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2020年には国内ナンバーワンクラウドベンダーを目指したい――、日本マイクロソフト・平野拓也社長が宣言

 日本マイクロソフト株式会社は6日、同社2019年度(2018年7月~2019年6月)の経営方針について説明。日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「2020年には、日本のナンバーワンクラウドベンダーを目指す」と宣言した。

 前年度の方針説明では、「リーディングベンダー」という表現を用いていたが、今年は「ナンバーワン」という言葉を明確に打ち出した。この意欲的な目標宣言の背景には、今年に入ってからパブリッククラウドベンダーとして国内第2位になったこと、先行するAmazon Web Services(AWS)に比べて高い成長率を継続していることが背景にあるようだ。

日本マイクロソフトの平野拓也社長
2020年には日本のナンバーワンクラウドベンダーを目指す

AWSの2倍近い伸びを達成

 会見の冒頭には、米Microsoftが発表した2018年度(2017年7月~2018年6月)の業績について説明。

 「年間売上高は前年比14%増の1104億ドルとなった。(日本円で)約12兆円にあたり、初めて1000億ドルを達成している。コマーシャルクラウドの売上高は前年比56%増の230億ドル(2兆5000億円)になり、他社よりも速い勢いを継続している。AWSやsalesforce.comといったクラウドネイティブ企業より、われわれのクラウドの方が成長率が高い。第4四半期には、Azureが前年比89%増、Office 365は前年比38%増、Dynamics 365は前年比61%増となった。これはAWSよりも2倍近い伸びになっている」という。

グローバルでのクラウドモメンタム

 また日本についても、「グローバル以上の成長率を各カテゴリーで達成している。昨年の会見では、日経225の8割で当社のクラウドが利用されていると報告したが、今年は92%にまで上昇している」と述べた。

すべての事業本部が8四半期連続で予算を達成

 社長就任から3年目の節目を迎えた平野社長は、その3年間(2016年度から2018年度)の総成長金額が、2006年度から2016年度の総成長金額の2倍に達していることを示し、「日本におけるビジネスが成長しており、すべての事業本部において8四半期連続で予算を達成している。成長の要因は、企業変革の推進、働き方改革のリーディングカンパニー、クラウド+インテリジェントテクノロジーの成長の3点にある」などとした。

日本におけるビジネスの成長
成長の要因

 企業変革の推進では、「顧客の変革に加えて、日本マイクロソフト自身の変革を推進したことが大きい」とする。「当社は、WindowsやOfficeのライセンス販売からクラウドによるソリューション提案へ移行。対象もIT部門からユーザー部門へと広がり、一緒になって新たなビジネスモデルを考えるようになった。それにあわせてパートナーの関係が変わり、日本マイクロソフトの組織体制やオペレーションモデルも変えた」(平野社長)。

 また、「働き方改革のリーディングカンパニーとしての認知が高まり、経営層や政府、官公庁からも相談を数多くいただくようになった。クラウド+インテリジェントテクノロジーの成長においては、AI、MRなどの製品、テクノロジーが充実しており、エンタープライズユーザーからも信頼されるパートナーとして指名されるようになってきた」としている。

6つのドメインでソリューションを提供

 2019年度においては、「モダンワークプレイス」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクチャー」「データ&AI」に加えて、「モダンライフ」と「ゲーミング」を追加。6つのドメインにおいてソリューションを提供し、エクスペリエンスを生み、デジタルトランスフォーメーションを支援することを新年度の方針とした。

6つのドメインでソリューションを提供

 実は、「ゲーミング」は米国本社では昨年度も盛り込まれていたが、日本では今年度から明確に盛り込む格好になった。ここには、Xboxによるゲームコンソールビジネスだけでなく、クラウドやPCを活用したゲーミング体験などが含まれる。

 注目されるのは、新たに追加された「モダンライフ」だ。

 ここでは、生活のなかでいかにモダナイゼーションをしていくか、といった提案が中心になり、量販店を通じての販売といった直接的なコンシューマビジネスのほか、教育分野への提案など、B2B領域も関連することになる。ミレニアル世代および学生に向けた提案の強化も含まれるという。

モダンライフスタイル

 さらに、Surfaceによる取り組みも重要な要素だ。

 「日本におけるSurfaceの販売は好調であり、先ごろ発表したSurface Goの先行予約も相当強い数が出ている。過去に発売した歴代Surfaceのなかでは、1位、2位を争うほどだ。先週末からデモ機の展示が始まっている。これは、学生にも最適化したデバイスであると考えている」とした。

主要製品のサポート終了を見据えた施策も展開

 一方で、今後迎える主要製品のサポート終了についても言及した。

 2020年1月にはWindows Server 2008のサポートが終了になるほか、それに先立つ2019年7月には、SQL Server 2008のサポートも終了する。

