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日本オラクルがOCIの最新アップデートを解説、「配置の柔軟性」「セキュリティ」など4つの観点から強化を進める

 日本オラクル株式会社は27日、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の最新のアップデートについて説明。2022年3月に発表したOracle Cloud VMware Solutionの機能拡張や、5月に発表したOCI Securityの新サービスなどを紹介した。

 説明のなかで、日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長の佐藤裕之氏は、「ここ数カ月で、基幹システムをOCI上で稼働させる動きが進んでいる。さらに、自分たちの手でクラウドを活用し、基幹システムを移行させる『内製化』の動きが増え、それに関する相談が増加している。また、これまでは、Oracle Databaseを使ってきたユーザーがOCIを利用していたが、今後はOracle Databaseに依存しない形でOCIを採用することが増えるだろう」などとした。

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長の佐藤裕之氏

 説明会では、エンタープライズシステムをOCI上で稼働させた事例を紹介。NTTドコモでは、顧客情報管理システムの「ALADIN」において、OCIにより開発効率を向上。また京王百貨店では戦略的情報活用基盤にOCIを採用したり、エディオンでは12のシステムに分散していた基幹システムにOCIを採用したことを紹介した。このほか、SUBARUでは、最大数万コアにおよぶHPCの実行環境をOCI上に移行し、衝突解析シミュレーションなどに利用しているという。

 さらに、ぴあでは、チケッティングビジネスを支える基幹システムのデータベースとしてOCIを採用したり、東芝では、日本およびアジアのグループ95社の財務会計システムと、BI分析基盤にOCIを導入したり、といった例があるとした。

OCIの事例

 佐藤本部長は、「日本オラクルでは、クラウド移行を支援する無償サービスとして、Oracle Cloud Lift Servicesを提供している。これが、ユーザー自身が主導権を持って、基幹システムを移行させる『内製化』の動きを支援することにつながっている」とした。

 また、内製化を加速するために無償のOCIトレーニングを用意。「OCI ラーニングサブスクリプションや、OCI認定試験を無償化するなど、ユーサー自身にナレッジを蓄えてもらう仕組みを用意している」という。

 なお、認定試験は期間限定で無償化していたが、Foundations資格の認定試験は期間を限定せずに無償化することを決定したと説明している。

Oracle Cloud Lift Servicesの提供サービス
Oracle Cloud Infrastructure 無償学習プログラム

“4つの柱”の観点からサービスをアップデート

 一方、2021年12月~2022年5月にかけて実施したOCIの主なアップデートについては、「柔軟な基盤」、「データ基盤」、「クラウドセキュリティ」、「配置の柔軟性」という、OCIが打ち出している4つの柱の観点から強化したことを示した。

OCI拡充の方向性

 「柔軟な基盤」を担うOCIの強化では、2022年5月時点で、全世界37リージョンを展開しており、今後、7リージョンでの展開を計画していることや、Microsoft Azureとのインターコネクトにより、マルチクラウド対応を促進していることに加えて、「2022年3月には、コンピュータ、ストレージ、ネットワーキングの3つの領域において、11種類の新サービスや追加機能を発表。すでに一部サービスが利用できるようになっているほか、2022年内にはすべての新サービスの提供を開始する」(日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 部長の大橋雅人氏)という。

 また、2022年4月から運用を開始した国立情報学研究所のSINET 6(新学術情報ネットワーク)にも対応。Oracle Cloud Infrastructure FastConnectを利用することで、安定的な高速接続を実現し、研究所や大学などが、膨大な研究データを転送する際のコストを気にすることなく利用できるとした。

OCIのリージョン
より高い柔軟性を実現するOCIの新サービスや追加機能を発表
新学術情報ネットワーク(SINET6)に対応
日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 部長の大橋雅人氏

 「データ基盤の強化」としては、Oracle Exadata Cloud Infrastructure X9Mを発表。CPUコアを2.5倍搭載し、ストレージ容量を28%増加させたことに加えて、内部ネットワークにはPCIe4を利用したActive-Active構成を採用し、最大200Gbpsの帯域を実現するなど、ネットワークの高速化も実現した。

