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Google Cloudはお客さまに寄り添っていく――、新たなパートナーシップや業界別の事例などを説明
Google Cloud Next '19 in Tokyo基調講演レポート
2019年8月6日 06:00
グーグルジャパンによるGoogle Cloudのカンファレンス「Google Cloud Next '19 in Tokyo」が7月30日~8月1日に開幕した。7月30日はブートキャンプやハンズオンが、7月31日と8月1日に通常のカンファレンスが行われた。
会場は、ザ・プリンス パークタワー東京と東京プリンスホテル。また、両会場の間にある増上寺の境内にもブースが設けられた。
本稿では、7月31日の基調講演から、Googleによる講演の模様をレポートする。なお、新発表については別稿であらためてまとめているほか、基調講演でのゲスト講演についても別稿でレポートする。
技術と同時に業界別ソリューションもアピール
7月31日の基調講演では、4月に米国で開催された「Google Cloud Next '19」で発表された内容やそのアップデートが紹介された。特に、コンテナによるハイブリッドクラウドのプラットフォーム「Anthos」や、仮想マシンをコンテナに変換する「Migrate for Anthos」、マネージドデータベース「Cloud SQL for Microsoft SQL Server」などによる、エンタープライズシステムのモダナイズが取り上げられた。
また、米国のGoogle Cloud Next '19では、技術や新サービスと同時に、業界別ソリューションへの取り組みがアピールされた。今回のGoogle Cloud Next '19 in Tokyoでも同様に、産業別ソリューションや、そのためのパートナーソリューション、企業事例などをアピールしていた。中でも、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の事例が大々的に紹介された。
基調講演のオープニングで登壇した、Google Cloud 日本代表の阿部伸一氏も、「Google Cloudは、お客さまに合わせていただくだけでなく、私たちもお客さまに寄り添っていくことを大事にしたい。現行のシステムをパブリッククラウドに移したり、お持ちのITインフラをクラウドと同じ先端技術で進化させたりするなど、さまざまなことをやっていきたい。こうした課題を解決するために、いろいろなお客さまと活動をすでに開始している」と、企業システムのモダナイズ化や、産業別ソリューションについて強調した。
Anthosでアプリケーションをモダナイズ
Google Cloud テクニカルインフラストラクチャ シニアバイスプレジデントのウルス・ヘルツル氏は、まず、5月の大阪リージョンの開設を紹介した。また、4月に発表された、日本、グアム、豪州を結ぶ海底ケーブル(2020年前半利用開始予定)も紹介した。
ヘルツル氏は3つの柱として、「アプリケーション開発プラットフォーム」「デジタルトランスフォーメーションプラットフォーム」「各業界に特化したトランスフォーメーションのためのビジネスツール」を挙げた。
このうち、アプリケーションをモダナイズするプラットフォームとして、ヘルツル氏は4月の米国Google Cloud Nextで発表された「Anthos」を紹介した。GKE(Google Kubernetes Engine)相当のコンテナプラットフォームを、Google Cloud上とオンプレミスとで同じように使えるマルチクラウドのプラットフォームだ。ほかのパブリッククラウドへの対応も予定されている。
ヘルツル氏はAnthosについて、既存のアプリケーションをオンプレミスでモダナイズしてからパブリッククラウドに持っていくことができるし、新しいアプリケーションも動き、しかもマネージドなので企業はイノベーションに時間を使えると説明した。
パートナーによるDXプラットフォームの強化
続いてヘルツル氏は、デジタルトランスフォーメーションプラットフォームを説明。パートナー製品による強化として、アプリケーション開発とデータ管理、そのデータをもとにしたアナリティクスやAI、コラボレーションを挙げた。
そのうえで、さまざまなパートナー企業を紹介。野村総研(NRI)とアイレット(cloudpack)が新たにGoogle Cloudのプレミアパートナーに加わったことも紹介した。
業界別の事例を紹介
3つめの「各業界に特化したトランスフォーメーションのソリューション」については、Google Cloud パートナー&インダストリー プラットフォーム プレジデントのタリク・シャウカット氏が紹介した。
シャウカット氏は、さまざまな業界の事例として、金融サービス、ヘルスケア、小売、製造、通信・メディア&エンターテインメント、公共&教育、ゲームの各分野の例を挙げた。
