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RPA×AIの自動化のすべてのプロセスを支援する――、UiPathが新製品・サービスを国内で一挙に発表
開発ツール「UiPath StudioX」、業務プロセス分析の「UiPath Process Mining」など
2020年5月28日 06:01
RPAツールベンダーのUiPath株式会社は27日、新製品群を発表した。2019年10月に米UiPathが開催した年次イベント「UiPath Forward III」で発表され、グローバルで順次リリースされてきた製品の、ローカライズを含む日本での発表と販売開始となる。
発表されたのは、現場の業務部門がRPAを開発するツール「UiPath StudioX」、RPA開発のための企業内コラボレーション「UiPath Automation Hub」、業務プロセスを分析してRPA化を支援する「UiPath Process Mining」。
また、RPAを統合管理するUiPath OrchestratorをSaaSで提供する「クラウド版UiPath Orchestrator」も国内発表となり、クラウド版UiPath Orchestratorを含むSaaSのUiPath Automation Cloudを、日本リージョンで同日より稼働開始した。
同日オンラインで開催された記者発表会において、UiPath株式会社 代表取締役CEOの長谷川康一氏は、UiPathの製品が「開発」「管理」「実行」の3カテゴリーから始まったと紹介。それを「発見」「協働」「測定」に広げることで、「RPA×AIの自動化のすべてのプロセスを支援する」と語った。
ワークフローを分析するProcess Mining
新発表のうち、UiPath Process MiningとUiPath Automation Hubは、自動化することの「発見」フェーズの製品だ。
この発見フェーズについて、俯瞰的に見て自動化分析するトップダウンのアプローチをUiPath Process Miningが、現場のアイデアを実現するボトムアップのアプローチをUiPath Task Captureが、それらを実現する円滑で正確なコミュニケーションをUiPath Automation Hubが受け持つと、UiPath株式会社の原田英典氏(マーケティング本部 プロダクト&イベントマーケティング部 部長)は説明した。
UiPath Process Miningは、2019年に買収したProcessGold社の製品をUiPath製品としてリブランドして新発表するもの。今回さらに、世界で初めてのローカライズとして日本語版も提供される。
UiPath Process Miningでは、システムのログを読み込んで分析し、ワークフローを図示する。ここで月ごとの変化を確認したり、ワークフローのヒストリーからボトルネックを分析したり、自動化されている割合なども分析できる。これをもとに、ビジネスプロセスの改善や自動化などにつなげる。
自動化のアイデアを集めるAutomation Hub
UiPath Automation Hubは、全社でRPAを推進するためのコミュニケーションハブだ。提供はSaaS型で、将来的にはオンプレミスも検討している。
世界で初めてのローカライズとして日本語版も提供される。業務プロセス文書化ツールUiPath Task Captureを同梱して販売する。
UiPath Automation Hubでは、「こういう自動化をしたら役立つ」というアイデアを投稿し、それに投票(いいね)していくことで、その数を見てRPAを開発する。また、アイデアによる貢献のポイントを表示するリーダーボードや、自動化割合やコスト削減などを表示するダッシュボードなども備える。
現場がRPAを開発できるUiPath StudioX
続いて、RPAの「開発」フェーズの新製品がUiPath StudioXだ。
RPA開発では、CoE(Center of Excellence:組織横断的専門集団)などの開発者だけではすべてを自動化するのは困難であり、現場の業務部門によるRPA開発が不可欠だと、UiPath株式会社の大森俊秀氏(ソリューション本部 エバンジェリスト)は語った。前者のためのUiPath Studioに対して、後者の製品がStudioXだ。
StudioXは、Microsoft Excelとシームレスに組み合わせたシンプルな操作により、本格的なプログラミング経験のない現場の業務部門の人がRPAを開発できるようにしたツール。例えば、Excelのセルで変数を代替することで、初学者が変数の概念につまずくのを防ぐという。
もともと日本の要望をもとにグローバルで開発された製品だと大森氏は説明。「現場の人にとって、いわば『頼れる部下』だ』。
今回リリースするにあたって、StudioXのテンプレート集を無償提供する。これをダウンロードしてすぐに動かせるという。
また、StudioXとStudioとでプロジェクトの互換性がある。これにより、例えば現場でStudioXで開発して、困った部分を開発者に渡してStudioで対応してもらうといったことが可能。また、Studioでライブラリ化した共通部品をStudioXで再利用できる。
スモールスタートに対応するクラウド版Orchestrator
こうして開発されたRPAを全社で統合管理する仕組みがUiPath Orchestratorだ。Orchestratorにより、管理統制や拡張、相互作用などに対応し、RPA導入効果を最大化できる。
このOrchestratorで、従来のオンプレミス版に加えて、「クラウド版Orchestrator」が発表された。これにより、数台のロボットから使いたい、スモールスタートしたい、社内ITをクラウド化している、といった要望に応える。
クラウド版Orchestratorは、SaaSサービスのUiPath Automation Cloudの一機能として提供される。UiPath Automation Cloudの日本リージョンはMicrosoft Azure上で構築され、今回稼働開始した。VeracodeやISO/IEC 27001などの各種セキュリティ認証も取得している。
導入事例も発表
UiPathの導入事例についてもいくつか発表がなされた。
長谷川氏は、日本政府と新型コロナウイルス感染症対策に関する協定書を締結したこと(5月20日発表)を紹介した。UiPathのRPAとAIの技術を活用して、公的機関や民間事業者の手作業を自動化し、迅速化やテレワークを推進するという。
原田氏は、まず日清食品の事例を紹介した。出荷案内リストを出荷先別にFAX送信する業務において、PDFをダウンロードして、手動でPDF編集し、手動仕分けして、FAX送信するという作業が発生していた。これをボタン1つでできるようにしたことで、170時間/月の手間を削減する見込みだという。
もう1つの事例が、茨城県庁だ。新型コロナにともなう感染症拡大防止協力金の支払い業務において、紙の申請書を目視で確認し、手入力し、支払い処理するという作業が必要だった。これを、申請書をAI-OCRで読み取り、自動記入し、システム連携で登録することで、1処理あたり80%を削減し、迅速な支払いを実現したという。
大森氏は、クラウド版Orchestratorをリリースに先駆けて利用している企業として、株式会社オープンハウスの事例を紹介した。G SuiteとUiPathを連係させるワークフローも実現しているという。