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人の興味や行動から街頭広告モデル創出や街づくりを支援――、富士通のAI画像解析ソリューション

 富士通株式会社は12日、スマート都市監視ソリューション「FUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance」(以下、GREENAGES Citywide Surveillance)の新版として、新たな分野への適用を可能にする「同 V3」の提供を開始すると発表した。

 今回の新版では、群衆の興味や行動に着眼したAI画像解析機能を追加。広告事業者や広告主のほか、駅や空港、大規模施設などの施設管理者向けに販売し、デジタルサイネージなどを活用した次世代型街頭広告モデルの創出、街づくりなどを支援するという。

GREENAGES Citywide Surveillance V3では、都市活動をデジタルに認識できる機能を追加しているという

街頭広告の価値測定や広告投資効果の分析を可能に

 「GREENAGES Citywide Surveillance」は、都市の見える化を通じて、街づくりを支援する画像解析ソフトウェアとして「同 V1」が2016年10月に販売開始され、セキュリティ関連企業や交通インフラ、企業などに採用されている。

 2018年5月には、同社のAI技術である「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の活用によって、人物や車両の検知だけでなく、人物の服装の特徴や、クルマの車種、メーカー、車型、色などを判別する機能を強化。解析結果をAPIで提供する機能を追加することで、都市のあらゆるシーンで活用できるように進化させた。

GREENAGES Citywide Surveillanceのコンセプト

 今回発表された「GREENAGES Citywide Surveillance V3」の新機能では、カメラの映像を利用して、群衆を対象に、視認方向や性別、年代など、群衆のリアルな行動や特徴をとらえることで、街頭や駅、空港、ショッピングモールなどに設置された広告媒体の価値測定や、広告投資効果の分析を行う機能を追加している。個人を特定せず、プライバシーに配慮しているのも特長だ。

 富士通ではこの機能を、「広告業界では、街頭広告の効果測定や分析が課題となっており、それを解決するもの。都市活動をデジタルに認識し、人と街に寄り添うAIをエンハンスするものになる」(富士通 テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部の有山俊朗本部長代理)と位置づけている。

富士通 テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部の有山俊朗本部長代理

 街頭広告では、広告主側において、広告投資の費用対効果が計測できないこと、ターゲットにリーチできたかどうかがわからないといった課題が、また広告会社側では、ほかのメディアの広告と効果を比較する指標がない、広告主に訴求できる効果測定データがないといった課題があったという。加えて施設オーナー側にも、販売額が適切かどうかがわからず、時間帯や場所に応じて異なる料金設定ができないといった課題もあったとのこと。

 しかし新機能を利用することにより、広告視聴数に応じたデジタルサイネージの販売や、ターゲット層の視聴状況に応じたダイナミックな広告表示が可能になるなど、人の興味や行動に着眼した、新たな街頭広告のビジネスモデルの創出や、来場者属性に応じた案内、人流最適化などの支援が可能になるという。

街頭広告の課題
街頭広告の効果測定が可能になるという

 なお視認測定においては、人物が小さく、顔が映っていない群衆でも、頭部の向きや角度などから、個々の視認方向の検出が可能。広告視聴数や視聴時間、視聴率を算出することにより、広告視聴数を把握してデジタルサイネージを販売できる。

 加えて、街頭や駅、空港、ショッピングモールなどに設置したデジタルサイネージや看板の誘導効果の測定、人流最適化、さらには、のぞき込みなどの不審な行動を検知して、安心や安全を強化する。

 「頭部や横方向からでも視線や属性を認識できることが大きな特徴。そのため、既設のカメラも場所を変えずに利用することができる。1万円程度の低価格のウェブカメラで撮影した画像でも分析が可能である」したほか、「顔認識技術を活用しているわけではなく、その点でも個人のプライバシーに配慮している」とした。

視認測定
カメラで撮影した映像から、サイネージを視聴している人を分析している

 また属性推定では、ランダムに人が行き交うような場所でも、個人を特定せずに髪型や服装などの全身の特徴から、群衆の性別や年代を推定可能。来場者の属性に応じた案内や広告表示を実現するインタラクティブサイネージの導入や、駅、ショッピングモールなどにおけるプライバシーに配慮した来場者の属性分析などでの活用を想定している。

属性推定
デジタルサイネージに表示された広告コンテンツごとに視聴年齢や性別を分析

 具体的な活用領域として、「来店客の興味や関心、行動分析によって、経験に基づいた判断から、データを活用して判断し、未来型の店舗オペレーションを実現する『リアル店舗マネジメント』、不審行動の検出などにより、地域の安心、安全を守る『パブリックセキュリティ』、サイネージ活用の活性化などにより、人が集まり、つながる街全体を快適に過ごすことできる『タウンマネジメント』の3つの領域で提案していくことになる」という。

GREENAGES Citywide Surveillance V3の適用場面と適用事例

 このうちリアル店舗マネジメントでは、小売店舗における顧客行動分析などに活用。顧客接点向上や、店舗そのものを広告メディアとして活用するような体験型店舗づくりに応用することができる。

 パブリックセキュリティでは、エンターテインメント施設による不審人物の検知や、銀行におけるATMの防犯強化などに利用。安全で親しまれる施設づくりができ、施設利用の活性化につながるとする。

 そしてタウンマネジメントでは、空港や観光地におけるカウンターオペレーションの効率化、人流マネジメントの活用などを想定。街のブランディングやプロモーションにも活用でき、人が集い、にぎわう街づくりにつなげられるとアピールした。「デジタルをまとうことで実現する、活気がある街づくりを支援したい」(有山本部長代理)。

 価格は、1サイネージあたり月額4万円から。導入サービスやコンサルティングは別途見積もりとなり、初期導入費用は数百万円を想定しているという。

 富士通では、2002年度末までに1万サイネージへの導入を目標としており、「2020年度中には、欧州、アジアにも順次提供していく」という。

 なお富士通は、研究部門の先端技術を社会に実装する取り組みを積極化しており、今回の取り組みはその一環となる。

 「海外においては、サイネージの販売が年率20%増の成長を遂げているが、日本ではそこまでの成長率はない。今回発表したソリューションが、国内サイネージ市場の成長の起爆剤になることを想定しており、まずは70万台といわれる、国内サイネージ市場の約1%の普及を目指したい」(有山本部長代理)としている。