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セールスフォース、AWSのソリューションを統合したコンタクトセンター向けソリューションを提供開始

 株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)は15日、同社のCRMプラットフォームであるSalesforce上にデジタルテレフォニーを統合したコンタクトセンター向けソリューション「Service Cloud Voice」を、同日より日本市場で提供開始すると発表した。

 Service Cloud Voiceは、同社のカスタマーサービス向けクラウドソリューション「Service Cloud」と、Amazon Web Services(AWS)の提供するCTIソリューション「Amazon Connect」を統合したもの。米Salesforce.comとAWSは、6月にグローバルで戦略的パートナーシップを強化すると発表しており、今回発表したService Cloud Voiceもこのパートナーシップの一環となる。

Service Cloud Voiceについて
Service Cloud Voiceの画面

 セールスフォース 執行役員 ソリューション営業本部 本部長の湯浅雅達氏は、「新型コロナウイルスの感染拡大により、全世界の人がコミュニケーションのあり方を考え直す必要に迫られている」とした上で、現在のコンタクトセンターの状況について、「非対面での顧客接点がこれまで以上に重要視されているほか、巣ごもり消費による通販需要も急増したことで、コンタクトセンターの需要が高まっている。その一方で、大人数のエージェントが同じ空間で会話し続けなくてはならないコンタクトセンターは、三密リスクがほかの業務体系と比べても高い。そのため、リモートワークでカスタマーサポートが提供できるような業務環境の構築を検討する企業も増えている」と語る。

セールスフォース 執行役員 ソリューション営業本部 本部長 湯浅雅達氏

 ただ、これまでのサーバー型コンタクトシステムは、「さまざまなモジュールを組み合わせて構成されており、構築には複数ベンダーによる専門知識や技術が必要だった。また、ハードウェアやネットワークの調達も必要で、多大な初期コストや時間がかかっていた。さらに、コンタクトセンターにおけるAI技術の適用には、コンサルティングや膨大なデータ収集と分析、ハードウェアリソースが必要だった」と、導入ハードルが高い点を湯浅氏は指摘、「こうした導入の障壁をなくすのがService Cloud Voiceだ」としている。

これまでのコンタクトセンターの課題

 Amazon Connectと連携したService Cloud Voiceにより、「顧客のビジネスニーズに合わせ、初期コストを抑えながら短時間でシステムが構築できる。既存システムをクラウド化する移行ニーズや、突発的なコンタクトセンターの立ち上げにも対応できる」と湯浅氏はいう。

 Service Cloud Voiceでは、AI機能によって音声通話がリアルタイムでテキスト化される。これまでは多くの時間とコストを掛けて構築する必要のあった音声のテキスト化だが、「Service Cloud Voiceであれば、音声認識機能の設定や、それに付随したエージェントの支援機能がすぐに利用できるようになる」と、セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの大竹絢子氏は説明。「音声データを元に、会話のキーワードから次に提案すべき商品をエージェントに示唆することや、応対終了後に後続業務を適切部門に自動通知するワークフローを起動するなど、業務プロセスの自動化も可能だ」としている。

セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 大竹絢子氏

 音声のテキスト化により、コンタクトセンターのスーパーバイザーが各エージェントと顧客とのやり取りを専用の管理画面からテキストベースで参照できるようにもなるという。そのため、スーパーバイザーがやり取りの内容を確認し、必要に応じてエージェントを迅速にサポートすることも可能になる。

 またService Cloud Voiceは、音声チャネルと、チャットなどのデジタルチャネルのシステムをひとつに統合。Service Cloud Voiceを通じて格納された通話データは、ほかのチャネルからの問い合わせと同様、Salesforce上からデータ分析が可能になる。これにより、顧客からの問い合わせ傾向を分析することや、応対品質の一元的な管理ができるほか、「どのチャネルからでもパーソナライズされた顧客体験が提供できる」(湯浅氏)としている。

 大竹氏は、これまでのコンタクトセンターソリューションとの違いについて、「これまでのソリューションは、電話と音声認識で別のシステムを利用していたが、今回のソリューションは、電話応対から音声認識、さまざまなタッチポイントから得られるCRMデータ、そしてAIによるデータ分析の結果までを、すべてひとつの画面で提供できる」と説明している。

 また、Amazon Connectとの連携については、「従来のService Cloudでは、Salesforceの提供するマーケットプレイスであるApp Exchangeを介してソリューションパートナーの提供するコネクタを利用し、Amazon Connectをはじめとする音声システムとの連携を実現していたが、Service Cloud VoiceではSalesforceの設定画面からコンタクトセンターを設定することが可能だ」(大竹氏)と述べ、パートナーシップの強化によって両システムが完全に統合された点を強調した。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 パートナーアライアンス統括本部 ISVパートナー本部 本部長の阿部泰久氏は、「Amazon Connectは、Amazonのカスタマーサービスがベースとなって誕生した」と、同ソリューションの背景を説明、「Amazonのコンタクトセンターで培われたテクノロジーであるAmazon Connectと、業界をリードするCRMプラットフォームのSalesforce Service Cloudを組み合わせることで、ハイパフォーマンスで信頼性の高いクラウドベースの顧客サービスソリューションが簡単に構築でき、顧客ニーズを先取りしてサービスを進化させることが可能だ」と述べている。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン パートナーアライアンス統括本部 ISVパートナー本部 本部長 阿部泰久氏
Amazon ConnectとSalesforce Service Cloudで実現できること

 湯浅氏は、今回のAWSとの連携について、「セールスフォースは、企業が顧客管理アプリケーションを購入してからシステムが稼働するまで多くの時間とコストがかかるのが当たり前だった時代に創業したが、当初よりAmazonで本を購入するのと同じくらい簡単に顧客管理ができることをビジョンに掲げ、クラウドサービスを展開してきた。今回AWSとの連携が実現したことで、まさにAmazonで本を購入するのと同じくらい簡単にコンタクトセンターの顧客管理ができるようになる」と語り、「これまでコストや時間の制約で導入に踏み切れなかった顧客をはじめ、さまざまな企業にこのソリューションを導入してもらいたい」とアピールした。

Amazonでの本の購入と同じくらい簡単な顧客管理が可能に

 Service Cloud Voiceは、Service Cloudのライセンスにアドオンして提供する。価格は、1ユーザーあたり月額6000円(税別)からとなる。

Service Cloud Voiceの価格