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東京・有明のエクイニクス データセンター「TY11」、第1フェーズのラック数を上回る受注を獲得

 エクイニクスは2019年7月、東京・有明において新たなIBX(International Business Exchange)データセンター「TY11」を稼働させた。現在、この受注活動が順調に進んでいるという。

 TY11では、第1フェーズとして7000万ドルを投資し、950ラック、約3700平方メートルのコロケーションスペースで運用を開始。一部ラックでの稼働を始めながら設備導入を進めている段階だが、すでに第1フェーズのラック数を上回る受注を獲得したという。

IBXデータセンター「TY11」完成予想図(提供:エクイニクス)

 エクイニクス日本法人 代表取締役兼北アジア事業統括の古田敬氏は、「大口の案件を獲得できている。数メガワット規模の大口案件では、接続の遅延が少ない都内のデータセンターを利用したいと考えても、それを収容できる施設がない。TY11は、そうしたニーズに対応できる数少ないデータセンターになる」とする。

エクイニクス日本法人 代表取締役兼北アジア事業統括の古田敬氏

エクイニクスが運営する国内最大規模のデータセンター

 TY11は、エクイニクスのIBXデータセンターとしては東京都内で11拠点目となり、同社のデータセンターとしては国内最大規模となる。

 第3フェーズまでの段階的な拡張を予定しており、2023年の完成時には、鉄筋コンクリート構造の5階建ての建物に、3500ラック以上、約1万4300平方メートルのコロケーションスペースを展開することになる。

IBXデータセンター「TY11」の内部(提供:エクイニクス)

 大規模データセンターのメリットを生かして、経済性を追求しているのも特徴だ。

 エクイニクスでは、都内にある11カ所のすべてのデータセンター同士を接続しており、TY11では、同社が展開する基幹データセンターである「TY2」および「TY4」とダイレクト接続が可能となっている。

 接続プラットフォーム「Platform Equinix」内にある80以上のネットワークサービスプロバイダーへのアクセスを提供するほか、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)をはじめ、IBM Cloud、Microsoft Azure、Teradataを含む、国内285以上のクラウドおよびITサービスプロバイダーとの安全な接続も提供することができる。

 このため、TY11を利用することで、85以上の金融サービスプロバイダーが集う、日本最大の金融エコシステムとの接続性を確保可能になり、東京金融取引所(TFX)や東京商品取引所(TOCOM)といった主要な金融取引所にもアクセスできるという。

 またTY11では、非常用自家発電装置として、ディーゼルエンジンを使用している点も特徴だ。「日本のデータセンターで一般的に利用されているのはガスタービンだが、海外ではディーゼルエンジンがスタンダードとなっている。発電効率も高く、燃料は半分程度で済み、非常時の立ち上げ時間も変わらない。ガスタービンに比べると大型になるが、国内最大規模のデータセンターであるため、設置面では問題がない」(古田社長)という。

ディーゼル発電機(提供:エクイニクス)

 さらに、TY11が設置されたエリアは、災害リスクが低い「ハザードフリー」地区に位置しており、東京都江東区が指定する緊急避難地域にある。

 「TY11は耐震性に優れ、複数の防災設備を備えている。自然災害発生時には高レベルのセキュリティと優れた運用サービスを提供し、事業の継続性と安定性を確保できる」としている。

 一方で、TY11以外の都内のデータセンターに対する需要も旺盛で、「既存データセンターにおいても空きスペースは確保しており、小口の案件は、これらの既存のデータセンターに収容している」という。

 当面は、大口案件をTY11で、小口案件をその他のデータセンターで受注するという体制を取ることになりそうだ。

拡張計画を前倒し?

 さらに、エクイニクスでは、TY11の拡張計画を前倒しで進める可能性も示した。

 現在、TY11の第1フェーズにおける最後の1フロアの工事を進めているが、それと並行する形で第2フェーズの工事を開始する考えだ。旺盛な需要に加え、東京オリンピック/パラリンピックの開催や訪日外国人の増加などにあわせて、首都圏を中心とした建設ラッシュにより建設業者の確保が難しくなっていること、設備材料などの調達にも時間がかかっていることを考慮し、計画の前倒しを検討している。

 「東京オリンピック/パラリンピックの開催を控えた建設ラッシュに加えて、台風被害による災害復興による工事や、2025年の大阪万博やIR(統合型リゾート)に向けた見積もりなども始まっており、計画通りには進みにくい。前倒しで進めても、すべてが完了するのは当初計画通りの時期になるかもしれない」と、困難な建設業者や資材の確保を視野に入れて前倒しを進める考えだ。

 エクイニクスは全世界52都市に200拠点以上のデータセンターを持ち、9800社以上のユーザーを抱える。34万1000以上のインターコネクションを設置するなど、世界最大規模のインターネット接続環境を展開している。

 日本では東京以外にも、大阪にデータセンターを設置。国内12カ所のデータセンターを運用している。今後、大阪のデータセンターの拡張計画を含め、首都圏および関西圏に継続的に大型データセンターの開設を検討している。