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東芝、大規模・複雑なプラントのセンサーデータから異常を高精度に検知するAIを開発

 株式会社東芝は7日、大規模で複雑なプラントに設置した、数千点のセンサーから得た膨大な時系列データから、プラントの状態の変化の中に埋もれた異常の兆候を早期検知する異常予兆検知AIを開発したと発表した。

 現在、異常を早期に検知するさまざまな異常予兆検知AIの開発が進められているが、大規模で複雑なプラントにおける検知精度の向上が課題になっている。例えば、ポンプや配管など各機器の温度や圧力などは、プラント全体の状態や各機器の状態など複数の要因が同時に重なり変動するため、従来技術ではこれらの信号の変動を正確に学習できず、ある要因からの信号の異常な変化を、別の要因からの信号の正常な変化と誤認し、異常の検知ができない場合がある。

 そこで東芝では、同社グループがプラントメーカーとして蓄積した知見を活用した独自の深層学習技術を用い、センサー値の微小な変動に埋もれた異常の兆候を検知するAI技術を開発した。開発したAIは、2つの深層学習モデルを用いてセンサー値の正常状態を高精度に予測し、センサー値と予測値のずれから、従来では捉えられなかったセンサー値の複雑な変動に埋もれた微小な異常変動を検知できる。

異常予兆検知AI

 開発したAIを用いて、水処理試験設備の公開データで異常検知を実施したところ、検知性能は従来技術から12%向上し、世界トップレベルの検知結果が得られたと説明。この検知性能の向上により、例えば、人が気付いた時点よりも6.8日早い時点で異常の兆候を捉え、通知することが可能になる。

 また、この技術により異常を早期に検知することで、異常や劣化の状態に合わせたメンテナンスを可能にし、CBM(Condition based Maintenance)による効率的なプラント運用・保守と稼働率の向上が期待できるとしている。

 東芝では、東芝エネルギーシステムズ株式会社子会社の株式会社シグマパワー有明が運営する三川発電所で、AIの実証実験を進めており、大量のデータをオンラインで監視し、早期に異常を検知できることが確認できているという。今後は、発電プラント向けPoC用システムの提供準備を2021年度中に完了し、さらに他のさまざまなプラントにおいても性能実証を行っていくとしている。