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日本マイクロソフトが2020年度の経営方針を説明、「DXを支援する、信頼されるパートナーを目指す」

これまでの方針は踏襲へ

 日本マイクロソフト株式会社は20日、同社2020年度(2019年7月~2020年6月)の経営方針について説明した。

 説明は平野拓也社長が行ったが、平野社長は8月31日付で社長を退任し、9月1日付で、米MicrosoftのOne Microsoft Partner Group(ワンマイクロソフトパートナーグループ)バイスプレジデント グローバルシステム インテグレーター ビジネス担当に就任することが発表されている。また、日本マイクロソフトの特別顧問に就任し、日本マイクロソフトの事業を支援することも発表されているが、同社の事業責任は持たない。

 従って、平野社長が新年度の経営方針の発表を行ったものの、この計画を実行するのは次期社長となる。なお、次期社長は現時点では発表されておらず、今回の説明会でも明らかにはしなかった。これについて平野社長は、「今回の経営方針は、関係者が参加し、まとめたものである」としている。

日本マイクロソフトの平野拓也社長

“デジタルフィードバックループ”を強みとして展開

 2020年度の経営方針として、平野社長は、前年度に掲げた「2020年に日本のNo.1クラウドベンダーになる」という方針を引き続き掲げるとともに、「インダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーション、ライフスタイルイノベーションの3つのフォーカスポイントは変わらない」と述べ、これまでの方針を踏襲する姿勢を強調。その上で、「お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する『信頼されるパートナー』になることを目指す」とした。

3つのイノベーションを推進

 これについて平野社長は、「4年前は国内5位のクラウドベンダーであったが、2019年度末では2位になった。インダストリーイノベーションによって、顧客に近いところで語ることが必要であり、お客さまと密につながり、社員をエンパワーし、業務を最適化し、製品を変革するというデジタルフィードバックループを、日本マイクロソフトの強みとして展開する。これによって、社会変革に少しでも貢献できる企業になることを目指す」とした。

 具体的な取り組みとしては、「お客さまの業種業態に最適な支援の推進」「モダナイゼーションの加速(ITインフラの最適化)」「クラウド&AI人材の育成」の3点を挙げる。

2020年度のプライオリティ

 「お客さまの業種業態に最適な支援の推進」では、すでに流通業向けに展開しているリファレンスアーキテクチャの取り組みを、他業種にも横展開していく方針を示したほか、AIやIoT、MRを活用した各業種に最適化したソリューションの提供、新規ビジネスの開発支援、インダストリーの特化の推進体制を強化するという。

 「今年はMaaSに注力して、クロスインダストリーへの取り組みを行う」(平野社長)とした。

 日本マイクロソフト エンタープライス事業本部長のヘニー・ローブシャー執行役員常務は、「民間分野では6つの分野にフォーカスしており、グローバルでの自動車業界での知見なども活用できる。今後は、ゲーミングの開発者やパブリッシャーに向けてAzureを開発するために支援ができる。業種ごとに最適化した体制を確立し、それぞれの分野での競争力を高める」と述べた。

「お客さまの業種業態に最適な支援の推進」
日本マイクロソフト エンタープライス事業本部長のヘニー・ローブシャー執行役員常務

 また、公共分野を担当する日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部長の佐藤知成執行役員常務は、「日本マイクロソフトは、世界中の中央政府を担当している部門と連携しているほか、日本における組織の再構築を進めており、これを9月に発表できる。先生の働き方改革や生徒の学び方改革など、教育分野の改革を進めていくことになる。ヘルスケアでは、製薬会社でのAI活用、病院における遠隔診断およびAIでの分析といった使い方が始まっている。こうした活動をさらに加速する」と述べた。

日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部長の佐藤知成執行役員常務
注力インダストリー:公共分野

