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GPUクラウドのハイレゾ、志賀町第2データセンター開所式・内覧会を実施
2022年9月2日 06:00
株式会社ハイレゾは8月29日、石川県志賀町で建設を進めていた「志賀町第2データセンター」の開所式を開催し、関係者・メディア向けのデーセンター内覧会を開催した。
開所式は、ハイレゾ代表取締役社長の志倉喜幸氏によるあいさつで始まり、石川県の馳知事、志賀町の小泉町長などによる祝辞が続き、くす玉割りも実施された。志賀町第2データセンターの電力には、北陸電力の再エネ電気「かがやきGREEN RE100」が10%導入されていること、サーバー機材としてNVIDIA A100 TensorコアGPUなどが設置済みであることなども紹介された。
続けて、関係者・メディア向けに、データセンターの内覧会も開催された。志賀町第2データセンターは、ハイレゾのGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」専用データセンターの2つ目となる。GPUSOROBANは、低廉な利用料金で定評があり、その低廉な料金を実現するためハイレゾでは、コストの中で大きなウエイトを占めるデータセンターのコストを抑制するため、一部が独特なデータセンター仕様となっている。
その仕様をそのまま受け取ると驚くことになるだろうが、志賀町第2データセンターがGPUSOROBAN専用であることを踏まえると、その仕様がGPUSOROBANの競争力にどれほど寄与しているかが見えてくる。
ハイレゾは、クラウド専用のデータセンター構築にあたって設計方針・仕様を見直して、サーバーへの電力供給についてはUPS(無停電電源装置)なし、非常用発電機なしとし、通常の商用電力を供給するだけという仕様を選択している。また、データセンターの建物は免震でなく耐震、サーバー機器のデータストレージはあってもSSDに代表されるフラッシュメモリーベースに統一されている。サーバー室(サーバー機器)の冷却についてもエアコン(冷却器)なしとし、外気をサーバー室に送風するだけという仕様にすることで、空調の消費電力を一般的なデータセンターと比較して90%以上削減できるとしているだけでなく、第2データセンター建設中の2022年1月に「違い棚屋根方式」と呼ぶデータセンター建物構造物について特許・意匠を出願している。
こうしたデータセンター仕様から予想されるのは、停電や熱波などの異常気象といった外乱に弱く、データセンターとして重要な安定性が劣るのではないかという懸念である。この懸念に対してハイレゾは、「大半のGPU計算はジョブの途中でもし停止してしまったとしても、再計算すれば同一の結果が得られること、再計算という事態だとしても多少待てばよいだけ」という、大半の実利用者の認識を反映したものとしている。ただ「あくまで大半であるため、利用者の用途によっては現在のGPUクラウドサービスでは仕様的に合わないケースがある」のも事実だ(後述)。
今回の第2データセンター開設は、第1データセンター(志賀町、2019年8月開設)から3年後にあたり、第2の建設に踏み切った当時の背景についてハイレゾは、「AI(人工知能)・機械学習などのGPU計算の需要拡大を、第1データセンター運用開始後のわずか半年後となる2020年初頭には手応えとして感じていた」とし、「第1データセンターの容量ではいずれ不足になることがほぼ確実視された」と回想する。
その見通しから約1年が経過した2021年2月に、ハイレゾはシリーズAラウンドとして第三者割当増資により3億3000万円を資金調達したこと、その資金で第2データセンターを開設すること、サービス開発・改善を強化することなどを発表している。そして2021年9月に地鎮祭を実施し、第2データセンターの建設を進めていた。資金の面でハイレゾは2022年4月にシリーズBラウンドとして5億7000万円を追加で調達し、融資を含む累計の資金調達が約20億円に達したと発表している。後者の資金調達のタイミングは第2データセンターの開設前にあたるが、その時点で開発系人材の採用を強化し、研究・開発として脱炭素に向けた演算力の高効率化、再生可能エネルギーを活用したデータセンター運営設備、GPUクラウドサービスを拡充するとし、第2データセンター開設後の展開を見据えている。
ハイレゾでは、GPUSOROBANの現在の仕様でカバーできていない需要に対して、一般的な都市型データセンターの仕様をベースにしたGPUクラウドサービスを、東京エリアを含めて検討していると明かした一方で、志賀町にハイパースケール型データセンターを建設することも検討するとしている。