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さくらインターネット、IoTプラットフォーム「さくらのモノプラットフォーム」の正式サービスを開始

 さくらインターネット株式会社は24日、IoTプラットフォーム「さくらのモノプラットフォーム」の正式サービスを開始した。2021年7月からβ版をリリースしており、これまで120社がテストに参加してきたという。

 さくらのモノプラットフォームは「IoTシステムの構築を楽にするプラットフォーム」「IoT デバイス開発のための設計情報」「マルチキャリア対応通信回線」の3つの機能・環境を提供するPaaS(Platform as a Service)だ。

さくらのモノプラットフォーム

 形態としては、デバイスとクラウドアプリケーションの間に入る。設計情報として、IoTデバイス向けのSDKや、クラウドアプリケーション側で使うクラウドSDKなども用意しており、IoTデバイスや通信回線、クラウドプラットフォームは専用でなくオープンに利用できる。

 ただしIoTデバイスが接続する回線については、認証などのセキュリティのため、まずは同社のさくらのセキュアモバイルコネクトを使用。今後、対応を拡大していく予定だという。

デバイスとクラウドアプリケーションの間に入る

完全月額制で、通信実績がない月は課金なし

 さくらのモノプラットフォームの料金(さくらのセキュアモバイルコネクトによる通信回線は除く)は、初期費用なしの完全月額制で、月額基本料金220円/デバイスと、月額オプション料金からなる。

 オプションとしては、まずクラウドアプリケーションなどと接続するためのサービスアダプタが月額11円/デバイス。これにはOutgoing Webhook、Incoming Webhook、WebSocketがあり、複数作成した場合はそれぞれに課金される。

 なお、基本料金とサービスアダプタは、その月に通信実績がない場合は課金されないようになっているのも特徴だ。これはIoTデバイスのライフサイクルを考えたときに、最初に検査するときに通信を行い、そのまま在庫され、そこから使われてまた通信が発生する、といったケースを想定してのことだという。従来もサービスを一時停止できるものもあったが、その場合でもデバイスごとに使っているかどうかの管理が必要だった。それに対してさくらのモノプラットフォームでは、その管理の手間をなくすのが目的とのことだ。

 オプションにはそのほか、ファイル送受信が月額110円/GB。さくらのモノプラットフォームのストレージに格納されたファイルサイズに課金するもので、月間の最大容量に対して課金される。

さくらのモノプラットフォームの料金体系
月額基本料金
オプション:サービスアダプタ
オプション:ファイル送受信

 なお、期間限定でさくらのモノプラットフォームの2022年3月から6月分の月額基本料金とオプション料金を無料で提供するキャンペーンを実施する。あわせて、技術検証に利用できるサンプル基板も無料で提供する。申し込みは、サービスサイトのWebフォームから。

顧客がシステム構築する範囲を小さくし、ハードウェアの制約も小さく

 さくらのモノプラットフォームについて、同3月24日にメディア向けサービス説明会が開催された。

さくらインターネット株式会社 IoTプラットフォーム事業部 部長 竹井清恭氏、プロダクトマーケティングマネージャー 西田有騎氏、プロダクトマネージャー 小田島太郎氏、ハードウェアユニットリーダー 奥原史至氏

 さくらのモノプラットフォームのコンセプトについて、さくらインターネット株式会社 IoTプラットフォーム事業部 部長 竹井清恭氏が説明した。

 竹井氏は、さくらインターネットによるこれまでのIoTサービスとして、まず「sakura.io」を紹介した。通信モジュールからプラットフォームまで一気通貫で提供するサービスだ。ただし、専用モジュールによる展開のため、スケーラビリティに制約があったと語った。

 続いて、モバイル通信サービスの「さくらのセキュアモバイルコネクト」を紹介した。1枚で3キャリアにつながる広い通信エリアや、大量デバイス&小容量通信のコスト低減という特徴を持っていた。ただし、通信サービスのため、顧客がシステム構築しなくてはならない範囲が広くなると語った。

 ここの3つめのサービスとして、さくらのモノプラットフォームが加わる。プラットフォームと設計状況の提供により、顧客のシステム構築の範囲を小さくする。同時に、専用モジュールを使わないことで、ハードウェアの設計や製造の制約を少なくし、スケーラビリティを担保する、と竹井氏は説明した。

さくらインターネットのIoTサービス

 さくらインターネットがIoTプラットフォームに取り組む理由については、さくらインターネット株式会社 IoTプラットフォーム事業部 プロダクトマーケティングマネージャー 西田有騎氏が説明した。

 さくらインターネットは、クラウド事業者として、データセンターによるハウジングサービスから、IaaSのさくらのクラウド、モバイル通信サービスのさくらのセキュアモバイルコネクトまで基盤を持っている。同時に、クラウド事業者としての経験を持っている。「こうした必要なリソースを持っていることに尽きる」と西田氏は語った。

さくらインターネットの持つIoTサービスに必要な基盤と経験

 西田氏はsakura.ioの取り組みで気がついたこととして、石狩市と実施している河川水位計測システムでの経験を紹介した。当時LTEの省電力規格とされていたCat.1でも消費電力がまだ大きくバッテリーが大型化するなど、年単位での運用を実現することは困難だった。さらに、メンテナンスのコストが上がって、過疎地への設置は難しいとわかったという。