 「モダナイゼーションの加速(ITインフラの最適化)」では、「2025年の崖」からの脱却や、ミッションクリティカルシステムのクラウド移行を推進。SAP製品のサポート終了については、専門チームによる対応を実施するほか、Windows Server 2008やWindows 7のサポート終了にあわせた提案を加速することになる。

 「これまでは、仕方がないからIT投資をするとか、コストカットの役割であるという認識だったものから、ITはもはや経営課題であるという認識を、さまざまな業種の経営者が持ち始めている」と市場の変化についても言及。デジタルフィードバックループによる活動によって、モダナイゼーションを支援する姿勢を示した。

「モダナイゼーションの加速(ITインフラの最適化)」

 「クラウド&AI人材の育成」では、DXを推進する人材の育成を推進。クラウド&AI人材育成プログラムの提供、顧客のデジタルスキル育成、パートナーにおけるトレーニング拡大、マイクロソフト社員のテクニカルスキル向上に取り組む。

 「人材育成は、これまでにもパートナーと一緒に推進してきたが、本年度は能動的に取り組む。また、これは単年度の取り組みではなく、継続的に取り組むことになる」とした。

 グローバルで新たにChief Leaning Officer(CLO)を設置し、日本マイクロソフトの伊藤かつら執行役員が就くことになる。

 伊藤執行役員は、「お客さま、パートナー、マイクロソフト社員を対象にスキルを向上させることになるが、まずはお客さまのクラウド時代のスキル開発にフォーカスを優先する。正社員によるAzureテクニカルトレーナーを設置し、お客さまの状況にあわせて最適なトレーニングプランを策定し、割引価格で提供する」と話す。

 またパートナーに対しては、「サーティフィケーションの見直しを行い、技術スキルの習得を支援する」としたほか、「社員には月8時間をテクニカルスキル習得の時間に使ってもらい、毎週木曜日は“ラーニングサースディ”となる。日本マイクロソフトのスキルをあげ、カルチャーをあげ、DXを支援する」と述べた。

「クラウド&AI人材の育成」
日本マイクロソフトの伊藤かつら執行役員

日本でのクラウドの成長率はグローバルを上回る

 また2019年度の振り返りでは、米本社が発表した業績では、過去最高の売上高となる約13兆円(1258億ドル)に達したこと、コマーシャルクラウドの売上高は381億ドルに達し、世界最大のクラウドベンダーになっていること、競合会社の2倍の成長率になっていることなどを報告。

グローバルでのクラウドモメンタム

 「日本でのクラウドの成長率はグローバルを上回る成長を遂げている。これはクラウド全体だけでなく、Azure、Office 365、Dynamics 365といったそれぞれにおいてもグローバルの成長率を上回っている。2019年度は、グローバルでもトップレベルの成長を遂げている」と述べた。

 クラウドビジネスの成長については、「日本にデータセンターを開設したほか、クラウドの使い方に対する理解が進んだこと、エンタープライズグレードのクラウドの提供、Azureに関するパートナーのスキル向上が貢献している」という。

 また、「私が社長に就任してからの過去4年間で、売上高は2倍になっており、Azureは新規顧客が4倍になっている。DX関連の事例は前年比で2倍以上を発表した。また、日本マイクロソフト自らが働き方改革を進めており、4年前に比べて、社員1人あたりの就労時間は80時間削減されている。これは、10日間分の就労日数が減ったことになる。4年間にわたって会社の変革に取り組み、ミッションや企業像の浸透に力を注いできた。また、日本の社会変革に向けて、インダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーション、ライフスタイルイノベーションに取り組んできた」などと述べた。

日本マイクロソフトの成長

 平野社長は、9月1日以降、米ワシントン州レドモンドのマイクロソフト本社で勤務。バイスプレジデントとして担当するOne Microsoft Partner Group(ワンマイクロソフトパートナーグループ)は、パートナービジネスを担う部門で、そのなかで、平野社長は、グローバルシステム インテグレーター ビジネス担当として、日本を含む全世界のシステムインテグレータの支援などを行う。