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運用者に光をあてよう――、Cloud Operator Days Tokyo 2021が7月14日よりオンライン開催
イベントの見所を紹介
2021年7月9日 06:00
クラウドインフラ運用技術者のための年次カンファレンスイベント「Cloud Operator Days Tokyo 2021(CODT2021)」が開催される。今回のテーマは「運用者に光を」。参加は無料。CODTは、もともとOpenStack Days Tokyoの名前で開催されていたイベントの後継で、2020年よりCloud Operator Days Tokyoとなった。
CODT2021は、2020年に続き、オンラインで開催される。今回は、通常のセッションを7月14日から6週間、オンデマンド配信する形式をとる。
そして8月27日には、CODT2021の締めくくりとして、ライブ配信形式のイベントを開催する。そこでは、基調講演と、パネルディスカッション、そしてセッションの中から選考する「輝け! クラウドオペレーターアワード2021」の授賞式が行われる。
なお、2019年より開催されている、通信(テレコム)事業者のネットワークインフラについて議論する「Cloud Native Telecom Operator Meetup 2021(CNTOM2021)」も、CODT2021の共催として開催される。
運用者に光をあてることで、社会の安定化に貢献
イベントのテーマや狙いについて、6月30日に開催された説明会でCloud Operator Days 実行委員長の長谷川章博氏(AXLBIT株式会社)が解説した。
長谷川氏は、来場登録アンケートから「運用の課題」として参加者の悩んでいるポイントを紹介した。上位には「新技術への追従」「(運用者は地味なので集まってこないという)人材不足」「属人化」が挙がっている。この結果から氏は「自社だけだと思いがちだが、みな会社共通で同じ悩みを抱えている」と語った。
そこで「皆の知恵を集めて課題を解決しよう」というのがCODTの狙いだ。「運用の話は、家の中を見せるようでなかなか話してもらえないが、オープンソースでコードを共有するように課題や経験を共有したい」(長谷川氏)
長谷川氏は運用に関わるエンジニアの報われない日々について、「フェイルオーバーが成功したのに理由を問い詰められる」「新しい技術を使いたがるけど、互換性など、誰が面倒見るんだよ!」「運用でカバー? やってるのうちぐらいだよ(意外とみんなやっている)」「稼働率100%を達成しても誰も気がついてくれない。止まったらとがめられる」といった心の声を紹介した。
そこで今回のテーマは「運用者に光を」に決まった。先ほどの心の声に「フェイルオーバー成功すばらしい!」「新しい技術を使ってみたらここが大変だったよ!」「実はうちも運用で回避なんだよー」「稼働率100%! すごい! どうやったか教えて!!」と答えるようなものだと長谷川氏は説明し、「運用者に光をあてることで、社会の安定化に貢献する」と語った。
セッションを期間オンデマンド配信し、アワードで盛り上げる
セッション発表者を表彰する「輝け! クラウドオペレーターアワード2021」を初開催するのも、「運用者に光を」の一環だ。
前述したように、今回は通常のセッションを、ライブ配信ではなく6週間のオンデマンド配信とする。その理由として「ライブだと一体感があり、瞬間視聴数は多いが、配信しておしまいとなる。オンデマンド配信にすることで、トータルで見てもらえる数が多くなるんじゃないかと思う」と説明した。
また、実行委員で日本OpenStackユーザ会 会長の水野伸太郎氏(日本電信電話株式会社)「実行委員も議論したが、(リアル会場に行くならともかく)在宅勤務している中でまる1日セッションに張りついていられるかというと、難しい。好きな時間に見られるというほうが参加者をひきつけるんじゃないかと考えた」と語った。
ライブ配信でも後から動画がアーカイブ公開されることも多い。「最近ではオンラインイベント慣れしすぎて、セッションを後で見ればいいやと思って、結局見ないことがある」と長谷川氏。また、今回のような期間配信では、面白いセッションに気付いてもえないリスクもあるという。
