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日本の製造業に向け“人を中心としたDX”を支援――、マイクロソフトが取り組みを説明製造業の“コトづくり”を3つのイニシアティブでサポート

 日本マイクロソフト株式会社は5日、製造市場向け事業に関する取り組みについて説明した。

 日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部の赤田将之本部長は、「製造業は、強くトランスフォーメーションが求められている業種であり、異業種からの創造的破壊(デジタルディスラプション)も進んでいる。モノを作って、売るだけでなく、サービス、体験といった価値を付加することが重視されており、コトづくりへとシフトしはじめている。さらに製造業単体のアプローチだけでなく、インダストリー間の連携や、ボーダーを超えた新たなビジネスが出始めており、クロスインダストリーへの取り組みも加速している段階にある」と、現状を説明。

 「モノ売りからコト売りへの転換が求められるなかで、ディスラプションに対応するためのテクノロジーが必要とされている。日本マイクロソフトは、そうした変化において必要とされる技術やサービスを提供することになる」とした。

Microsoft Teamsを通じて説明する、日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部製造営業統括本部の赤田将之本部長

3つのイニシアティブにより、製造業の“コトづくり”をサポート

 日本マイクロソフトでは、2019年度の重点方針のひとつにデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を挙げており、そこで掲げる8つの重点業種のひとつに「製造」を位置づけている。

 赤田本部長は、「日本マイクロソフトでは、革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジーを通じて、日本の製造業のお客さまのより良い顧客体験の実現に貢献する。MicrosoftはGAFAとは異なりプラットフォーマーではない。お客さまを支えるテクノロジーやインフラサービスを提供する企業であり、オープンイノベーションを実践し、エコシステムにコミットする。日本の製造業の強みである人を中心としたDXを支援する」と述べた。

 具体的には、ファクトリーを広い意味でとらえ、スマートエンジニリングおよびスマートエンジニアリングを実現する「Factory of the Future」、コトを提供するサービスソリューションである「Products as a Service」、参加者をつなぎ、意思決定を速めるサプライチェーンマネジメント体制を目指す「Intelligent Supply Chain」、といった3つのイニシアティブで、製造業の“コトづくり”をサポートするという。

 これらについて、日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 インダストリーマーケティングマネージャーの鈴木靖隆氏は、「設計・エンジニアリング、生産、サービス、トランスフォームまでを支援できる」とする。

製造業の“コトづくり”を3つのイニシアティブでサポート
日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 インダストリーマーケティングマネージャーの鈴木靖隆氏

 このうちFactory of the Futureでは、「研究・開発、製品設計」「コネクテッドオペレーション」「設備保全サービス」といったテクノロジーやソリューションを提供。製品イノベーションにおけるシミュレーションの高度利用、設計プロセスの最適化へのAI活用、デジタルツインによるプロセスシミュレーション、ダウンタイムの削減、生産性向上、設備保全の最適化などを支援するという。

Factory of the Future

 その具体的な活用例としては、フォークリフトの生産などを行っている豊田自動織機を紹介した。同社では工場内の生産性と安全性の向上を目指して、Microsoft Azureを採用し、IT部門のリードでIoTによるデータ活用基盤を構築。グローバルの生産拠点をつないだ分析を実施しているという。

 また久野金属工業では、クラウドを活用した工場のIoT化に取り組んでいるとのことで、クラウドサービスによって、旧モニタリングシステムにデータベースや分析機能を導入。新たな装置や設備への投資をせず、既存の生産ラインを生かして廉価かつ早期にIoT化することに成功しており、生産能力を11%高めたという。

 このほかカーナビ製品を提供するアイシン・エィ・ダブリュでは、人間では不可避な見逃しや担当者の検出力のバラつきを深層学習によって解消した。同社では、Microsoftのクラウドを活用した開発支援システム「v.Platform」を利用し、早期にアプリケーションを導入することができたという。

