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すべてのビジネスユーザーをデータコンシューマに変えていく――、TableauがSalesforceとの統合を強化へ
2023年1月26日 06:30
セールスフォース・ジャパン Tableau事業部は18日、リアルタイムCRM「Salesforce Customer Data Cloud」のアップデートとなる「Salesforce Customer Data Cloud, powered by Tableau」について、報道関係者向けに説明を行った。
説明を行った米Salesforce Tableau担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ ペドロ・アレヤノ(Pedro Arellano)氏は、「Salesforce CRMとTableauが深くインテグレーションすることで、より多くのビジネスユーザーにエンゲージすることが可能になる。データアナリティクスがもたらすインサイトを顧客のアクションに結びつけ、ビジネスに成果を生むことを支援していきたい」と語り、Salesforce製品とTableauの統合をさらに強化していく方針をあらためて強調する。
Salesforce Customer Data Cloud, powered by Tableauは、2022年9月にSalesforceが発表したデータプラットフォーム「Salesforce Genie Customer Data Cloud」(日本での製品名は「Salesforce CDP」)に、Tableauのインメモリエンジン「Hyper Engine」をネイティブ統合し、ニアリアルタイムな顧客データ分析から得られたインサイトを、現実のアクションにひもづけていくことを可能にするプロダクト。2022年12月に米国でアナウンスされ、2023年2月から北米で一般提供が予定されている(日本での一般提供開始時期は未定)。
Salesforce Customer Data CloudはすでにFord、L'Oreal、Formula 1といった世界的ブランドを有する企業の顧客分析業務に採用されており、シングルソースの顧客データ基盤としての信頼性と、「Einstein AI」や「Flow」によって自動化されたリアルタイムAI機能が高く評価されている。そして今回のTableauのネイティブ統合により、ニアリアルタイムでのデータ視覚化と、パーソナライズされたインサイトとアクションの生成、さらに既存の業務フローへのアクションの取り込みなど、「データアナリティクスの専門家ではない、ビジネスユーザーのデータへのエンゲージ(関与)を容易にする」(アレヤノ氏)機能が強化されている。
具体的には、
・リアルタイムデータやモバイルデータを含む複数のデータソースのデータをすべてSalesforce Customer Data Cloud上で統合して扱う。SnowflakeやAWS、独自のデータレイクなどSalesforceエコシステム以外のデータアーキテクチャともシームレスに統合可能
・取り込んだデータをCustomer Data Cloudのデータポイント間でマッピングし、ナレッジグラフ(顧客グラフ)として表示
・作成したルールにもとづいて複数のデータソース間の競合や衝突を解消し、すべての顧客データの状態を最新に保つ(データの変化とともにナレッジグラフも変化する)
・Customer Data Cloud上のボタンをワンクリックするとTableauのダッシュボードに移動し、Hyper Engineによるスケーラブルで高速なクエリを実行。誰でも詳細な探索を行うことができ、インサイトの視覚化が実現
・Salesforceのワークフローエンジン/フレームワークと連携し、ダッシュボードやSlackなどのアプリにユーザーが取るべきアクションを通知/誘導
といった機能強化が行われており、アレヤノ氏の言葉にあるように、ビジネスユーザーが関与しやすい機能にフォーカスしていることがうかがえる。Customer Data Cloud上では数千万レコード規模でデータを結合でき、リアルタイムデータとヒストリカルデータの統合も可能だ。また、Hyper Engineのネイティブ統合により、顧客データに埋もれていたインサイトをニアリアルタイムで視覚化/自動化/探索できるようになっており、そのインサイトから得られたアクションも、より実行しやすいように設計されている。
ビジネスユーザーにBIのパワーを解放へ
アレヤノ氏は、現在のBIプロダクトが抱えている課題として以下の3点を挙げている。
