塚社長)。
連結セグメント別売上高では、システムインテグレーション事業が前年比3.4%増の5416億7100万円、サービス&サポート事業が同2.7%減の3193億5000万円。ただし、従前の会計基準では、システムインテグレーション事業は同4.5%増、サービス&サポート事業は同6.6%増となる。「実質は全セグメント成長ということになる。サプライについても、実質は堅く伸びていると理解していただければ」(大塚社長)。
新規売上企業数は、コロナが発生した2020年度はテレワーク特需があり新規取引企業数が増加したものの、2021年度はテレワーク需要も一巡し、活動制限があったことで前年比8.9%減となっていた。2022年度は3.6%増まで回復している。「非常に新規顧客獲得活動が難しかったのが2021年度。2022年度はそれがほぼ巡航速度回復している」(大塚社長)。
また受注の状況として、追加受注額と企業数の構成比、全体の受注件数と受注率を公開し、「大塚商会は、オフィスにある商材ほとんどを取り扱っているが、追加受注として小さなニーズにもお応えをするということを意識している。前四半期にお取引のあったお客さまの約3割が、その次の四半期にも追加でお取引をいただいている。こういう動きをしていなかったころは、『コピー以外の商材の販売は、自分は苦手』と追加注文を積極的に取りに行く営業体制が欠け、今回示したような、追加受注額16.1%増という数字にはならなかったかもしれない。今後、AI活用も含め生産性をさらにあげ、お客さまに寄り添うことを大事にしていきたい」(大塚社長)とした。
今回初めて公開された、一口座当たりの売上高増減率は、「私自身、社長就任以降、ずっとこの指標を注視してきた。例えばリーマンショックの時も、実際に大きく景気が低迷したのは2008年の9月だと思うが、6月、7月、8月あたりから前年の伸長を少し割る数字が出ていて、それが9月にどんと下がった。市場の流れをある程度見ていく、指標の1つと考える」と大塚社長が考える数値だという。
2022年度は3月までは前年度割れとなっていたものの、4月から回復し、12月には12.0%増まで成長した。「これは市場が良くなり、お客さまのお財布が少し緩んできたと見ることができる。さらに、もう1つの見方として、お客さまに寄り添うビジネスを進めた結果、追加販売が増えた証拠といえるのではないか」と景気回復と共に、大塚商会自身の営業体制強化が成果となって表れてきた成果だとした。
「1年前の決算説明会でアナリストの皆さまから、私の顔がどうも暗かったと言われてしまったが、ちょうどそのころに感じていたのはコロナで営業活動が十分にできなくなった結果、これまでの販売方法が通用しなくなってきたことを感じていた。従来のように3年、4年でリプレースして、新規案件を獲得というやり方が通用せず、このままだと売上の上限が8000億円程度で止まることになるなと。そこでマネジメント改革、労働配分の見直しを含め、社内体制変更を考えたのが1年前。その後、さまざまな施策を打ち、まだ道半ばではあるが、そうした施策が数字として表れ始めた手応えを感じている」(大塚社長)。
取り扱い商材がオフィス内のほぼ全商品となるという、オフィスまるごと大塚商会というコンセプトだが、「たのめーるだけの取引というお客さまが、年間約29万社のうち55%ぐらいになる。たのめーる以外でも、例えばパソコンだけといったお客さまが3分の2にのぼる。つまり、売りたいものを売りに行き、お客さんのニーズにまだ応えきれてない。こういうお客さまは、残りの商材は全部他社から購入されていることになる。お客さまのニーズに応え、お客さまのお困り事を解決し、関係性を深め、買っていただく商材を1つでも増やしていくことを目指したい」と、さらに多くの商材を販売することに強い意欲を見せた。
重点戦略事業の状況は、たのめーるは前年比5.6%増の1831億7200万円、業務アプリケーションSMILEシリーズは同15.3%増の130億7800万円、ドキュメントソリューションODSは同2.1%増の562億6000万円、セキュリティ事業OSMは同1.5%増の870億7000万円。複写機は同0.9%減の3万6697台、サーバーは同11.7%減の2万1726台、パソコンは同26.3%減の106万8321台、パソコン以外のクライアント機含めた台数は同29.2%減の115万133台。
「重点戦略事業はたのめーる、SMILE、ODS、OSMなどがプラスとなった。クライアントはマイナスとなっているものの、前年にGIGAスクール特需があったことの影響が大きい。2022年度当初は物不足でもあったが、第4四半期にはほぼ解消された」(大塚社長)
なおWebサービス(ASP)の利用人数推移を見ると、2023年には373万人が利用した。「前年対比で32万人増加している。マイクロソフトのWebサービス化が進展していること、どこでもキャビネットなど当社が提供するサービス利用者が堅調に増加している」(大塚社長)。
2023年度は「お客様に寄り添い、まるごとDXで共に成長する」
2023年度の基本方針は、「お客様に寄り添い、まるごとDXで共に成長する」をスローガンとする。重点的な取り組みとして社内でのAI活用ノウハウの向上、人に対してマネジメント改革、労働分配率の改善、人材育英を進める。
社内ではAIを営業活動支援のために活用している。iPhoneを営業スタッフの秘書代わりに活用し、客先に出向く前に既存の商談を確認し、さらに今後、営業すべき相手を明らかにする際などに活用する。こうした営業でのAI活用だが、2022年8月には意外なことが明らかになった。
「営業の行き先がわからない、予定が埋まらない営業をサポートするためにAIを活用してきたことで、逆に成績上位層はAIを活用していないという状況となっていることが明らかになった。そこで新たな取り組みとして、これまで営業スタッフに任せていた、どのタイミングで客先に訪問するのかについて、上位層含めてAIを活用する取り組みを始めた。AIは人間が気がつかないことを明らかにする存在として、さらに活用を後押ししていきたい」。
人の強化としては、従業員の成長、労働分配率の改善など社内人材強化と働きやすい環境作りを引き続き進めていく。デジタル人材として、AI資格者600人、インド工科大学卒業生の採用なども実現している。
こうした取り組みにより、2023年度売上高は前年比4.6%増の9010億円、営業利益は同7.0%増の586億円、経常利益は同5.2%増の596億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同0.4%増の401億7000万円と予想する。
セグメント別連結売上高は、システムインテグレーション事業が前年比4.0%増の5631億円、サービス&サポート事業が同5.8%増の3379億円。
大塚社長は、「売上9000億への挑戦ということになる。トップラインを確保することで、3期連続の増収増益を目指したい」と初の連結売上高9000億円超え実現に強い意欲を見せた。
なお大塚社長は、大塚商会の成長の軌跡としてこれまでを振り返り、社内のデジタル改革として1998年に導入した営業支援システム「大戦略」、2003年に導入したSales Process Re-engineering(SPR)によって営業に科学的視点を取り込んだのに続き、現在進めているAIを活用した営業改革と、デジタル技術を活用した営業戦略が大塚商会の成長を支えたことを指摘。
「1998年と現在を比較すると、売上高で2.5倍、純利益は100倍になっている。恥ずかしながら、98年は3億ちょっとしか利益が出ていない会社だった。当時と比べ正社員は14パーセント増加した中で、売上9000億に挑戦しようとしている。当社のDXのフェーズ1、2を超え、DXフェーズ3に入っていくと考えている。この成功事例を含めお客さまに提案し、ITを使ったDXを実施することで、会社が強くなり、収益性も上がる、生産性が上がるとしっかりとPRしたい。社員、お客さまと共に成長を続けていくことができるよう頑張りたい」と、自社がITを活用することで成長したことを、顧客にもアピールしていきたいとした。