金融サービスについては、データ分析やAIなどの応用を取り上げ、メルペイの事例やアクセンチュアのソリューション、ゼロバンク・デザインファクトリーのサービスを紹介した。
また、ヘルスケアについては、日本でHealthcare APIのベータを提供しはじめたことを紹介した。
ゲーム分野ではガンホーを紹介。また、今年リリース予定の位置情報RPG「ドラゴンクエストウォーク」を、GCPがサポートし、GKEやCloud Spannerが使われていることを明らかにした。
Migrate for Anthosをデモ
Google Cloud エンジニアリング、Anthosバイスプレジデントのイヤル・マナー氏は、Anthos関連の、4月の米国Google Cloud Nextで発表されたプロダクトとその後について紹介した。
マナー氏は、企業の80%のワークロードがオンプレミスで動いており、75%の企業がマルチクラウドやハイブリッドクラウドの導入を考えていると、調査結果から紹介した。そして、複数のクラウドをまたいで同じ方法で管理できるのがAnthosだと紹介した。
また、仮想マシンをコンテナに変換するMigrate for Anthosについて、Google Cloud カスタマーエンジニア 技術部長 佐藤聖規氏がデモをまじえて紹介した。
デモは4月の米国Google Cloud Nextと同じもの。まずVMware上で動くECサイトを見せた後、(変換そのものは飛ばして)いきなりMigrate for Anthosによって変換した後のKubernetesマニフェストを見せ、kubectl applyで実行している。
そのほか、Google Cloud Service Meshや、セキュリティ改善の提案などの機能も紹介した。
なお、会場で開催された記者説明会でのマナー氏の説明によると、Migrate for Anthosでは、コンピュートとストレージが自動的にデカップリングされるため、コンピュートをスケールアウトしやすくなるという。また、「GKEで動いているうち約半分はステートフルなアプリケーション」だとした。
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コンテナとサーバーレスのいいところどりをするCloud Run
マナー氏は続いて、「コンテナの柔軟性とサーバーレスの機敏性のいいところどり」として、Cloud Runを紹介した。コンテナをサーバーレスで実行するもので、コンテナなのでどの言語やライブラリでも使える。
一方、従量課金なので、動いていなければ料金ゼロとなる。Cloud Runを既存のGKEクラスタで使えるCloud Run on GKEも発表されている。
そのほか、クラウドネイティブアプリケーションを開発するのを助ける、各種IDEの拡張機能であるCloud Codeもマナー氏は紹介した。
SQL ServerとActive Directoryのフルマネージドサービス
Google Cloud データベース プロダクトマーケティングマネージャーのエイミー・クリシュナモハン氏は、マネージドデータベースを紹介した。
まず、4月の米国Google Cloud Nextで発表されたフルマネージドのMicrosoft SQL ServerサービスCloud SQL for Microsoft SQL Serverと、Active DirectoryのマネージドサービスManaged Service for Microsoft Active Directoryを紹介した。
実際にGoogle Cloud スペシャリスト カスタマーエンジニアリングの寳野雄太氏がデモしてみせた。既存のSQL Serverのフルバックアップをとり、それをGoogle Storageのバケットへアップロード。そして、Cloud SQL for Microsoft SQL Serverからインポートし、アプリケーションから参照先データベース設定を変更して正常に動くところを見せた。
また、Managed Service for Microsoft Active Directoryについても、SharePointの例などを見せた。
そのほかクリシュナモハン氏は、BigQueryからCloud SQLへのフェデレーションクエリや、Elastic Cloud on GCPについても紹介した。
日本企業の課題をデジタルが解決
この日の基調講演の最後には、Google Japan 日本法人代表のピーター・フィッツジェラルド氏が登場した。
フィッツジェラルド氏は、人手不足などの日本企業の課題を挙げ、それは同時にデジタルにとっての機会でもあると語った。
そして、ZOZOテクノロジーが画像検知にGoogle CloudのGPUでTensorFlowを動かして速度を55倍アップしたことを紹介した。また、リクルートでは予約の分析のためのHadoopやSparkをGoogle Cloudに移行して処理時間が14%になったことを紹介した。さらに、JR東日本が、画像処理で線路上の不具合をみつけてプロアクティブな保守につなげたことも紹介した。