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富士通の2018年度連結業績は減収減益、事業再編による減収影響大きく

 富士通株式会社は26日、2018年度(2018年4月~2019年3月)連結業績を発表した。売上収益は前年比3.6%減の3兆9524億円、営業利益は同28.6%減の1302億円、税引前利益は同33.3%減の1617億円、当期純利益は同38.3%減の1045億円となった。

 富士通 代表取締役副社長 社長補佐 CFOの塚野英博氏は、「再編影響を除くと前年から600億円の増収となっている。国内サービスでSIを中心に大きく成長した。また、本業での営業利益は1424億円となり、公表値を上回っている」などとし、事業再編が業績に大きく影響していることを示した。

2018年度の連結業績
富士通 代表取締役副社長 社長補佐 CFOの塚野英博氏

 ユビキタスソリューションおよびデバイスソリューションで実施した事業再編による減収影響は2100億円に達し、そのうち個人向けPC事業および携帯電話事業が連結対象外となった影響が1600億円。デバイスでは第4四半期に半導体販売会社と電子部品製造会社を連結対象外とした影響が500億円の減収になった。

 また、営業利益では、退職金給付制度の変更や個人向けPC事業の譲渡などにより、1053億円のプラス要素があったものの、ビジネスモデル変革費用として、1175億円を計上している。内訳は、欧州再編費用で638億円、リソースシスト関連で458億円、製造拠点やクラウド事業の再編で78億円が、それぞれマイナスとなった。

 「営業利益では、年初公表時には3つの増益要因をあげたが、先行投資の縮減と、不採算損失の圧縮は計画通りに進められたが、海外ビジネスモデル変革効果は期待に届かなかった」と総括した。

 なお、クラウド事業の再編は、2018年度に打ち出した新たなクラウド事業方針にのっとったもので、「顧客の要求が多岐に渡りはじめたことで、富士通のプロプラエタリモデルだけで取り組む方針から、マルチクラウド化へとシフトにした。撤収するものがあったり、開発負荷が大きかったものを削減している」と語った。

2018年度のセグメント別業績

事業別セグメント情報

 2018年度のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年比2.3%増の3兆1237億円、営業利益は同0.8%減の1879億円。「欧州のビジネスモデル変革費用として474億円を計上しており、このマイナス影響を除くと、大きく増益になっている」という。

 そのうちサービス事業の売上収益が同2.5%増の2兆6638億円、営業利益が同6.5%増の1740億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上収益が9.4%増の1兆1071億円、インフラサービスの売上収益が1.9%減の1兆5566億円となった。

 「ソリューションSIは、公共、製造、流通がけん引して、過去最高の売上収益を更新した。公共分野は大規模プロジェクトに加えて、中小規模の商談を積み上げたことで大きく伸長した。製造、流通分野では、好調だった前年からさらに積み上げができた。インフラサービスは国内は堅調に推移した。サービスにおける国内ビジネスは増収効果とともに、不採算損失の圧縮効果もあり、前年から大きく増益になった。また、サービス全体では、ビジネスモデル変革費用を除いた本業ベースでは1966億円と過去最高益を大きく更新した」などと語った。

 また、システムプラットフォーム事業の売上収益は同1.2%増の4599億円、営業利益は46.3%減の139億円となった。そのうち、システムプロダクトの売上収益が9.9%増の2734億円、ネットワークプロダクトの売上収益が9.3%減の1864億円となった。

 「IAサーバーが国内、海外ともに、堅調に推移したのに加えて、ソフトウェアが増加した。だか、国内向け携帯電話基地局などが低調に推移した」という。営業利益は、ドイツの工場閉鎖に関する費用を中心とした欧州のビジネスモデル変革費用のマイナス影響で減益となったが、これを除いた本業では128億円の増益だという。

テクノロジーソリューション
サービス事業
システムプラットフォーム事業

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年比23.2%減の5099億円、営業利益は前年から317億円悪化し、204億円の赤字。「個人向けPCおよび携帯電話事業の事業再編による影響があったが、再編影響を除くとほぼ前年並みの水準。営業利益も、国内、ドイツの製造拠点の再編などによるビジネスモデル変革費用の影響を除くと、ほぼブレイクイーブンになる」という。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年比13.0%減の4870億円、営業利益は同66.9%減の45億円となった。そのうち、LSIの売上収益は25.0%減の2100億円、電子部品の売上収益は1.1%減の2778億円となった。

