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NEC Xと米アルケミストがパートナーシップを締結 新事業創出を支援する「NEC アクセラレーター プログラム」を強化

 日本電気株式会社(以下、NEC)は18日、同社の子会社で、新事業の創出を推進する米NEC X,Inc.(以下、NEC X)と、スタートアップ企業の事業立ち上げを支援するシリコンバレーのアクセラレーター、米Alchemist Accelerator,LLC(以下、アルケミスト)がパートナーシップ契約を締結したと発表した。

 同日には、NEC Xのこれまでの取り組みと成果、およびアルケミストとのパートナーシップについてオンライン説明会が行われた。

 NEC Xは、NECの最先端テクノロジーを核に、シリコンバレーのエコシステムを活用したインキュベーション特化型事業開発会社として2018年に設立。客員起業家(EIR:Entrepreneur-in-Residence)を採用した新事業創出プログラム「NEC アクセラレーター プログラム」を通じて、これまでに3つのスタートアップ企業をスピンアウトさせており、今後はアルケミストなどのパートナーの支援を受け、この活動をさらに強化していく。

NEC Xの取り組み

 NEC 執行役員の中島輝行氏は、NEC X設立の背景について、「当社では、オープンイノベーションによる事業開発を推進しており、AI創薬や農業支援ソリューション『CropScope』、Smart Wellness、共創型R&D事業会社『BIRD INITIATIVE』などに取り組んできた。その中で、データ分析自動化事業のdotDataをカーブアウトさせ、スピーディーな事業開発を実現することに成功した。この実績を踏まえ、同様の仕組みで第二、第三の成功事例を生み出すべく、2018年、シリコンバレーにインキュベーション特化型のスタートアップ企業としてNEC Xを設立した」としている。

NEC 執行役員の中島輝行氏

 NEC Xが実施する「NEC アクセラレーター プログラム」では、ビジネスとテクノロジーに精通した客員起業家にNECの最先端技術を紹介し、客員起業家はおのおののビジネスアイデアを提案する。その中で優れたものが選ばれ、顧客発見や顧客実証などのプロセスを経て事業化を決定するという。

「NEC アクセラレーター プログラム」の概要

 NEC X President&CEOの井原成人氏は、「このプログラムでは、シリコンバレーのスタートアップコミュニティからさまざまなアプローチで100名以上の起業家を発掘し、技術シードと事業アイデアがフィットする人材を見極めて客員起業家に採用してきた。2018年の設立以来、5回のプログラムを実施しており、その中で、50以上の技術シードを取り上げ、顧客発見に進んだプロジェクトが23件、顧客実証に進んだプロジェクトが8件、最終的に事業化に至ったプロジェクトは3件となっている」と、プログラムの成果について説明した。

NEC X President&CEOの井原成人氏

 同プログラムを通じて事業化したプロジェクトは、Inguo.io、GAZIRU、Metabobの3社。Inguo.ioは、2019年11月に米国ニューヨークに設立。観測データから物事の因果関係を自動的に抽出する因果分析ソリューションを提供している。GAZIRUは、昨年4月に日本で会社設立。NECが開発した物体指紋認証技術を用いた個体識別サービスを、流通・製造業中心に提供している。

 そして、今回のアルケミストとのパートナーシップの先行事例として、今年1月に米国でスピンアウトしたのがMetabobとなる。Metabobは、ソフトウェアコードの構造を可視化し、機械学習によりバグを迅速に特定するツールを提供するスタートアップ企業。アルケミストの支援を受けて事業成長を図り、すでに10社以上への有償提供およびトライアルの実績を有している。

 井原氏は、アルケミストとのパートナーシップについて、「アルケミストは、アーリーステージのBtoB向けスタートアップ企業を専門とする、米国西海岸を代表するトップクラスのアクセラレーター。有力企業や投資家と連携し、北米・欧州を中心に企業インキュベーションの豊富な支援実績を持っている。今回のパートナーシップにより、アルケミストが持つ企業インキュベーションのノウハウやリソースを活用し、NEC アクセラレーター プログラムをさらに強化する。また、アルケミストの持つ起業家、企業、投資家、メンターなどの人的ネットワークにもアクセスできるようになる。さらに、プログラムを卒業したスタートアップ企業は、事業成長と投資機会の獲得に向けてアルケミストの支援を受けることが可能となる。現在、すでに顧客発見4プロジェクト、顧客実証2プロジェクトで連携を開始している」と述べた。

アルケミストとのパートナーシップ

 今後の事業展開としては、「今までは、NEC アクセラレーター プログラムの開発・検証・改善を通して技術起点型インキュベーションの基本機能を実証してきた。今後は、同プログラムの強化により事業化率の向上を目指すとともに、質の高い新事業を創出していく。2025年度までの5年間に、10件以上のプロジェクトを事業化し、企業インキュベーションの新たなモデルを確立していきたい」(井原氏)との考えを示した。