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富士通研究所、複数の関節が連動する複雑な行動を高精度に認識できるAI技術を開発

 株式会社富士通研究所は13日、映像による人の行動認識において、箱を開けて物品を取り出すなど、複数の関節が連動して動くような複雑な行動についても、隣り合う各関節の位置や接続関係を用い、深層学習で高精度に認識できる技術を開発したと発表した。

 富士通研究所では、一般にAIによる人の映像認識では、手やひじ、肩などの骨格の各関節位置の時間的変化を特徴量として抽出し、立つ、座るなどの簡単な行動パターンとひも付けて認識していると説明。今回開発した時系列行動認識技術では、さらに、複数の関節が連動して変化するような複雑な行動についても、深層学習のAIモデルによる高精度な認識を実現するとしている。

 時系列行動認識技術では、関節位置をノード(頂点)として、人体の構造に基づいて隣り合う関節を結んだエッジからなるグラフを採用し、グラフ構造の畳み込み演算を行う「グラフ畳み込みニューラルネットワーク」の新たなAIモデルを開発した。同モデルを、あらかじめ関節の時系列データを用いて学習することで、隣り合う関節との接続強度(重み)が最適化され、行動の認識に有効な接続関係が獲得できる。

開発技術の概要

 同技術を、行動認識分野における骨格データを用いた世界標準のベンチマークで評価したところ、公開データセットにおける、立つ、座るなどの単純な行動では、隣り合う関節の情報を用いない従来技術と同等の正解率を保ち、開梱作業、物を投げるなどの複雑な行動では正解率が大きく向上し、全体として7%以上も上回り、世界一の認識精度を達成したという。

富士通研究所では今後、開発した技術で得られた複雑な行動を認識できるAIモデルを、行動認識AI「行動分析技術 Actlyzer」の基本動作100種類に追加することで、複雑な行動を高精度に認識するモデルを短時間で構築可能にするとともに、2021年度中の実用化を目指し、さまざまな業務の現場改善や安心安全な社会に向けた課題解決に貢献するとしている。