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日本マイクロソフト、パートナー制度刷新から1年の成果を発表

「製品を売る」から「製品を使ったソリューションを作る」へ

 日本マイクロソフト株式会社は3日、2018年度(2018年6月期)に実施したパートナー制度変更の成果を発表した。

 昨年度、従来は8つに分かれていたパートナー制度を、執行役員常務 高橋美波氏のもとに一元化。クラウド時代にAIなど新しいテクノロジーをベースとした新しいパートナーエコシステム構築を進めた。

 高橋氏はこの1年の成果について、「これまでのマイクロソフトとパートナー企業による1対1の協業から、複数のパートナー連携による1対N型協業が誕生している。今年は金融など新たな領域での1対N協業を進めたい」と述べ、新たなビジネス拡大をさらに進めていく方針を示している。

日本マイクロソフト 執行役員常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏

 昨年変更されるまでのパートナー制度は、PCメーカーなどにOSやMicrosoft Officeなどをバンドル販売してもらうためのOEMパートナー、システムインテグレーションを行うパートナー、クラウドのパートナーなど多岐にわたっていた。これが、それぞれのパートナーごとに取扱商品、ターゲットとなるユーザーが異なる要因になっていたという。

 それだけに昨年のパートナー制度一本化は、大きな制度変更となった。高橋氏は、「ほかの外資系企業のように、新しい制度に移行するので対応できないところは切り捨てる、といったやり方はできない。従来のパートナーに新しいビジネスモデルへの移行を実現してもらうため、全国行脚を実施。なぜMicrosoft 365を“押して”いるのかを説明した結果、上層部の皆さまの意識変革が実現できてきたと思う」と主張。従来パートナーに向けて地道な取り組みも行いながら、新しいスタイルへの変更を促していったと説明する。

 これは、「従来はマイクロソフト製品を売ってほしいとお願いしていたが、現在お願いしているのは、マイクロソフトのテクノロジーを使ってソリューションを作ってもらうこと」(日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 統括本部長の細井智氏)という転換を狙ったもの。

日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 統括本部長の細井智氏

 例えば、マイクロソフト製品をバンドルして販売してきたOEMパートナーに対しても、「これまでのデバイス中心の観点から、ソリューションをセットにしたDevice as a Serviceのようなことができないかと考えている。OEMパートナーのビジネスも競争が激しくなっていることから、デバイスだけではない価値を出していく方向を模索している」(高橋氏)という。

 こうした施策の結果、Microsoft Azureの年間契約額は前年比350%となった。このベースとなる、Microsoft Azureに関するトレーニングコンテンツが約500、これを支える日本マイクロソフト内のテクノロジー部隊が530人存在する。

 CSPリセラー数は約2200社で、新規に公開されたMicrosoft Azureベースのビジネスアプリケーションを、協業によって受注した案件数が400強。また、新規に公開されたクラウドベースのビジネスアプリケーションが865あり、このうちMicrosoft Azure関連のアプリケーションは553となる。

 新たなソリューション領域でリリースされたソリューションは53で、このうちIoT関連が24、AI関連が46となった。

パートナーエコシステム

 「ソリューションの一部を事例として公表しているが、富士通の事例は、詳細は省くが、Microsoft 365に加えて両社の持っているAIテクノロジー、さらにデータ組み合わせて実現した。マイクロソフトだけでは実現できない新しいソリューションを開発する協業を行うことができた。2019年度はさらに加速し、協業を進めてきたい。日本市場、日本に特化した商品開発を実現し、しっかり製品化していく」(高橋氏)

新たなソリューションの例

日本で信頼を勝ち取るための取り組みを推進

 また、エンタープライズ市場に向けたクラウド事業を展開するにあたり、特に注力しているのがセキュリティ、日本国内での利便性といった、日本で信頼を勝ち取るための取り組みだ。

 細井氏は、次の3点が日本でAzureビジネスを拡大できているポイントだと説明する。

AI,マシンラーニング、APIの数など技術的な優位性

特にAIへの評価は高く、IaaSは他社サービスを利用しているものの、AI利用はマイクロソフトを選択というユーザーも存在する。

世界レベルのセキュリティ

サイバークライムセンターによって全世界で、どういったことが起こっているのか把握することができるセキュリティへの評価。

地域、業種、業界、各国政府などさまざまなコンプライアンスへの対応

競合となる企業の状況をきちんとトラッキングしながら、対応を行っている。

 「6月7日に、各府庁情報化統括責任者連絡会議において、『政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用にかかわる基本方針』が発表された。政府が利用するクラウドサービスとして推奨できる認証制度が記載されているが、ここで推奨されている認証制度への対応状況について、当社と競合各社を比較してもらうと、Azureが信頼あるクラウドとしてお勧めできるものとなっていることが理解してもらえると思う。よくAzureが取得している認証を掲載したスライドを提示しているが、これはAzureが着実に基準を満たして、きちんとした認証を受けているものだと知っていただくためのもの。この認証を地道に獲得していくことが、信頼、評価につながっていくものとなる」(細井氏)。

Azureがエンタープライズで選ばれる理由

 こうした取り組みによって、従来のようにマイクロソフト対パートナーという1対1の関係だけでなく、マイクロソフトと複数のパートナー企業が連携する1対Nの連携といった新しいビジネススタイルも登場している。

 その代表例といえるのが、広告代理店とテクノロジー企業が連携し、マイクロソフトの技術を使ってソリューションを生み出している例だという。

 こうした複数パートナーとの連携について、「例えば金融分野などでも実現できないか、模索を行っている」(高橋氏)としており、新たなソリューション開発にも注力していく計画だ。

 また、米国で7月中旬に開催されるパートナーカンファレンス「Inspire 2018」でも、パートナービジネスに関して新たな発表が行われる予定となっている。