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日本オラクルがクラウドインフラへの移行を無償で支援、「顧客のDXに貢献する」

 日本オラクル株式会社は16日、同社のクラウドインフラ「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)への移行を支援するプログラム「Oracle Cloud Lift Services」(OCLS)について説明会を開催した。

 OCLSは、7月8日から国内で提供を開始しているクラウドへの移行支援プログラムで、利用料は無償。同プログラムでは「クラウドの専門家が移行を支援するとともに、その後の運用につながるスキルも提供する」と、日本オラクル 常務執行役員 クラウド・エンジニアリング統括の竹爪慎治氏は述べている。

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・エンジニアリング統括 竹爪慎治氏

 OCLSを提供する目的について竹爪氏は、「OCIを初めて利用する顧客を支援すること」「クラウドの利用を開始するまでの時間を短縮し、リスクを低減すること」「顧客満足度を向上させること」の3点を挙げている。

OCLSの目的

 「オラクルのクラウドは日本では後発で、パートナーも技術者も十分とはいえないため、このサービスを通じてOCIを理解してもらい、適切なインプリに結びつけたい。また、日本の顧客の多くは、システムモダナイゼーションに時間がかかる、期待した効果が得られないといった課題を抱えていることから、オラクルが支援して迅速にクラウド移行を進め、早期に効果を出してデータ活用や価値創造につなげてもらいたい。そしてOCLSによって安心感や納得感を得てもらい、継続利用や利用範囲の拡大につなげたい」と、竹爪氏はサービス提供の背景を説明する。

 日本市場におけるOCLSでは、「Oracle Database On Exadata Cloud」「Oracle Cloud VMware Solution」「High Performance Computing Applications On Cloud」といった3つのワークロードを中心に、さまざまなメニューを用意する。主なサービス内容は、実機でのPoC支援や、早期立ち上げ支援が中心だが、「日本ではクラウドのノウハウを顧客にトランスファーすることがまず重要。そこで、日本市場に向けサービスを独自で拡張し、成功事例によるケーススタディ支援や、フィジビリティスタディ支援も行う」としている。

OCLSについて

 フィジビリティスタディでは、クラウド化を検討する際の不安や懸念を整理し、検討時間の短縮や検討のリソース不足を解消する。現行システムやクラウドの要件についてヒアリングした上で、週に一度、約1カ月程度のワークショップを実施し、成果物を作成する。作成する内容は、移行対象システムの状況整理や、あるべきクラウドアーキテクチャの図、移行実現性評価、OCIの概算費用、移行に向けたタスクの整理などで、100ページ程度の資料にまとめるという。

フィジビリティスタディ支援

 PoC支援では、机上で確認できない項目や内容について実機で検証、顧客のリソースなどによって「基本モデル」「フル支援モデル」「QA支援モデル」の形式を用意する。基本モデルでは、PoCの内容検討やパラメータヒアリング、環境のプロビジョニングをオラクルのエンジニアが行い、テストデータの準備やテストの実施、検証結果の整理、結果についてのQ&A、PoC後のプロジェクト判断を顧客側で行う。その間、随時オラクルがZoomで作業支援や技術的な疑問に対応する。フル支援モデルでは、基本モデルに加えてテストの実施や検証結果の整理までをオラクル側で実施するが、社内リソースを十分に抱えた顧客に対してはQA支援モデルで対応してもらい、環境のプロビジョニングも顧客側で実施することになる。

PoC支援

 すでに国内でも、損保ジャパン株式会社、戸田建設株式会社、日産自動車株式会社など、約50社がサービスを利用し、約60件のプロジェクトを支援しているという。

 OCLSの賛同パートナーも17社にのぼる。アクセンチュア株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、SCSK株式会社は、OCLSを活用したサービスを提供するほか、NTTデータ先端技術株式会社、日本電気株式会社は、パートナー側で提供するクラウド移行サービスの中にOCLSを組み込む予定だという。

OCLSの賛同パートナー

 竹爪氏は、「既存システムのモダナイゼーションやDXを進めるには、エンドユーザーの自社主導が重要になる。一方で、顧客のシステムの状況を把握し、その状況を踏まえた移行計画を策定するには、パートナーとの協業が欠かせない。より幅広い顧客に日本の状況を踏まえたOCLSを提供していく上で、新しい形のパートナー協業モデルを推進していきたい」としている。

 OCLSでは、クラウド移行による既存システムのモダナイゼーションを支援するが、「今後は次のステップとして、データドリブンなDXアーキテクチャを目指し、より高度なデータ活用や新規サービスの開発を支援するようなサービスにまで拡張し、顧客のDXに貢献したい」と竹爪氏は述べた。