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KDDI総合研究所や常葉大学など4者、IoTを活用した森林管理効率化の実証実験を実施

鳥獣による森林被害の軽減を図る

 株式会社KDDI総合研究所、KDDI株式会社、学校法人常葉大学、公益社団法人国土緑化推進機構の4者は21日、鳥獣による森林被害の軽減を目的として、IoTを活用した森林管理効率化の実証実験を、静岡県内の植林地域において8月より開始すると発表した。

 農林水産省の調査によると、近年、鳥獣による森林の被害面積は日本全国で年間約6000ヘクタールにも及ぶとのことで、林業にも深刻な影響を与えており、例えば、今回の実証実験を行う静岡県内の植林地域では、シカによる植林の食害被害が増加しているため、防鹿柵による侵入防止などの対策が講じられている。

 しかし、防鹿柵はシカなどの動物による衝突、倒木などの理由によって破損することがあり、破損の発見と迅速な修復を行うべく、定期的な見回りが必要になっているとのこと。また、こうした人手による監視業務は多大な負荷がかかることから、カメラによる遠隔監視も行われているが、防鹿柵は広大な植林地域に設置されており、柵全体の監視には多数のカメラを設置する必要があることから、機器費用、通信費用などの面で課題があるという。

 そこで今回の実証実験では、広範囲に設置された防鹿柵を低コストで遠隔監視する手法の確立を目指す。具体的には、植林地域を囲う防鹿柵に、加速度センサーと線通信モジュールを搭載した振動検知センサーデバイスを一定の間隔で設置。KDDI総合研究所にて考案した、動物の衝突、風など、防鹿柵の振動原因を、AI(機械学習)を用いて推定する手法を検証する。

 なお実証実験を行う植林地域はモバイル通信の通信エリア外であることから、収集した揺れデータをクラウドへ送信するためのセンサーネットワークを構築。このセンサーネットワークと、モバイル通信が可能な場所に設置されたゲートウェイ装置を経由して、揺れデータをクラウド上のサーバーへ送信するようにした。

 また、同地域は電力会社からの商用電源が届けられていないエリアでもあるため、振動検知センサーデバイスは省電力回路を採用しボタン電池で、またセンサーネットワークを構成する装置はソーラー発電で動作するようにしており、商用電源のない場所でも常時監視を行えるようにしたとのこと。

 今後は、この実証実験を通じて取得した揺れデータを検証し、振動原因の推定精度の改善を継続していくとともに、アラーム発報など実監視業務への適用性を検証していく予定だ。