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富士通と仏Inria、時系列データから異常要因を特定するAI技術を開発

 富士通株式会社とフランスの国立研究機関Inriaは16日、時系列データにおいて、異常な状態と判定した要因を特定するAI技術を開発したと発表した。

 ヘルスケアや社会インフラ、ものづくり分野をはじめとするさまざまな場面で、多くの時系列データが収集され、AIを活用した状況判断や異常検知が行われている。その中でも、AIによる判定結果の根拠を説明することが求められているが、時系列データの場合は、AIの判定要因が多種多様に存在するため、専門家であってもどのようなデータの変化が異常判定に影響したのかに気付きにくく、異常な状態への適切な対応や防止策につなげることが難しいという課題があったという。

 富士通とInriaでは、データをある空間内に配置された点の集合とみなし、その集合の幾何的な情報を抽出するデータ分析手法である「Topological Data Analysis (TDA)」技術をベースに、時系列データにおいてAIによる異常判定の要因を特定し、正常と異常間の判定の変化を視覚的に分かりやすく提示できる技術を開発した。

TDAをベースとした異常を特徴付ける要因を特定する技術

 富士通が開発した、時系列データを特徴ごとに分類して異常検知する解析技術を用いて、AIにより異常と判定されたデータから、異常判定の要因となった特徴と、そうでない特徴を平面(TDA空間)上にマッピングする。その平面上で、要因となった特徴の点データを、要因でない特徴の点データ群に近づける変換を行う。変換後の点データ群の特性に基づいて、時系列データを復元し、正常と判定されるデータを生成する。

 これにより、正常と異常の時系列データの形状を比較でき、ユーザーは異常の原因究明を視覚的に行うことができ、さまざまな事象の時系列データにおいて、異常判定の要因分析を支援し、異常が起こるメカニズムの解明や、新たな解決策の発見などへの貢献が期待できるとしている。

 脳波の実データを活用したせん妄検出に技術を適用したところ、時系列データの波形の特徴が、せん妄状態に現れるSlowing現象と一致することが確認でき、時系列データの読影を通じて病気の原因を推定する際の参考にすることが期待できると説明。また、これまで困難だった病気の予兆判断や予防的な治療法の発見、解明されていない病態のメカニズム解明への応用など、医学的発展につながることが期待されるとしている。

 富士通とInriaは、今回共同開発した技術について、企業の業務現場や研究機関の実験などでの活用を促し、技術検証をしていく。また、技術の改良を重ね、富士通は2021年度中にAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の一つとして実用化し、幅広い分野への展開を目指す。