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KDDI、法人事業新領域で2ケタ成長へ――、新サービスや富士通とのパートナーシップも発表

 KDDI株式会社は28日、同社の法人事業について説明会を実施した。

 同社法人事業は、通信を中心とした「コア事業」と、新たな領域を手掛ける「NEXTコア事業」で構成されているが、KDDI 取締役 執行役員 専務 ソリューション事業本部長の森敬一氏は「2022年3月期のNEXTコア事業の売上高は前年比2ケタ成長を見込んでおり、法人事業全体の3割を超えるだろう」としている。

KDDI 取締役 執行役員 専務 ソリューション事業本部長 森敬一氏
KDDIの法人事業について

 NEXTコア事業は3つの領域で構成されている。スマートワークやゼロトラストなど、ニューノーマル時代の多様な働き方を支援する「コーポレートDX」と、IoTやクラウドなどで顧客の課題に共感しビジネス変革を支援する「ビジネスDX」、そしてデータセンターやコールセンターなどの事業基盤を提供する「事業基盤サービス」だ。このうちコーポレートDXとビジネスDXの2つの領域で、「2022年3月期の売上高が前年比20%以上となることを目指している」(森氏)という。

NEXTコア事業とは

 NEXTコア事業の具体的な取り組みとして、KDDIは今回さまざまなサービスを発表した。そのひとつが、コーポレートDXの領域に向けた新サービス「KDDIマネージドセキュリティサービス」だ。同サービスにより、「ゼロトラストを24時間/365日、安心して利用できる環境を提供する」と、KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長の藤井彰人氏は話す。

 同サービスでは、KDDIが独自開発したログ基盤に、セキュリティノウハウを持つ株式会社ラックの自動分析エンジンを搭載。複数のセキュリティサービスから収集されるログをひとつの基盤でリアルタイムに自動分析し、KDDIとラックの合弁会社であるKDDIデジタルセキュリティ株式会社のアナリストがログを調査し分析する。これにより、インシデントの発生を早期に検知できるという。

 藤井氏は、「今後もマネージドゼロトラスト分野のサービスを強化する」としており、2021年下期には海外拠点対応のSD-WANサービスの提供や、監視対象サービスの拡充を予定していると述べた。

KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長 藤井彰人氏
KDDIマネージドセキュリティサービス

 ビジネスDXの領域では、まず商用環境での5Gスタンドアローン(SA)構成の通信試験を開始したことを発表した。5G SAにより、高速・大容量通信に加え、「MECといわれるエッジ側でのコンピューティング環境や、ネットワークスライシングを組み合わせ、ニーズにあわせたネットワークの提供が可能になる」と藤井氏は説明する。

 5G SAの実証実験の一例として、藤井氏はソニー株式会社および株式会社フジテレビの事例を紹介。ソニーとの実験では、ライブ配信に最適化されたネットワークをオンデマンドで提供し、ライブ会場から全国各地にエンドツーエンドでリアルタイム配信を実施したという。

 また、フジテレビとは、低遅延での中継映像の伝送とクラウドスイッチングにより、報道中継現場の映像をより簡易に放送し配信することを目指した実証を行ったとのこと。

5G SAのフィールドテストを開始

 同じくビジネスDXの領域において同社が新たに発表したのは、「KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム」という構想と、その実現を支援する顧客ID管理サービス「KDDI IDマネージャー」だ。

 KDDIリカーリングビジネスプラットフォームとは、サービスインフラで顧客とつながり、データ分析で顧客を知り、マーケティングで顧客にサービスを届けるという流れが循環できるようにするというものだ。KDDIが通信事業で培ったノウハウを活用し、ワンストップで顧客のリカーリングビジネス実現を支援するという。

KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム

 この構想の下で提供する新サービスとして、KDDI IDマネージャーを発表した。KDDIはグループ全体で3000万以上のIDを保有しており、そのIDを支える認証技術や運用ノウハウがあることから、これを活用してIDによる顧客管理や保守・運用サービスを支援する。藤井氏は同サービスについて、「パスワードレスの機器認証や多要素認証に対応しており、ユーザビリティとセキュリティが高まる」としている。

KDDI IDマネージャー

 このほかにもKDDIはビジネスDXの領域において、5Gをベースにパートナー1000社とビジネスの共創に取り組んでいる。その一環として今回、富士通株式会社と共に5G技術を活用して社会課題を解決するというパートナーシップ契約を締結した。

 このパートナーシップにより、両社はローカル5Gとau 5Gを相互連携する「5G Service Platform」の実現に向け技術検証を行う。「ローカル5Gとキャリアの5Gは競合するのではないかと言われるが、顧客の体験価値向上のために連携していくパートナーシップだ」と藤井氏。また、サービス全般を網羅的に提供するため、業務ノウハウを持つ富士通のインテグレーション能力とKDDIのリカーリングモデルを統合し、「リアルとバーチャルを融合したB2B2Xのサービス基盤を提供していく」とした。

富士通とパートナーシップ契約を締結
「通信+αでDXを加速する」と意気込む森氏(左)と藤井氏(右)