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NTT Com、ローカル5Gの導入コンサルから免許取得、機器構築、運用までを一貫して支援するサービスを提供

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、ローカル5G環境構築において、導入コンサルティングや免許取得、機器構築、運用の支援を行う「ローカル5Gサービス」を、3月31日から提供開始する。

 NTT ComやNTTグループが持つ知見やノウハウを活用し、ローカル5Gの利用に必要なプロセスをワンストップで提供。個別に準備が必要だったローカル5G機器を月額利用型サービスとして導入できることから、実証実験期間だけを利用する場合などにも適しており、柔軟な導入と運用負担軽減を支援するという。

 また、ローカル5Gに関する「導入コンサルティング」、「免許取得・機器構築」、「監視・保守・運用」といったプロセスをメニュー化し、これらを一元的に提供。月額約150万円から利用が可能であり、初期費用については、数千万円前半から。「システムを自前で構築するよりは安くできる」という。同社では、2025年度までに500システムの導入を目指す。

ローカル5Gサービス概要

 NTT Com データプラットフォームサービス部サービスクリエーション部門第四グループ担当部長の安江律文氏は、「実証実験で培ったローカル5Gの技術と、固定網、クラウドまでを、エンドトゥエンドで構築、運用できるのが強みである。また、当社のSmart Data Platformを活用することで、ローカル5Gを含む、さまざまなネットワークを通る企業データをシームレスに融合・整理・分析・活用することで、企業のDXを強力に推進できる。さらにNTTドコモとの連携で、キャリアグレードの5G技術や運用に関する知見を最大限に享受しながら、サービスを構築・運用できる」とした。

ローカル5Gサービスの特徴

 サービスのうち「導入コンサルティング」では、ローカル5Gの導入目的からヒアリングし、エリア調査などを実施した上で、最適なサービスと計画を提案。「免許取得・機器構築」では、ローカル5Gの運用に必要となる免許の取得代行や、無線システム構築で重要となる構築後のチューニング、検証を行い、信頼性および安全性の高いシステムを迅速に構築するという。また「監視・保守・運用」では、システムの監視、保守、駆けつけなどの運用業務を実施。資格が必要とする設置についても、無線従事者が代行設置する。

 NTT Comは、ミリ波帯(28GHz帯)に比べて遮へい物に強く、通信範囲の広さに特徴があるSub-6帯(4.7GHz帯)に注目し、実用化に向けた知見を蓄積。2020年12月には、Sub-6帯の実用局免許を申請している。

 そうしたノウハウをもとに今回提供する「ローカル5Gサービス」では、「ローカル5Gネットワーク」、「マネージドサービス」、「Smart Data Platform」といった観点から、機器やサービスを構成している。

 具体的には、使い方に応じた規模と構成で使い始めることができる「クラウド型5Gコア」、電波が扱いやすいSub-6帯とアンカーバンドが不要なSA方式を組み合わせることで、設備コストを抑えながら本来の5Gネットワークの強みを生かせる構成を採用した「Sub-6帯/SA方式対応」、NTTドコモが持つローカル5Gに関する多数の実証実験で培ったノウハウを生かして、外部干渉調査やチューニングなどによりキャリアグレードと同等の高品質なエリア設計を行う「高品質なエリア構築」、ローカル5Gに必要な機器を月額利用で提供することで、初期費用を低減するとともに、要望により機器の買い上げも可能な「5G端末(SIM含む)の提供」といった特徴を持つ。

クラウド型5Gコア
Sub-6帯/SA方式対応

 また「マネージドサービス」では、導入目的を実現するために最適な計画を策定する「導入コンサルティング」、委任状のみの手続きだけで、ローカル5Gの免許申請を代行する「免許申請」、設置工事や保守運用のほか、無線従事資格者が不要で構築、運用を可能にする「ネットワーク構築・保守」を提供する。

 「免許申請では、数多くの内容を事前に資料化し、各総合通信局に説明した上で申請を行う必要があり、マネージドサービスでは、これらの複雑な免許申請に関連する作業を一括して代行する」(NTT Comの安江氏)という。

マネージドサービス

 また「Smart Data Platform(SDPF)」では、ローカル5Gで収集されるデータを、蓄積、分析、活用するプラットフォームをワンストップで提供するという。「業界課題や地域課題のニーズに応じたデータ分析が可能であるほか、セキュリティの高いローカル5Gネットワークと、SDPFの持つマネージドセキュリティサービスを組み合わせることで、企業に特化したクローズドで高速な通信環境を提供できる」とした。