・データの信頼性と正確性の欠如 … アプリケーションもデータ量も膨大で、活用しにくい状態で分散しており、パイプラインが複雑化している。またリアルタイムデータを取り込みにくく、陳腐化したデータを使った分析となるため、ビジネスのニーズに適したインサイトを得られない
・不十分な活用 … ツールがビジネスユーザーを対象にデザインされていないので使いにくい
・ラストマイルの限界 … BIレポートがビジネスのアクションにつながらない
これらの課題を総合して、アレヤノ氏は「既存のBIプロダクトはデータサイエンティストやデータアナリストといったデータのエキスパートが使用することを前提に設計されたものが多く、実際の業務を遂行するビジネスユーザーにエンゲージできていない」と指摘する。
本来、データによってビジネスに成果をもたらすはずのツールであるBIが、肝心のビジネスユーザーに使われておらず、ビジネスを変えるアクションを引き出せていないという現状に対し、アレヤノ氏は「Tableauはかつて、データアナリストのためにTableauという“言語”を生み出した。今度はビジネスユーザーのための新たな“言語”を生み出すときだ。データアナリティクスによって生成されたインサイトをユーザーがツールにアクセスして取りに行くのではなく、生成されたインサイトがそれを必要とするユーザーを探し出し、インサイトのほうからユーザーに寄っていくようなエクスペリエンスが求められている」と語り、Tableau自身がビジネスユーザーに寄せた変革を始める必要があるとしている。
もっとも、Tableauはすでに“ビジネスユーザーにエンゲージできないBI”という課題に対してさまざまな改善を行ってきており、特にSalesforceグループに入ってから、その取り組みのスピードが加速していると、アレヤノ氏は言う。
「TableauはSalesforceグループに入ってから、エンドツーエンドのエクスペリエンスを強化する機能を数多く取り込んできている。例えばSlackとの統合、ソフトウェアプロバイダ向けの埋め込み分析、データドリブンアラート、データストーリー(ダッシュボードに表示される自動生成された物語風のナラティブなインサイト)などだ。また、Salesforce CRMのデータというもっとも信頼できる顧客データをデータベースとして扱うことが可能になり、組織内のすべてのデータはもちろん、外部のデータもインテグレーションできるようになった。われわれはアナリティクスのパワーを活用できるプロダクトをこれまでも、これからも提供していく。今回のCustomer Data Cloudの機能強化もその一環であり、2023年夏には、トレンドの異常や急激な変化(アノマリー)をAIで監視/通知する分析監視機能をリリースする予定だ」(アレヤノ氏)。
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SalesforceによるTableau買収が発表されたのは2019年6月、買収が完了したのは2019年8月だが、それから約3年半の間に世界は大きく変わった。パンデミックや戦争、気候変動、円相場の下落など、数年前には想像できなかったことが次々と現実化しており、「固定概念や既成事実が通用しない時代になりつつあり、未来のありかたを再考すべきときが来ている」とセールスフォース・ジャパン 常務執行役員 Tableau事業統括 カントリーマネージャー 佐藤豊氏は言う。そしてこの不安定な状況で発生する未知のチャレンジを乗り越えるために、社会や企業には「創造的に問題解決をする能力」(佐藤氏)が求められおり、データがその共通言語となるというのがTableauの主張だ。
データを共通言語として問題解決にあたるなら、データを理解して使いこなせる人材がビジネスの現場でより多く求められる。アレヤノ氏は「すべてのビジネスユーザーはデータを使いこなせる”データコンシューマ”になるべきだ」と語っており、Tableauの今後の機能強化も一般のビジネスユーザーのエクスペリエンス向上にコミットしていくことを明言している。
「アナリティクスは、チャレンジングな時代、課題が山積する世界のコンパスとなる存在。そして多くのビジネスリーダーはそれを理解している。彼らはBIツール探索をしたいのではなく、ビジネスでアクションを起こしたいのだ。Tableauはそのニーズに応え、BIのコモディティ化を進めていく」とあらためてBIのコモディティ化を強調するアレヤノ氏。
かつてTableauがデータアナリティクスの世界にもたらした“ディスラプション”を、今度はビジネスアプリケーションの世界で再現することを目指していく。