 「自社で構築したことによって得られた知見として、ハードウェアは絶えず進化しているので、見直しができないと足かせになることもある」と西田氏は語った。

 また、さくらセキュアモバイルコネクトの取り組みで気づいたことも紹介した。新たにIoTシステムを構築しようとする顧客には、SIM以外のシステムの構築が大変で、検証するだけでも開発がハードルになることがわかったという。

sakura.ioの取り組みで気がついたこと
さくらセキュアモバイルコネクトの取り組みで気づいたこと

 こうした取り組みでわかったことから、IoTプラットフォームに必要なものとして、ハードウェアにロックインされず「さまざまなハードウェアから利用できる」こと、ハードウェアやソフトウェアを手探りで作らなくてもいい「開発を助ける「お手本」が用意されている」こと、企画段階でも運用段階でも「わかりやすくムダのない課金体系」の3つを西田氏は挙げた。

IoTプラットフォームに必要なもの3つ

プラットフォーム、設計情報、通信回線を提供

 さくらのモノプラットフォームのサービス内容については、西田氏と、さくらインターネット株式会社 IoTプラットフォーム事業部 プロダクトマネージャー 小田島太郎氏が説明した。

 まず設計コンセプトは、オープンにするというものだ。プラットフォームの仕様・インターフェイス・実装例をオープンにする。デバイスも、特定なハードウェアや高スペックなハードウェアに依存せず、Linuxが動くリッチなものでなくてもよい。アプリケーションも特定のOSや言語に依存せず、通信も特定の通信方式に限定しない。

 さくらのモノプラットフォームでは、IoTシステムの構築を楽にするプラットフォーム、IoTデバイス開発のための設計情報、マルチキャリア対応通信回線の3つの機能やサービスを提供する

設計コンセプト
サービスの全体増

プラットフォーム

 サービスの形態としては、前述のように、デバイスとクラウドアプリケーションの間に入る。間に入って「柔軟なデータ中継や拡張」「デバイス管理」「管理インターフェイスの提供」によって、IoT開発を楽にするというものだ。

 まず柔軟なデータ中継や拡張。直接通信すると、相手に合わせた通信プロトコルの実装がそれぞれ必要になるため、資源が少ないと実装を妥協することもある。それに対して、さくらのモノプラットフォームでは、1つのプロトコル(バイナリ形式)を実装するだけで、クラウドアプリケーションとの間はさくらのモノプラットフォームが変換して通信する。

 そのほか、IoTデバイスとクラウドアプリケーションの数が増えたときに組み合わせの数が爆発することを防いだり、通信圏外などのオフラインのときの処理への対応などもある。

 デバイス管理としては、IoTデバイスの登録、認証、編成、監視といった機能を提供する。

 そして管理インターフェイスとして、Web UIとAPIの2つを用意する。

柔軟なデータ中継や拡張
デバイス管理
管理インターフェイス

設計情報

 設計情報としては、開発キット、デバイスSDK、クラウドSDKを提供する。情報は、オープンソースソフトウェアライセンスのひとつである「MITライセンス」に基づいて、商用利用を含め自由に利用できる。

 開発キットとしては、IoT デバイスの電気設計に役立つDIP型LTEモジュール基板や、M5Stack向け変換基板などのサンプル基板を提供する。

 デバイスSDKとしては、デバイスとプラットフォーム間の通信仕様に関する「デバイスI/F仕様書」、プラットフォームとの通信に関する「通信ライブラリ」、市販のLTE通信モジュールやマイコンボードを使った「デバイス実装例」を提供する。

 クラウドSDKとしては、アプリケーションとプラットフォームの間の通信仕様に関する「クラウドI/F仕様書」や、サンプルのソースコード例である「クラウドアプリケーション実装例」を提供する。

設計情報として、開発キット、デバイスSDK、クラウドSDKを提供
開発キット
デバイスSDK
デバイスSDKに含まれるデバイス実装例
クラウドSDK

通信回線

 通信回線は、コンセプトとしてはオープンに利用できるというものだが、認証などのセキュリティのため、まずはさくらのセキュアモバイルコネクトを使用する。今後、対応を拡大していく予定だ。

さくらのセキュアモバイルコネクト

今後の拡充予定

 最後に西田氏は、現在計画しているさくらのモノプラットフォームの拡充予定を紹介した。

 プラットフォームにおいては、到達確認や、デバイスの対応プロトコル追加(いまHTTPのみ)、クラウドの対応プロトコル追加(Webhookなど)、データの保存、データの可視化の機能強化を挙げた。

 設計情報においては、アプリケーション例追加を挙げた。

 通信回線においては、さくらのセキュアモバイルコネクト以外のモバイル回線の受け入れを挙げた。

 そのうえで、さくらインターネットだけではIoTのすべての領域をカバーできないとして「さまざまなパートナリングを進めたい」と語り、LPWA技術や開発キット、設計開発、コンサルティングなどのパートナーを探していると西田氏は語った。

今後の拡充予定
探しているパートナー