 「従来と同一価格でより多くのコンピュート、ストレージ、ネットワークを提供し、さらなる高速化を実現した」(佐藤本部長)という。

Oracle Exadata Cloud Infrastructure X9M

 「配置の柔軟性」としては、Oracle Cloud VMware Solutionの機能拡張について説明した。

 Oracle Cloud VMware Solutionは、顧客のテナンシー内にインストールしたVMwareベースのクラウド環境を提供。使い慣れたVMwareツールを使用して制御することが可能で、アプリケーションの再設計や操作の再構築を行わずに、VMwareベースのワークロードをクラウドに移行したり、拡張したりできる。

 日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの近藤暁太氏は、「特徴的なのは、VCN(仮想クラウドネットワーク)のなかに、VMwareのソリューションと、クラウド環境を同時に持つことができ、オンプレミスのネットワーク構成やセキュリティ設定、運用ポリシーなどをそのまま移行できる点である。移行コストや移行リスクを低減でき、さまざまなサービスとの連携が行いやすい」などと説明した。

 今回のアップデートでは、ワークロードにあわせて、最適なシェイプを使用することで、より少ないコストで稼働できるように、インテル X7による52コアのシェイプのほか、32コア、64コア、128コアによる3つのAMD E4シェイプを用意。ESXi Shieldedインスタンスによるセキュリティの強化、モニタリングおよび通知サービスとの連携による管理性の向上、VMwareとの共同検証による使用可能なVMware製品の拡充を図っている。

 Oracle Cloud VMware Solutionを活用した事例として、戸田建設では、基幹システムのクラウド移行にOracle Cloud VMware Solutionを採用。大日本印刷でも、700以上の仮想サーバーと統合データベースで構成していた販売管理や在庫、経理業務などの大規模基幹システムをOracle Cloud VMware Solutionを活用してOCIに移行。SBS東芝ロジスティクスでも基幹システムの移行にOracle Cloud VMware Solutionを利用したという。また、TISでは、Oracle Cloud VMware Solutionマイグレーションサービスの提供を開始している。

Oracle Cloud VMware Solution
最新アップデート
幅広い選択肢を提供
日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの近藤暁太氏

 「クラウドセキュリティ」の観点では、OCI Securityの新サービスとして、「OCI Network Firewall」、「Oracle Security Zones」、「Oracle Threat Intelligence Service」、「Oracle Cloud Guard Threat Detector」、「Oracle Cloud Guard Fusion Applications Detector」の5つを紹介した。

 OCI Network Firewallは、パロアルトネットワークスのNext Generation Firewallを活用したクラウドネイティブなファイアウォールであり、OCIのコンソールを通じたURLフィルタリング、侵入防御、TLSインスペクションなどのカスタマイズが可能になるほか、きめ細かいセキュリティ管理により、規制要件に対応することができる。

 Oracle Security Zonesでは、ペストプラクティスを強制的に適用する機能に加えて、ユーザー自身が適用ポリシーを定義できるCustom Security Zoneを追加。Oracle Cloud Guardとの組み合わせで、リスクを未然に防止する。

 Oracle Threat Intelligence Serviceは、脅威インテリジェンス情報の集約および管理を行うもので、オラクルのセキュリティリサーチャーや、オラクル独自のテレメトリ、abuse.chなどのオープンソースフィード、CrowdStrikeなどのパートナーからのインサイトを活用し、怪しい動作をするIPアドレスなどのセキュリティ情報を一元管理できる。また、これらの情報をもとに、脅威の検出や予防のガイダンスを提供する。

 ゲームサービス事業を行っているマイネットは、Oracle Threat Intelligence Serviceを導入。数クリックの導入工程でセキュリティ対策を強化できる点、無償で機能追加をしている点、新機能をいち早く利用し、セキュリティを強化できる点を評価しているという。

 Oracle Cloud Guard Threat Detectorは、MITER ATT&CKに準拠した振る舞い分析により、機械学習などを活用することで、必要なアラートだけを発することができるようにしている。

 また、Oracle Cloud Guard Fusion Applications Detectorでは、Oracle Fusion Cloud HCMと、Oracle Fusion Cloud ERPを対象に、特権ユーザーや重要なロール、機密性の高いデータに対するアクセス権限の設定変更など、SaaSならではの動きを検知してアラートを発するという。

 日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの大澤清吾氏は、「OCIでは、セキュリティ機能のほとんどが標準機能であったり、無償で提供するものになっている。新たな5つのサービスのなかでもOCI Network Firewallだけが有償になっている。セキュリティに対するOCIの基本姿勢を示している」と述べた。

5つの新しいセキュリティサービスを発表