ニュース
SAP人材を育成する「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」、就労先が見える学びの機会を提供
2022年10月12日 06:15
女性のデジタル人材教育を行う株式会社MAIA、無担保少額融資を行う一般社団法人グラミン日本、SAPジャパンが地方自治体等と連携し、女性のデジタル人材育成などを進める「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」は11日、2022年5月の契約締結からどのような活動を行っているのかについて、報告会を行った。
でじたる女子活躍推進コンソーシアムは、未経験者も含めて、ITスキルを学び就労したい人を地方自治体が募集。MAIAが人材教育を行うほか、パソコンやネットワーク機器を持っていない人にはグラミン日本が必要な融資を行う。ITスキルが身についた人に対しては、SAPジャパンのパートナー企業などを通じ就労先を提供していく。
内閣府 男女共同参画局 総務課長の杉田和暁氏は、「コロナ禍が女性の雇用を直撃し、非常に厳しい状況となった中、デジタル分野は成長を続けた。それをふまえ、女性の労働力をデジタル分野に移動してもらう政策が必要になるということなのだと感じている。ただし、いろいろなプランが出て、能力は身につけたものの、具体的な就労には結びつかないといったミスマッチが起こりがち。今回のコンソーシアムは、最初から出口を見据え、就労先につながる企業が参加しているところが画期的だと思っている」と述べ、実際の就労につながる可能性が大きいことがこのコンソーシアムのポイントだと指摘した。
でじたる女子活躍推進コンソーシアムは、2022年5月15日に株式会社MAIAを代表として、グラミン日本、SAPジャパンの3社が提携して設立した。
MAIA 代表取締役の月田有香氏は、「コロナ禍で私たちIT業界は大きく変わり、完全テレワークで仕事をすることができるようになった。そこで地方から東京の高単価の仕事や、オンラインでつながってチームで仕事をすることができるようになった」と、コロナ禍でIT業界の働き方が大きく変わったことを指摘する。
この変化が、今回のでじたる女子活躍推進コンソーシアムには、大きなプラスに働いた。「われわれのコンソーシアムでは中間就労といっているが、チームを組んでコンソーシアムのメンバーがマネジメントしながら、伴走支援しながら、仕事をしてもらう形をとっている。これは、企業が即戦力を求めているというニーズに対応したもので、デジタル技術を初めて学んだ人でも、チームを組むことで仕事をできる」(月田氏)と、新たにデジタル技術を学んだ人が賃金を得やすい環境になっていることに触れた。
またグラミン日本は、パソコンやネットワークなどデジタル技術を学ぶ際に必要な資金をサポートすることに加え、「将来的には、就労後経験を積んで起業を考えた人に対して融資を行うという2段階のサポートが行えるのではないかと考えている」と、グラミン日本 理事長の百野公裕氏は説明する。
グラミン日本とSAPジャパンは、2021年に共同でデジタルプラットフォームを活用した生活困窮者の経済的自立を支援する取り組みを行うことを発表している。SAPジャパン 常務執行役員 チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーの大我猛氏は、「この取り組みを実施した際の大きな気づきは、出口となる(就労を受け入れる)企業が一番重要ということだった」と振り返る。
「女性の就労機会を拡大させる、所得を向上させるチャンスがどこにあるかといえば、人材供給と人材需要にギャップがあるところ。需要の大きいが人材が足りていない分野のスキルを学ぶことで女性の就労が増えるということが明らかだと考えたが、足下を見ると、私どもSAPのビジネスの人材供給と需要に大きなギャップがあることがわかった」(大我氏)。
日本でSAP関連のビジネスを行うパートナーは400社以上になるが、「関連ビジネスの市場規模は1兆円以上で、日本のIT市場15兆円のうち約1割がSAP関連ビジネスとなっている」(大我氏)と、規模としても大きい。そこでSAPは、今回のコンソーシアムでデジタルスキルを学ぶ女性の就労につながる出口として、パートナー企業も含めて協力していく。
SAP関連ビジネスを行うスキルは、経験や高いITスキルが必要な分野も多いものの、「SAP関連のプロジェクトを分解していくと、これまでIT技術者ではなかった方でも参加しやすいテスト領域、運用フェーズ、マスターメンテナンスといった領域がある。まず、第1ステップとしてそういったところに取り組んでもらい、実戦経験を積んでさらに次のステップに進んでもらうことを目指している」(大我氏)と比較的、経験が少ない人でも参加しやすい領域もあると説明している。
5月の設立発表後、まず愛媛県が協定を締結し、参加者を募集した。愛媛県が6月1日から7月16日までの期間参加者を募集したところ、55人が応募。現在、そこから選抜された人材22人がデジタル技術を学んでいる。
愛媛県では2022年2月7日に、「新しい愛媛の未来を切り拓くDX実行プラン」を発表し、デジタル人材を育成するプランを掲げている。2030年までにDXを支えるデジタル人材を1万人排出し、県民一人あたりの所得を2018年の265万円から300万円へ引き上げることを目標とする。
そのため今回のプランにも前向きに参加し、第1期生のデジタル教育を進めているが、「参加した人から、学習用のノートパソコンに加え、先生のリモート画面を表示するモニターがあればもっと効率的に学べるといった声が参加者から挙がっており、こういった声には対応していきたい」(愛媛県 企画振興部 デジタル戦略局 局長の山名富士氏)といったように、実際に教育を進めながら感じていることもあるという。
また愛媛県以外にも、鹿児島県が「かごしま女性(おごじょ)プロジェクト」、沖縄県糸満市が「糸満デジタル女子プロジェクト」を実施するなど、コンソーシアムと連携する自治体、参加者が増えているとした。
なお現在、就業つながるタレント採用パートナーとしてSAPジャパンをはじめ、アビームコンサルティング、ソフトバンク、SCSKなどが名乗りをあげているが、さらにパートナーを増やしていくとともに、人材募集などに寄与するアウトリーチパートナーとして、さらに広く全国の自治体に呼びかけ、参加者を増やしていく。その結果、国が推進する女性のデジタル人材の育成、地方自治体の活性化などにつなげていく方針だ。