 これについては、「データセンターモダナイゼーションとして、ミッションクリティカルシステムのAzureへの移行を促進する」とし、「Sap on Azureの取り組みに代表されるように、これまでオンプレミスで稼働していたものをクラウドに移行するといった提案を行っていく。ここでは、地方銀行のバンキングソリューションでも、クラウド化の流れが出ている。移行支援の取り組みは、パートナーとの協業による具体的なプランを8月8日に発表する」とした。

データセンターモダナイゼーション

 また、2020年1月のWindows 7のサポート終了、および2020年10月のOffice 2010のサポート終了に関しては、Microsoft 365とモダンデバイスの組み合わせによってクラウドの利用を促進することにより、働く環境のモダナイゼーションを推進していくことになる。

 「Windows 7のサポート終了時点では、Windows 10の利用率を90%にまで高めたい。また、Office 365は大手企業が先行しているが、2020年までに中小企業の数を相当数増やしたい。2018年秋からは、中小企業向けや地方都市での移行支援を行っていく」とした。

 ここでは、働き方改革もポイントになる。

 同社が掲げている「働き方改革Next」では、新たな取り組みとして、店頭や工場など働くファーストラインワーカー向け、生まれた時からITを活用しているミレニアル世代向け、文科省が9000億円を投資して推進している教育のICT化などを軸とした教育分野、といったところを新たなターゲットとし、「いつでも、どこでもフレキシブルな働き方」と「AIを活用し、個人と組織の働き方を分析、ポテンシャルを最大化」することを挙げた

働く環境のモダナイゼーション
働き方改革Next

 さらに2020年に向けた注力分野としては、「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」の3つのイノベーションを推進するという。

3つのイノベーションを推進

 インダストリーイノベーションでは、「少子高齢化や労働人口の減少に対応するためにも、クラウドとAIによるデジタルトランスフォーメーションが重要である」とし、製造、流通、ヘルスケア、政府・自治体、自動車、金融、メディア&コミュニケーション、教育の各分野を重点業種に挙げている。

 「業種に特化したソリューションを推進するための人材を採用しており、これらの人材を業種別営業組織に配置した。また業種別展開においては、パートナーとの連携によって、パートナーとのマッチングを強化していくことになる。今年度は、昨年度の学びを生かして、それを評価する役割を担う組織を設置。デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するデジタルアドバイザーの人材を2倍に増員する」とする。

 また、「政府向けのガバメントクラウドを2019年度に拡張していくことになる。2018年秋には具体的なプランを公表したい」と述べたほか、「クラウドを使い倒してもらうことや、納得できるソリューションを提供すること、要望に対してその期待を超える驚きを提供できるかが大切である」とした。

クラウドとAIによるデジタルトランスフォーメーション

社会変革にどう貢献できるかを考えていく

 加えて平野社長は、「全世界でコンピュータ化が促進されており、2020年までにスマートデバイスは200億台に増え、人々から1日1.5GBのデータが発信されることになる。また、スマートホームからは1日50GB、自動運転車からは1日5TB、スマートオフィスからは1日150TB、スタジアムからは1試合ごとに200TB、スマートファクトリーからは1日1PB、スマートシティからは1日250PBのデータが創出されることになる。そうした社会において、日本マイクロソフトは、社会変革にどう貢献できるかを考えていきたい」と話す。

 この社会変革への貢献については、具体的な取り組みとして、「AI for Good in Japan」を示し、「クラウド+AIで日本の社会変革に貢献する。特に、アクセシビリティ、災害対策、就学・就労支援といった取り組みを通じて課題解決にも取り組んでいくことになる」と説明した。

2020年には…
AI for Good in Japan

 企業文化として「Growth mindset(成長マインドセット)」が定着してきたことを示しながら、「常にお客さまを第一に考える(Customer Obsessed)」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「One Microsoft」の3点を重視していることをあらためて強調。

 「日本マイクロソフトは、これまでの成功体験にはとらわれず、場合によっては成功体験を否定することにも取り組んできた。リーダーシップについても、そうしたマインドを持っている人材を外部から採用している。一方で当社は、女性社員比率の成長率では世界のMicrosoftのなかで第2位になっており、これからも女性社員の絶対数を増やしたい。また社内が一丸となるだけでなく、米本社とのコラボレーションも強化してきた。働き方改革に関する日本からの要望を、製品のなかに取り込んでもらうといった成果も出ている」とした。

成長マインドセット

 さらに、「MicrosoftはソフトウェアをDNAとしている会社だが、多くの人々にリーチして、これらの人々がデジタルの力を利用することで、さまざまなことを達成してほしいと考えている。デジタル化が進むことは当社にとってチャンスといえるが、一方で責任も生まれる。全世界でコンピュータ化が進むなかで、5年前とは異なるコミットが当社には必要である。プライバシーやサイバーセキュリティへの取り組みに加えて、今後はAIに対する倫理観が大切になる。当社のAIについては、透明性や偏見を助長するものではないなど6つの原則を公表し、それに基づいて開発を進めたり、他社と協業してルールづくりを進めたりしている」などと述べた。