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freee、インボイス対応の受発注を電子完結できる「freee請求書」を無料提供開始

 freee株式会社は13日、インボイス制度に対応した請求書を無料で発行できる「freee請求書」の提供を開始すると発表した。同社はこれまでにも、インボイス制度に対応すべきかの簡易診断や講座、ガイド書などを提供。インボイス登録を行う個人事業者向けに申請を支援するサービスなどを提供してきた。今回、インボイス制度に対応した受発注が電子で完結するfreee請求書を提供することで、煩雑さが増すインボイス対応の請求書発行にまつわる事務作業軽減を狙う。

 freeeでインボイス制度の責任者をつとめる主席コンサルタント兼インボイス制度責任者の尾籠威則氏は、「インボイス制度において、2023年3月31日は重要な日」とアピールした。

freee株式会社 主席コンサルタント兼インボイス制度責任者の尾籠威則氏

 「インボイス制度は、2023年10月1日から開始されるが、適格請求書の発行事業者となるための登録締め切りが2023年3月31日。インボイスは、適格請求書発行時業者になるための登録申請を行い、税務署の審査が通った事業者だけがインボイスを発行できる。2023年3月31日までに申請しないと、10月1日からインボイスを発行することができなくなる。インボイスを発行できない事業者は、取引先の税負担が大きくなる。スモールビジネスを展開される方にとって、取引先との関係は本当に重要なもの。関係が棄損してしまえば、取引継続が難しくなることも予想される」(尾籠氏)。

2023年3月31日までに登録申請を行わないと、取引先の税負担が大きくなるという

 こうした状況をfreeeがメインターゲットとしている小規模事業者に訴えるために、「インボイス制度への対応を3つのアクションで徹底サポートする」という。

 第1ステップでは、インボイス制度を「知る」ために、これまでfreeeが行ってきた取り組みを紹介した。2022年8月には、「インボイス制度パーフェクトガイド2022」を公開。2022年11月からは、インボイス制度に対応すべきか否かを簡易診断する、「インボイス登録診断ツール」の提供を始めた。さらに2022年9月から、毎週木曜日、税の専門家によるQ&Aを含めた1時間の講座「公式インボイス講座」を実施している。

 「10月1日からはテレビCMも開始し、インボイス制度に未対応でいると取引先の税負担が増す事態となることを認知してもらう内容で、インボイス制度へ対応する必要があることを訴える内容となっている」(尾籠氏)。

インボイス登録診断ツール

 第2ステップとなる「アクション」として、2022年9月からはインボイス制度に登録するための申請書類を作成することを支援する、「インボイス登録申請ナビ」を提供。「たった5分でインボイスの登録申請書類が作成できるサービスを無料で提供している」(尾籠氏)。

インボイス登録申請ナビ

 第3ステップとしては、法改正対応として2022年8月から「カンタン請求書作成サービス」を無料で提供しているが、この請求書をインボイス制度対応とする。

 「バックオフィスの変革として、簡単に請求書を作成できるサービスを無償で提供している。また、当社の開発ロードマップを9月に発表したが、freee製品だけでインボイスに完全対応している、2023年中には、デジタルインボイスを発行するPeppolに対応することも予定し、さらにペーパーレスに対応するために2022年8月にはJIMA認証を取得し、スキャナ保存、電子取引ソフトとして法令基準に対応している」(尾籠氏)。

 また2022年11月からは、freee会計の全プランを優良電子帳簿対応とすることで、過少申告加算税5%軽減に対応する。

カンタン請求書作成サービスをインボイス制度対応に

 こうして、対応のための施策を進めているものの、インボイス制度に関する事務作業は煩雑になり、事務担当者に大きな負担を強いることになると予想されている。例えば、「請求書がインボイス要件を満たしているのか」の確認作業が必須となる。インボイス記載事項は8項目あり、このすべてを記載しているのか、税額の計算方法が適切なのかなど、請求書フォーマットが正しいものなのかについても確認が必要となる。

請求書がインボイスの要件を満たしているかの確認必須
8項目もあるインボイス記載項目

 さらに、「取引相手がインボイス登録しているのか、確認する作業は非常に煩雑」であることも指摘した。

 「取引相手のインボイス登録状況を確認する作業はかなり煩雑で、経理担当者の事務負担がぐっと上がることが予想されている。国税庁の公表サイトで13桁の暗号を入力し、確かに登録作業を行っているのか確認作業をすることになる。1件ずつ作業するのが面倒な場合は、全件ダウンロードを行うことができるが100万事業所くらいのデータをダウンロードし、チェックするこれまた骨の折れる作業となっている」(尾籠氏)。

インボイス登録状況の確認作業は非常に煩雑

 こうした煩雑さに対する打開策として、2022年12月13日から、インボイスに対応した受発注管理サービス「freee請求書」を無料で提供する。freee請求書では、フォーム入力で誰でも簡単に見積書・納品書・請求書を作成できる。また、見積書・納品書・発注書など、請求書以外にもさまざまな書類を作成可能。フォームに沿って入力するだけで、リアルタイムで書類に反映され、プレビューを見ながら簡単に書類を作成できるという。

 用意されているテンプレートは50種類以上で、自分にあったテンプレートを選択して書類を作成する。書類に記載する項目は、テンプレートから追加や変更を行うことも可能だ。

freee請求書

 また、インボイス制度による新ルールとともに、電子帳簿保存法にも対応する。インボイス制度では、端数処理のルールが明確化される予定となっており、freee請求書を使うことで、金額を入力するだけでインボイスの計算方法で自動計算し、適格請求書の項目も満たした請求書を発行可能となる。作成した書類は、自動で電子データとして保存され、電子帳簿保存法で定められている削除履歴・訂正要件・検索要件にも対応する。電子帳簿保存法に沿って利用することができる。

 また、freee会計とfreee請求書を連携させることで、取引先情報の連携が可能となる。作成した請求書の情報をfreee会計に自動で反映し仕訳登録も行えるようになる。今後は、入金ステータスを自動で管理する連携も予定している。

 なお、法人がfreee請求書を利用する場合は、3人までは無料で使えるものの、4人以上の場合はfreee販売を購入することが必要となる。

 請求書サービスを有償で提供する事業者も多いが、無償でサービスを提供する理由を、「当社はスモールビジネスを世界の主役に、をミッションとしており、スモールビジネス市場を活性化するということで、思い切って無料での提供という施策をとらせていただいた。コストについては、会計との連携が必須となってくることから、会計ソフト販売で請求書を無料で提供するコストを回収していきたいと考えている。法人でなくても請求書発行枚数が多い場合には、別途有償で別のツールを販売することも検討しているが詳細は現時点では決まっていない」(尾籠氏)と説明している。

 インボイス導入に対する反対意見が多いことから、政府が緩和策を検討していることも報道されている点については、「そうした動向は注視しているが、当社の製品戦略を変更することは検討していない」という。

 記者会見には、大崎駅西口商店会のマスコットキャラクターの大崎一番太郎氏とマネージャーの犬山氏、銀行やALSOKを経て落語家として活動する参遊亭遊助氏も登場。「簡単に行える」とアピールされた請求書送付を体験するデモンストレーションも実施され、手軽に請求書作成送付を体験していた。