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クラウドビジネスのさらなる加速を――、日本マイクロソフトが2020年度のパートナー戦略を発表

 日本マイクロソフト株式会社は28日、2020年度のパートナー事業戦略を発表した。全社で掲げている「日本のナンバー1クラウドベンダーを目指す」という目標を実現するために、パートナーとのビジネスに関しても、次の3点に注力するという。

(1)ユーザーの業種業態に最適な支援の推進を実現するために、MPN for Industryパートナープログラム対応業種の拡充、インダストリーリファレンスアーキテクチャ拡充を実現する
(2)パートナービジネスモデルの変革として、マーケットプレイスによるソリューション拡販を強化。パートナー・トゥ・パートナーによるエコシステムを拡大
(3)クラウド&AI人材の育成。Microsoft Azure認定技術者の増強、業種SE向けトレーニング展開、クラウド&AI技術者の増強

パートナービジネスにおける3つの注力ポイント

 パートナー事業の責任者である日本マイクロソフト 執行役員常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏は、「パートナーのクラウドビジネス比率をさらに高めていくことができればと考える。大手パートナーであるSB C&Sでは、2018年度のマイクロソフト取扱比率が50%を超え、2021年度には75%まで拡大することを目標としている。同様に、クラウド比率70%を超えるパートナーを増やしたい」とパートナーのクラウド製品販売比率拡大に強い意欲を見せた。

日本マイクロソフト 執行役員常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏

業種業態に合わせた戦略

 3つの注力点のうち、(1)の業種業態に合わせた戦略については、現在、製造、流通、金融、ヘルスケア4業種に特化した「MPN for Industryパートナープログラム」を提供し、92社のパートナーが参画している。従来はユーザーだった大日本印刷、富士フイルムなどがパートナーに加わるなど、新しい動きも出ているという。

 また、開発を迅速に行い、コストの低減、早期採用を実現するためにリファレンスアーキテクチャを提供しているとのこと。

 8月27日にはMaaSのリファレンスアーキテクチャを発表したが、「MaaSとキャッシュペイメントの連携による付加価値創造などを実現するためには、共通のAPI、データ構造などが必要となる」(高橋氏)とし、差別化にならない部分、システム実装方式などの共通化を進める。

インタストリー別のリファレンスアーキテクチャを提供

 会見には、キャッシュペイメントサービスを提供する株式会社インフォキュリオン・グループの代表取締役社長 丸山弘毅氏が登場し、「これまでの金融サービスから得られるデータは静的情報だった。しかし、リアルタイムに変化するビジネスに対応するためにはこれまでのやり方を変える必要がある。さらに、消費者のデータは他社からのデータ共有が必要になり、クロスインダストリーであることが必須になる」と、異なる業種業態の企業が連携する必要性を訴えた。

 同社はこうしたサービスの基盤としてMicrosoft Azureを採用したが、採用理由について堅牢性、国内で東西リージョンによるディザスタリカバリ(DR)構成、将来性を選択理由に挙げた。

 「キャッシュレスを入り口とした次世代金融プラットフォーム」提供を計画しており、「融資スコアリングなど、新たなサービス開発を積極的に行いたい」(丸山氏)という。

インフォキュリオン・グループの代表取締役社長 丸山弘毅氏

パートナービジネスモデルの変革を推進

 (2)のパートナービジネスモデル変革としては、マーケットプレイスでのソリューション展開を強化する。

 エンドユーザー向けとしては、ビジネスユーザーを対象に、業種・業態に特化したパートナーのアプリケーションやサービスを提供する「AppSource」、IT技術者や開発者を対象としたAzureの機能を補完するためのコンポーネントや、Azure上で稼働するソフトウェアを提供する「Azure Marketplace」などを用意しているという。

マーケットプレイスの展開を強化

 従来はSIビジネスを行ってきたパートナーにも変化が起こっており、日立ソリューショングループでは、グローバルビジネスを行う製造業向けにクラウドサービス「IoT Service Hub」を提供。サービスビジネスを事業の中心とするよう変化を進めている。

 また、中堅・中小企業をターゲットとした、デジタルマーケティングのためのクラウドサービスを提供するrhipe社が、日本でビジネスを行う準備を進めている。マイクロソフトエンジニアを多数抱えている日本ビジネスシステムズと合弁会社を設立し、10月から事業開始予定だ。

 このほか、以前からマイクロソフトの大手パートナーだったSB C&Sは、国内ナンバー1ソフトウェアディストリビュータとしてのビジネスを、大幅にクラウドにシフトしているという。

 「IT産業の構造が大きく変化する中、当社も変化ではなく進化をしなければならない。クラウドビジネスを拡大するために、キラーサービスとしてMicrosoft Azure、Office 365などクラウドソリューションを販売している。2019年度には400万シートを超える販売数となりそうで、2年で販売数は倍になった」(SB C&S 代表取締役社長兼CEOの溝口泰雄氏)。

SB C&S 代表取締役社長兼CEOの溝口泰雄氏

 従来の売り切りビジネスから、サブスクリプションモデルへの変化に合わせるために、独自の契約管理プラットフォーム「ClouDX」を開発し、月次、従量、少額課金に対応した自動更新・自動請求などを実施している。

 「ビジネスを転換し月次課金、従量課金、少額課金への対応が容易ではなかったので、専用プラットフォームを開発した。すでに100社以上のベンダーが契約してくれている」(溝口氏)。

ClouDX

 同社では、取引先にデジタルトランスフォーメーション(DX)を勧めるためには自社でのDXも進める必要があると考え、2018年度は社内システムの35%がオンプレミス、32%がプライベートクラウド、33%がパブリッククラウドだったものを、2019年度はオンプレミス16%、プライベートクラウド31%、パブリッククラウド53%とした。さらに2020年度は、オンプレミス11%、プライベートクラウド28%、パブリッククラウド61%とすることを計画。自社基幹システムについても、Microsoft Azure上に構築することを計画しているという。

自社基幹システムの刷新

 課題としては、取引先の経営層の意識改革、エンジニア育成、新インフラ活用などを挙げており、「現在は50%の社内クラウド利用比率を75%まで拡大したい。50%という比率がワールドワイドでは決して高い数字ではないと聞き、さらにクラウド比率を高めていくこととした」(溝口氏)と、さらなるクラウドシフトを進める方針だ。

パートナーの人材育成を強化

 (3)の人材育成については、「オンプレミスからクラウドへ、技術者のシフトが日本のDXの鍵」と位置づけ、さらにパートナーの人財育成を強化する。

 今年から新たに、業種SEを対象とし、リファレンスアーキテクチャに基づいたトレーニングを行うほか、クラウドネイティブなデータサイエンティストを育成するためのトレーニングを実施する。これによって、より技術力の高いMicrosoft Azure技術者を増強する。

 人数としては、Microsoft Azure認定技術者の5000人増強を掲げるほか、業種SE向けトレーニングを7000人に実施。クラウド+AI技術者を1万人育成する。

パートナー向け人材育成の強化を図る

 なお、育成してきたクラウド技術者の数は、「ようやく累計目標の3割~4割。本年度の目標通りに教育できれば、累計目標の半分程度までそろうことのではないか」(高橋氏)としている。