豊田自動織機の事例
久野金属工業の事例
アイシン・エィ・ダブリュの事例

 2つ目のProducts as a Serviceでは、「コネクテッドプロダクト」「スマートプロビジョニング」「コネクテッドフィールドサービス」を提供。デジタルフィールドサービスやリモートアシスト、在庫最適化、サービスマンの作業効率化や生産性向上などを支援するとした。

Products as a Service

 この分野での活用例としては、コマツやアクア、ダイキン工業を紹介した。コマツは、未来の建設現場を実現するスマートコンストラクションのIoT基盤としてMicrosoft Azureを採用。アクアでは、コインランドリーの運営にIoTを活用している。またダイキン工業では、ユーザーサポートにおいてAIを活用した自動応答チャットを導入。AI故障診断サービスとして提供することで、どこでも、素早く問い合わせに対応することができるという。

コマツの事例
アクアの事例
ダイキン工業の事例

 3つ目のIntelligent Supply Chainでは、「ビジネス&オペレーションプランニング」「ソーシングプロキュアメント」「スマートロジスティクス」を提供。需要予測や多階層にまたがる在庫の最適化、プライシングの最適化、製品トラッキング、サプライチェーンの可視化やオーケストレーションなどを実現するとした。

Intelligent Supply Chain

 ここでは、Microsoft自身の事例を紹介している。Surfaceなどの同社のハードウェアは、設計はODMと一緒に行い、EMSで生産を行う体制を構築している。現在は、107カ国、3万店舗に、4万2000SKUの製品を供給しており、このサプライチェーンのDXにMicrosoft Azureを採用した。その結果、米国シアトルのサプライチェーンコントロールセンターから、仕入れ先、顧客までがエンドトゥエンドで可視化されているという。

 「価格とマージンに対するプレッシャーや、バーチャル化や分散化したサプライネットワーク、製品ライフサイクルの短縮化といった課題がある。従来のプロセスとシステムでは十分な対応が困難であり、DXが求められていた。現在、ひとつのデジタル化されたサプライチェーンに再構築され、1日に1TBのデータが発生しているが、これらのデータをもとに、可視性、予測性、リアルタイム性を実現し、サプライチェーンの最適化を図っている」とした。

Microsoft自身のDXの取り組み

 また、製造業のDX支援における他社との違いについても言及。「Microsoftでは、Azure Sphere、Azure Edge、Azure Stack、Microsoft Azureといったように、チップからクラウドまでのすべてのレイヤーでIoTサービスを提供することができる。またAIの民主化を進めており、Industrial IoT適用シナリオを用意し、これを多くの企業が採用できるようにしている。さらに、人を中心とした支援にも力を注いでおり、HoloLensとデジタルツインとの組み合わせによって、現場での働き方を支援。技術者による遠隔支援、空間プランニング、トレーニング、離れた場所にいる人の共同作業に代表されるコラボレーションなどを実現。製造業のファーストラインワーカーを支援していく」などとした。

Industrial IoT適用シナリオ

製造業向けの3つの新たな取り組み

 一方、製造業向けの3つの新たな取り組みについても説明した。

 ひとつは、知財リスクへの取り組みとして提供する「Azure IP Advantage」と「Shared IP Innovation Principles」である。「Microsoftには、新たな特許と意匠の権利は顧客に帰属するという考え方が根底にあり、特許の取得や補償を支援することになる」という。

製造業向けの3つの新たな取り組み
知財に対するMicrosoftの基本姿勢

 2つめは、製造業のDXを加速するための「デジタル・アドバイザリー・サービス(DAS)」と「サプライチェーン可視化ソリューション導入サービス」。DASでは、デジタルビジョンの支援やビジョンの具現化計画などを策定および実行する。さらに、サプライチェーン可視化ソリューションの導入支援により、ビジネス価値の創造につなげるという。

デジタル・アドバイザリー・サービス
サプライチェーン可視化ソリューション導入サービス

 3つめが、グローバルでの最新事例やソリューションに関するナレッジを取得するための「Azure IoT & AIハンズオントレーニング」である。ここでは、ドイツで開催されるハノーバーメッセ 2019への出展や、東京および大阪で開催する報告セミナーも含まれると説明した。