そこで、アワードを設けることで、発表者のコミュニティを中心に話題にしてもらい、後からでも視聴回数を増やしていって、8月27日の授賞式までに盛り上げていく考えだという。
公開されるセッションは約60本。今回は、1セッションの時間を基本20分と短く設定した。これも、在宅勤務の合間に見やすいように考えたためだという。
これらのセッションを審査委員会が評価し、最も輝いたセッションに最優秀賞を贈呈する。また、ユニークなセッションに応じたさまざまな賞を用意する。審査委員会は、委員長を東京大学 情報基盤センターの関谷勇司氏が務め、ジャーナリストやライターが審査委員となる(情報開示:筆者も審査委員に参加予定)。
そのほか、セッションの視聴者プレゼントも実施する。セッションを見た視聴者の中から条件を満たすと抽選でAmazonギフト券がもらえる。
8月27日に表彰式やキーノートセッション、パネルディスカッション
8月27日のライブイベントでは、「輝け!クラウドオペレーターアワード2021」授賞式のほかにもセッションが予定されている。
キーノートセッションには、Open Infrastructure Foundation(旧OpenStack Foundation)のCOOであるMark Collier氏が登壇する。タイトルは未定。
もう1本のキーノートセッションでは、まだ正式決定していないが、海外から誘致したスピーカーがクラウドネイティブと運用について講演する予定だ。
パネルディスカッションも2本開かれる。1つめはCNTOMのパネルディスカッションで、タイトルは「あれからどうなった?ソフトウェア化(Cloud Native)のウソホント」。モデレータはクロサカタツヤ氏(株式会社 企 代表取締役)で、パネリストは国内主要通信事業者の現役開発者が登壇予定。
2019年の第1回CNTOMでは、モバイルキャリア4社のエンジニアがNFV導入について語りあうパネルディスカッションが開かれ、注目を浴びた。今回はそれに続くもので、5Gの導入の状況の変化などにも迫る予定だと、CNTOM2021の実行委員長の宮本元氏(KDDI)は説明した。
もう1つ、CODTのパネルディスカッションも開かれる。タイトルは「クラウド技術、自動化技術が基盤 "運用者" にもたらした効果と功罪」(仮題)。「クラウド技術や自動化について、キラキラした点だけでなく、デメリットや苦労している点について語りあう」と水野氏は説明した。
注目セッションも紹介
説明会では、注目セッションも事前紹介された。
まず、Yahoo! JAPAN大規模運用の裏側について、「Yahoo! JAPANのIaaSを支えるKubernetesクラスターのアップデート苦労話」と「超PayPay祭による高負荷にショッピングはどのように立ち向かったか」の2つのセッションがある。ちなみに後者は、超PayPay祭で大きなトラブルが起きたら公開しないという話だったが、成功したので公開されるという。
次に、時代を象徴する運用苦労話が2点。JPCERT 早期警戒グループ マネージャーの佐々木勇人氏「クラウドサービスのインシデント対応をめぐる「モヤモヤ」~JPCERT/CCのインシデント対応事例より~」では、SaaSサービスの設定変更による大規模情報漏えいの事例などが語られるという。また、VMwareの下出憲政氏による「35,000人の全社員がいきなりリモートワークしたらこうなった」は、ふだん各社の情シスにリモートワーク製品を提供する側が大規模に使った事例が語られるという。
CNTOMのセッションでは、テレコムインフラにおける標準化の最新状況とオープンソース実装についてのセッションがある。NTTドコモの石川寛氏は「Service Based Architectureを採用する5GCの標準化動向」、KDDIの加固秀太氏は「RANのオープン化を目指すO-RAN Allianceの最新動向」、楽天モバイルのオ・ジャヨン氏は「Zero Touch Provisioning実現に向けた取り組み」として登壇する。そのほか、ソフトバンクのセッションも予定しているという。
なお、説明会の時点で事前登録の多いセッションとしては、「Kubernetesでコンテナを使ってサービス化したら運用化したら運用者がログを追えなくて工夫した話」「SREのはじめ方」「NTTドコモ サービスデザイン部が数十億トランザクションの中で実践するサービスレベル管理」がトップ3であると紹介された。