 「約500億円の事業再編の影響を除くと約4%の減収となる。だが、スマートフォン向けLSIの所要減の影響を大きく受けて減益になった」とした。

ユビキタスソリューション
デバイスソリューション

2019年度の通期業績見通し

 2019年度(2019年4月~2020年3月)の通期業績見通しは、売上収益は前年比5.1%減の3兆7500億円、営業利益は同0.2%減の1300億円、当期純利益は同0.4%減の1050億円とした。

 「デバイス事業を中心に約2000億円の事業再編がある。これを除くとほぼ前年並みの計画になる」とし、「2019年度は、タイミングの差はあるが、これまでに打ってきた施策の効果が出てくることになるだろう。一方で、海外は、構造改革の実行過程にある。デバイスは電子部品のネガティブな動きを背景にマイナスを見込まなくてはならない」と発言。「2019年度は、質を変えるというビジネスモデル変革をしっかりと行い、本業ベースの利益を拡大していくための土台を作り上げる1年にしていく」と述べた。

2019年度の通期業績見通し

 セグメント別業績見通しは、テクノロジーソリューションの売上収益が前年比0.8%増の3兆1500億円、営業利益は同25.6%増の2360億円。そのうちサービス事業の売上収益が同0.5%減の2兆6500億円、営業利益が同10.3%増の1920億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上収益が2.1%増の1兆1300億円、インフラサービスの売上収益が2.4%減の1兆5200億円とした。

 「国内はSIを中心に伸長するものの、海外が低調であり、厳しい数字を想定している」という。

 また、システムプラットフォームの売上収益は同8.7%増の5000億円、営業利益は215.8%増の440億円となった。そのうち、システムプロダクトの売上収益が9.7%増の3000億円、ネットワークプロダクトの売上収益が7.3%増の2000億円とした。

 「次世代スーパーコンピュータによる増収に加えて、ネットワークが2018年度に底を打ち、回復していくことを想定している」とした。

サービス事業の見通し
システムプラットフォーム事業の見通し

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年比5.9%減の4800億円、営業利益はブレイクイーブンを目指す。「2019年度も、個人向けPCおよび携帯電話事業の再編影響が残ることになる」。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年比38.4%減の3000億円、営業利益はブレイクイーブンを目指す。そのうち、LSIの売上収益は81.0%減の400億円、電子部品の売上収益は6.4%減の2600億円とした。「減収は再編影響が中心。スマホ向けLSIの所要減が継続するために減益になる」と見込んだ。

ユビキタスソリューションの見通し
デバイスソリューションの見通し

 富士通では、2022年に、テクノロジーソリューション事業において、営業利益率10%を目指しており、2018年度実績の6.0%から、2019年度見通しは7.5%に引き上げる計画。だが全社の営業利益率は、2018年度実績の3.3%から3.5%と低い水準のまま、ほぼ横ばいとなる。

 「国内サービス事業は盤石になっており、手応えはある。海外では、一部施策を2019年度に持ち越しているが、2019年度以降に少しインパクトが出てくるだろう。海外事業は時間がかかるが、軌道には乗せられるはずだ。海外売上比率50%は、盤石な国内事業の上で、次の成長を図るという点では必須であるが、目先の状況は再生過程にある。50%の比率については、引き続き目指していくことになる」とした。

 また、「ビジネスモデル改革は、2年ですべてをやり尽くすと宣言したが、5年間をかけても、まだビジネスモデル改革をやっていることについては、期待にそえずに申し訳ないと思っている。新たな経営体制で、10%の達成に向けて、具体的な積み上げを行っていくための時間をもらいたい。期待に対して、強く打って出るという段階にはないが、よく考えた上であらためて説明をしたい」と述べた。

 2019年6月には、時田隆仁副社長が社長に就任。新体制をスタートする。

 一方で、研究開発費用は、2017年度には1568億円、2018年度は1349億円、さらに2019年度は1300億円へと縮小させる計画だが、「これは、ユビキタスソリューションにおいて、事業譲渡とともに、外に持ち出したものがあり、その分が減少している。テクノロジーソリューションだけをみると、ほぼ同規模である。サービス系の会社は、他社もほぼ同等規模であり、十分な規模だと考えている」とした。