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NTT Com、多段エッジコンピューティングを組み合わせたローカル5Gの実証実験を実施

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は16日、多段構成のエッジコンピューティングを組み合わせたローカル5Gの実証実験環境を構築し、2020年2月より検証を開始すると発表した。

 NTT Comでは、端末からの距離が異なる複数のエッジサーバーを多段で構成し、ニーズに応じて最適な位置におけるデータ処理を可能にする多段エッジコンピューティングの技術開発を進めている。

 実証実験では、この技術をローカル5Gと組み合わせることにより、トラフィック制御やセキュリティなどの機能を加えた高付加価値な無線ネットワークを構築し、技術的な検証や、ビジネスへの活用に必要な仕様の検討などを進めていく。

 ローカル5Gは、超高速、超低遅延で多数同時接続が可能な5Gを、局所的な範囲で利用する形態の無線ネットワークで、企業や自治体が、自らのサービス提供や業務遂行のために構築できる。総務省が制度整備を進めており、年内にもローカル5G無線局免許の申請受付が開始される予定となっている。

 免許を取得した企業や自治体は、所有する工場やビルなどの建物内や敷地内において、割り当てられた周波数を専有して通信できるようになり、かつ未登録の機器が接続できないネットワークを構築できることから、セキュアな無線通信環境を利用できるようになる。

 NTT Comでは、エッジコンピューティングとローカル5Gは、遅延の低さや可用性の高さなどの共通する特徴を備えており、組み合わせることによって大きなメリットが得られると説明。ビジネスにおけるローカル5Gの普及を見据え、従来培ってきたネットワークやクラウドの技術を活かした高付加価値なサービスの提供に向けて、実証実験を行うとしている。

 NTT Comは2018年から、ネットワーク上でトラフィックが集中する箇所(ネットワークエッジ、CPEなど)に多段でコンピュートリソースを配置し、通信内容に応じた適切な位置で、トラフィック制御やセキュリティなどの機能を提供するプラットフォーム「VxF基盤」を開発してきた。実証実験では、このプラットフォームをローカル5Gのモバイル環境における多段エッジコンピューティングに応用する。

 エッジコンピューティングでは、エッジの位置によって得られる効果が異なる。ネットワークエッジで利用する場合は、複数拠点からのデータ収集が可能になると同時に、通信量および通信コストの削減やデータ漏えいリスクの軽減が見込まれる。また、CPEで利用する場合は、遅延の極小化とネットワーク障害の影響を受けないことによる可用性の確保などの効果が期待できる。こうした目的に応じてエッジの位置を選択したり、組み合わせたりすることが、多段エッジコンピューティングにより実現できる。

 実証実験では、ラグビートップリーグに所属するNTT Com「シャイニングアークス」のホームグラウンドである「アークス浦安パーク」(千葉県浦安市)に実験環境を構築し、2020年2月から検証を開始する。

 検証では、ローカル5Gで用いる電波の伝搬・通信特性や、システムの機能検証を行う。また、スポーツ分野や「Smart Factory」における利用など、さまざまな活用事例を想定しながら、VxF基盤の機能拡充に求められる要件を抽出していく。さらに2020年度以降は、NTT Comが提供する「Smart Data Platform」や「Flexible InterConnect」と組み合わせた実証実験を複数拠点で実施する予定。

 実験環境は、ローカル5Gと多段エッジコンピューティングのショーケースとしての利用や、他の企業と連携したオープンイノベーションの場としての活用も行っていく。

 また、NTT Comは、ローカル5Gの有効な活用が見込まれる産業オートメーション分野について、同分野における規格の標準化を進める「OPCファウンデーション」への参画を2019年内に予定しており、標準規格に対応した技術開発を行うことで、産業オートメーション分野をはじめとしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に貢献していくとしている。

検証のイメージ

 OPCファウンデーションは、産業オートメーション分野などの業界において、安全で信頼性あるデータ交換を行うこと目的とした相互運用の標準規格「OPC UA」の開発と維持を行っている。NTT Comは、前述の実証実験と、OPC UAをローカル5G上で活用するための検証を並行して進め、さまざまな産業機器を安全に無線接続できる規格の実現を目指す。

 NTT Comでは、今後は実験で主に想定するスポーツやものづくり(Smart Factory)のほかにも、映像配信や流通などさまざまな分野で、多段エッジコンピューティングとローカル5Gの新しい活用方法を提案していくと説明。また、NTTグループをはじめとした5Gおよびローカル5G関連の事業者と連携し、社会における5Gの普及拡大に向けて取り組んでいくとしている。