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Google Cloud VMware Engine、9月より東京リージョンでサービス開始 グーグル・クラウドがメリットを説明

パートナーによる検証結果も報告

 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社は29日、オンラインセミナー「Google Cloud VMware Engineソリューションウェビナー」を開催した。Google CloudのVMwareプラットフォームであるGoogle Cloud VMware Engine(GCVE)が9月に東京リージョンでサービス開始になったことを受けてのものだ。

 GCVEの概要の紹介とともに、主な用途であるLift&Shift(オンプレミスのシステムをそのままクラウドに移行してから徐々にクラウドに合わせていくやりかた)の解説、日本でのGCVEパートナーの紹介などがなされた。

GCVEの日本のイニシャルラウンチパートナー

VMwareワークロードをそのまま移行してから自分のペースでモダナイズ

 グーグル・クラウド・ジャパンの小池裕幸氏(上級執行役員 技術部門担当)は、「インフラの所有は、ほとんどの企業にとって競争力がない」として、クラウドの利用が企業にとって必要だと主張。その一方で、アプリケーションの変更やスキルギャップ、管理手法の変更といった移行のコストからクラウドに移行できない状況を説明した。

 それに対してGoogle Cloudが推奨するクラウドへの移行戦略が、Lift&Shiftだ。小池氏は、GCVEを使うことによって現行のシステムを変更なしでGoogle Cloudに移し、その後から自分のペースで既存のアプリケーションをモダナイズすることができると語った。

 GCVEの長所として小池氏は、VMwareワークロードをそのまま移行してvCenterでの管理やツールが使えるという「移行の障壁が低い」こと、ハードウェアやVMwareをGoogleがマネージする「TCO削減」、Shiftするにあたっての「Google Cloudの別プロダクトとの連携」の3点を挙げた。

 さらに小池氏は「VDI製品のVMware Horizonもサポートする予定だ。どこからでも仕事をする時代のソリューションとなるのではないかと思う」と語った。

グーグル・クラウド・ジャパンの小池裕幸氏(上級執行役員 技術部門担当)
Google Cloudが推奨するクラウドへの移行戦略
GCVEの長所

どこのクラウドに対しても統一されたオペレーションで管理

 ヴイエムウェア株式会社の秋山将人氏(執行役員 ソリューションビジネス管掌 兼 ストラテジックアカウントビジネス本部 本部長)は、VMwareのマルチクラウド戦略の一環としてGCVEを語った。

 秋山氏は、パブリッククラウドとオンプレミスを利用する企業が多数派で、さらに各サービスの特色を生かして複数のクラウドを利用することを検討していると説明する。

 ただし、マルチクラウドによってサイロ化されていき、複雑性だけが増す。それに対するVMwareの方針が「VMware Cloud」で、マルチクラウドに対して統一されたオペレーションやツールで管理し、統一されたポリシーを適用することを考えて、実現度を上げているところだという。

 VMware Cloudを実現するコアの製品が、仮想マシンのvSphereや仮想ストレージのvSAN、仮想ネットワークのNSX、さらに管理製品などをパッケージにした「VMware Cloud Foundation」だ。GCVEも、VMware Cloud Foundationによる一貫性のある基盤をGoogle Cloudで実現するものだと秋山氏は説明した。

 VMwareがGCVEで想定しているユースケースとしては、繁忙期にクラウドに一部トラフィックを担わせる「クラウド拡張」や、オンプレミスをクラウドへ移行する「クラウド移行」、ディザスターリカバリー(DR)、リモートワークのための仮想デスクトップ、アプリケーションの4つを秋山氏は挙げた。

 そしてそこでのVMware Cloudの価値として、幅広く導入されている「信頼性」、どこでも一環したオペレーションが動かせる「一貫性」、さまざまなクラウドにもコンテナにも対応する「柔軟性」、クラウド全体にわたってリソース管理を最適化する「コスト削減」の4つを挙げた。

ヴイエムウェア株式会社の秋山将人氏(執行役員 ソリューションビジネス管掌 兼 ストラテジックアカウントビジネス本部 本部長)
VMware Cloudを実現するVMware Cloud Foundation
GCVEのユースケース
VMware Cloudの価値

パートナーによるサービスや検証結果

 GCVEの日本のイニシャルラウンチパートナーとしては、株式会社システムサポート、丸紅情報システムズ株式会社(MSYS)、日本ヒューレット・パッカード株式会社(HPE)、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の5社がアナウンスされた。ウェビナーでは、このうちMSYSとシステムサポートがセッションで発表した。

 MSYSの清水浩祐氏(執行役員 クラウドソリューション事業本部 事業本部長)は、Googleクラウドを基盤としたサービス「MSYSデジタルワークプレイス」の中で、GCVEを使ったサービスを紹介した。

 「仮想デスクトップ on GCP」は、GCVE上のVDIサービスだ。GCVEによってハードウェアなどの管理が不要であるほか、HorizonもMSYSに任せられるという。

 「Lift&Shift/ハイブリッドクラウド」は、オンプレミスのvSphere環境や物理環境を、GCVEに移行したり、両者を接続したハイブリッドクラウドを構築したりするのを支援する。

 「BCP as a Service」は、BCPやDRのために2カ所にシステムを構築すると維持が負担になるところを、vSphere環境のセカンダリー環境をGCVEに置くものだ。

MSYSの清水浩祐氏(執行役員 クラウドソリューション事業本部 事業本部長)
仮想デスクトップ on GCP
Lift&Shift/ハイブリッドクラウド
BCP as a Service

 システムサポートの平瀬浩一氏(東京支社BS事業部 テクニカルマネージャ)と入江大氏(東京支社BS事業部 テクニカルエンジニア)は、東京リージョンでのGCVEの検証結果を報告した。「環境作成」「機能・プロダクト検証」「ワークロードVMの移行」「コスト」「オンプレ環境との違い」「今後の期待」の6項目について検証した。

 「環境作成」としては、Google Cloudのコンソールにサービスとして統合されていて数十分から2時間で開始できること、オンプレミスで同じことをすると設計や発注を含めて2~3カ月かかることを報告した。

 「機能・プロダクト検証」としては、VMware DRS、VMware HA、VMware FT、Oracle EE RAC、VMware Horizon 7、vRealize Operations、vRealize Log Insightの動作を検証。さらに、Google CloudのBigQueryやGCE、GCS、Cloud Logging、Cloud Monitoringとの連携も確認している。

 「ワークロードVMの移行」としては、いくつかの方法があるうちHCXでの移行がおすすめだと語り、100Mbpsベストエフォートの回線で10GBのVM(停止状態と無停止状態)を約2分で移行したことを報告した。

 「コスト」としては、ホストの稼働時間に対する従量課金という料金体系を説明。また、vSphere環境のTCOを25%削減したというGoogle Cloudの調査結果を紹介した。

 「オンプレ環境との違い」としては、物理ホストと物理ネットワークを気にする必要がないことをメリットとして挙げた。その一方で、移行時にはバージョンの互換性に配慮が必要なことを報告し、「ただし、これはオンプレミスでもハードウェアを新しくしたときなどに発生する問題」と付け加えた。

 「今後の期待」としては、現在はグローバルIP管理がGCPとGCVEでは別管理であること、現在はGCPのクラウドロードバランサーから直接ロードバランスできないこと、既存vCenterとの統合管理を挙げた。

システムサポートの平瀬浩一氏(東京支社BS事業部 テクニカルマネージャ)
システムサポートの入江大氏(東京支社BS事業部 テクニカルエンジニア)
環境作成の検証
ワークロードVMの移行の検証