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大和ハウス工業とNTT Com、IoT技術を用いて物流施設における熱中症やインフルエンザの発生リスクを低減

「DPL新富士Ⅱ」外観

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は20日、倉庫環境監視IoTソリューションを、大和ハウス工業が運営する静岡県富士市のマルチテナント型物流施設「DPL新富士Ⅱ」に導入。2021年8月23日から稼働させる。

 温度や湿度などの環境データを取得可能な2種類のセンサーと、NTT ComのIoTプラットフォーム「Things Cloud」を活用。コロナ禍でのマスク着用に伴う体温の上昇によってリスクが高まる熱中症や、温湿度の変化によって高まるインフルエンザの発生リスクを見える化することで、テナント企業や作業者が安全・安心に利用し、働ける物流施設の実現を目指す。

 大和ハウス工業 建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室の井上一樹室長は、「物流施設は、社会、地域、街にとって重要なインフラである。免震システムなどにより強固な建物を構築するのと同様に、建物に入居する企業や人が安心して働ける環境を、DXを活用して実現していくことが、デベロッパーである大和ハウス工業の使命だ」と、今回のIoTソリューション導入の狙いを述べた。

 また、NTT Com プラットフォームサービス本部データプラットフォームサービス部5G・IoTタスクフォース担当部長の飯田博之氏は、「新型コロナウイルスの感染リスクが高まる環境が明らかになった時点で、それに基づいたセンサーの導入や対策を行うことが可能だと考えている。現時点では、CO2濃度を計測して空気の換気を促したり、働く環境の人の密度を計測して対策を行ったり、といったことも可能になるだろう」とした。

(左から)大和ハウス工業 建築事業本部 営業統括部 Dプロジェクト推進室の井上一樹室長、NTT Com ビジネスソリューション本部 西日本営業本部 第二営業部門の脇野直樹部門長、NTT Com プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 5G・IoTタスクフォース担当部長の飯田博之氏

DPL新富士Ⅱ 倉庫環境監視IoTソリューション

 DPL新富士Ⅱは、新東名高速道路の新富士インターチェンジから約800mの位置にあり、敷地面積は4万4162㎡と、東京ドーム約1個分の広さを持つ。地上4階建てで延床面積は9万9203㎡。2020年4月28日に竣工している。今回のソリューションでは、13台のセンサーや中継器などを導入し、熱中症やインフルエンザの発生リスクをリアルタイムに見える化。リスクの段階に応じて、テナント企業や管理者が、施設内の温度コントロールや換気を行うことで、熱中症やインフルエンザの発生リスクを低減できるという。

 使用するセンサーは、一定照度以上の光があれば可動するため、電池交換が不要。また、無線通信機能を備えているので、施設内のレイアウトを変更することなく導入できる。「新たな工事費用なども不要であり、今回は、約2週間という短期間で実装した」(NTT Comの飯田氏)とした。

 フロアまたぎの通信を確保するために7台の中継器を用意したほか、クラウドとの通信用に1台のゲートウェイ装置を導入。センサーとの通信環境が悪化した場合には、別の通信経路に自動的に変更し、接続を維持する。

DPL新富士Ⅱ 倉庫環境監視IoTソリューション概要

 熱中症の発生リスク見える化については、物流施設内に設置された2台のWBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:暑さ指数)センサーが環境データを測定するとともに、熱中症発生リスクを示す暑さ指数を算出。これをThings Cloudで収集・蓄積して、「ほぼ安全」、「注意」、「警戒」、「厳重警戒」、「危険」の5段階で管理者のモニターに表示する。誰もがすぐに理解できるよう、グラフィカルな表示を用いているのも特徴だ。

 また、リスクの段階に応じて、テナント企業や管理者へリアルタイムにアラートメールを送信する。具体的には、31℃以上で「危険」、28℃~30.9℃で「厳重警戒」、25℃~27.9℃で「警戒」、21℃~24.9℃で「注意」、21℃未満で「ほぼ安全」を示すという。

 一方でインフルエンザの流行リスクの見える化では、施設内に設置された3台の温湿度センサーが環境データを測定。測定したデータをThings Cloudで収集、蓄積して、インフルエンザ流行リスク指数を算出し、「ほぼ安全」、「注意」、「警戒」の3段階でモニターに表示する。同様に、リアルタイムにアラートメールも送信する。

 ここでは、絶対湿度が7g/㎡以下になると「警戒」、7g/㎡を超え11g/㎡以下で「注意」、11g/㎡を超え17g/㎡以下で「ほぼ安全」を示すという。

WBGTリスクの算出
インフルエンザリスクの算出

 なお大和ハウス工業は7月に、物流のDX化を加速するため、建築事業本部内に物流DX推進グループを新設。デジタル技術の活用による物流ソリューションの提案を推進している。

 またNTT Comは、DXを支援するための次世代プラットフォームSmart Data Platform (SDPF)を提供するとともに、SDPFにおけるIoTプラットフォームとしてThings Cloudを用意している。

 両社では協業の第1弾として、2020年12月3日から、千葉県市川市のDPL市川で、AIを活用してマスク着用の有無やカフェテリアの混雑具合を検知し、自動で注意喚起を促す実証実験を行ってきた経緯があり、今回が第2弾となる。

これまでの取り組み

 今後は、DPL新富士Ⅱへの導入成果や改善などを通じて、大和ハウス工業が開発するマルチテナント型物流施設への導入を検討。さらに、物流施設内のサーキュレーターやシャッターと連動させて、室内環境を自律的に制御し、最適化する仕組みの構築や、AIなどの先進技術を活用した物流施設の高付加価値化、維持運用メンテナンスの省力化、SDGsへの対応に向けた検討を進めるという。

 NTT Com ビジネスソリューション本部西日本営業本部第二営業部門の脇野直樹部門長は、「大和ハウス工業が推進するDXのパートナーとして、今後も支援をしていく」と述べた。