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JFEスチール、IBM Watsonを活用した制御故障復旧支援システム「J-mAIster」を導入

 JFEスチール株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は7日、JFEスチールが、日本IBMの「IBM Watson」を活用した制御故障復旧支援システム「J-mAIster」を開発し、2018年9月に全製造ラインに導入したと発表した。

 これによりJFEスチールでは、各製鉄所の全製造ラインで発生したトラブルに対し、保全担当者が過去の事例や復旧に必要な情報を効率的に検索できるようになるとのこと。

 また今回、復旧時間を大幅に短縮するなどの効果が確認されたことを受けて、社内の他システムとの連携など、本格的な運用を開始したという。

膨大なデータからAIが最適な情報を提示

 鉄鋼業では、製造ラインの故障における復旧時間が生産性を大きく左右するため、AIを活用して復旧作業に必要な情報を的確に提供し、迅速な復旧を図るシステムの構築が急務になっていた。また、製鉄所は広大な敷地に展開されるので、敷地内の移動時間を削減するモバイル端末の導入も望まれていたという。

 今回JFEスチールが導入したシステムでは、保全担当者がモバイル端末に、故障の発生状況に関する質問などを入力すると、IBM Watsonの音声認識機能、および自然言語分類機能が質問の意図を読み取り、意図に沿った検索条件を「IBM Watson Explorer」へ引き継いで、過去の故障履歴、日報、各種マニュアルなどの膨大なデータから最適なデータソースを特定する。

 そして、類似性の高い情報を検索および分析し、復旧に必要となる情報をリアルタイムに画面上に表示するといった仕組みにより、保全担当者のタイムリーな復旧作業をサポートしている。

 JFEスチールでは2016年6月から、こうしたAI導入に向けて日本IBMのコンサルタントやエンジニアと共同で課題を特定し、適用範囲を検討してきた。開発作業は、JFEグループの情報サービス企業であるJFEシステムズが担当。2018年3月から西日本製鉄所の福山地区および倉敷地区で同システムの利用を開始した。

 さらに、同年9月に全国6地区の全製造ラインに展開が完了されており、利用開始以来、故障発生時に保全担当者が同システムに質問すると、類似の過去事例がモバイル端末上に即座に表示されるようになったことで、担当者の情報収集や移動にかかる時間を省いて、故障復旧時間を短縮した事例が増えてきているとのこと。

 なお同システムは、JFEスチール専用のプライベートクラウド「J-OS Cloud」上に構築された。J-OS Cloudとパブリッククラウド「IBM Cloud」を連携させたハイブリッドクラウド環境を構築することにより、セキュリティ要件を保ちながらIBM Watsonのような最新技術を柔軟に採用している。

 さらに、各地区のファイルサーバーに保管していた報告書や各種マニュアルなどは、全社共有のクラウドストレージ「Box」に集約して一元管理を行っている。Boxの持つ暗号化機能によってセキュリティが向上するとともに、地区を横断した情報共有による、円滑な保全業務を支援しているとのことだ。

 なお、このようなシステム導入の効果が高く認められたことを受け、JFEスチールでは、継続的なデータ蓄積や学習による故障解析・対策の実施や、故障対応の技術伝承などの効果を見込むことに加え、将来的に商品設計等の他業務領域へのIBM Watsonの活用も視野に入れている。