自社の実証実験、ユーザー事例を紹介

 説明会では、NTT Comによる実証実験や、製造業などにおけるユーザー事例についても紹介した。

 NTT Comにおける技術開発および実証実験事例では、同社ラグビー部シャイニングアークスの本拠地であるアークス浦安パークのローカル5G設備と、田町オフィスの5Gエミュレーター設備を接続し、QoSによる経路制御を行いながら、エンドトゥエンドでの映像ストリーム伝送に成功したことを紹介した。

 「これは、超低遅延の特長を生かした、エッジコンピューティングによるリアルタイム映像解析の実験である。スタジアムで撮影されている大容量の映像データを、エッジMEC(Multi-Access Edge Computing)に伝送することで、低遅延に、ディープラーニングで解析。得られた情報を元の映像に付加することで、スポーツシーンをよりリッチなコンテンツに仕上げられる。ラグビーのゴールキックシーンの映像に、ボールの軌跡だけでなく、ボールの角度や速度、最高到達点、飛距離などのさまざまな付加情報をリアルタイムで算出し、表示している。今後は低遅延性が求められるSmart Factoryでの適用なども見込まれる」(NTT Com イノベーションセンターテクノロジー部門担当課長の桐山直樹氏)とした。

自社施設で4.7GHz帯を使った映像伝送実験を実施

 またDMG森精機では、2020年5月から同社伊賀工場において、自動走行型ロボットであるAGVとローカル5Gを接続。AGVが収集する周辺環境の大容量データを、リアルタイムかつ安定的にサーバーに蓄積できたという。AGVの高性能化や生産現場の自動化につながる取り組みと位置づけている。

 ブリヂストンでは、2020年6月から、生産現場のDXに向けて4Kカメラによる検知ソリューションを導入。高いスキル者の技能分析などを行っているという。「工場内での電波の広がり方を確認するとともに、通信品質の実験を行い、ローカル5Gに接続したソリューションの有用性の検証も行っている。これを、工場内のローカル5G導入モデルにしたい」(NTT Com ソリューションサービス部デジタルソリューション部門第一グループ主査の柿元宏晃氏)という。

ローカル5Gを活用した自律走行型ロボット(AGV)稼働実験
広大な工場敷地内での大容量データ送受信・通信品質実験

 さらに、総務省の「令和2年度地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」として取り組んだ、ローカル5Gを活用した警備業務の高度化に関する実証実験では、ALSOKや京急電鉄が参加。羽田空港第3ターミナル駅で警備ドローンと警備ロボットをローカル5Gに接続し、4K映像を監視センターに送信し、不審者の自動検知を行ったり、介助が必要な人の検知を行ったりしているとのこと。

 「生産年齢人口の減少に伴い、警備業務における労務費が上昇。マンパワーに基づいた警備システムからの変革が求められている。警備員の目となる4K映像を、頭脳となるAIにつなぐ、神経の役割がローカル5Gになる。今後、警備業界以外にも、生産年齢人口の減少に悩むあらゆる業界に活用できるローカル5Gモデルにしたい」とした。

ローカル5Gを活用した警備業務の高度化に関する実証実験

 NTT Comでは、2020年に「Re-connect X」を事業ビジョンに掲げ、社会と未来をつなぐ「Smart World」、データと価値をつなぐ「Smart Data Platform (SDPF)」、安心、安全、柔軟につなぐ「ICTインフラのTransformation」に取り組んでいる。

 NTT Com データプラットフォームサービス部サービスクリエーション部門第四グループ担当部長の池上聡氏は、「SDPFでは、ローカル5Gを、データ利活用におけるデータ収集レイヤーの重要な技術要素と位置づけている。また、Smart Worldの実現に向けては7つの重点領域を推進するなかで、特に、Smart FactoryやSmart Cityの領域を中心に、ローカル5Gを活用したDXが加速すると想定し、取り組みを推進している。さらに、Smart Factoryでは、SDPFにおけるデータ収集の足回りとしてローカル5Gを活用。大容量や低遅延といった安定的な無線通信環境を活用している」と述べた。

 またNTT Comの安江氏は、「ローカル5Gの実装が本格化する時期は、ローカル5Gシステムを投入しているベンダーが商用品のラインアップをそろえてくる2021年度下期以降とみている。ローカル5Gに関する問い合わせは製造業が先行している」と述べた。

 一方で、ローカル5G共創環境として、Sub-6帯での実用局免許申請を実施した東京・芝浦の田町グランパークタワー内に、ローカル5G共創環境を設置し、2021年4月以降、利用を可能にする予定であることを明らかにした。

 顧客やパートナーとの共創を推進し、ローカル5Gを活用した新規ビジネスや、新たなユースケース創出に取り組む拠点に位置づけており、ここでの取り組みをベースにした顧客環境での実証実験や商用導入については、今回の「ローカル5Gサービス」によって支援を行っていくという。