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マクニカがAI事業戦略を発表、「事業の3番目の柱に」

AI事業の統合ブランド「macnica.ai」を立ち上げ

 株式会社マクニカは24日、AI事業の統合ブランド「macnica.ai」を立ち上げ、AI事業を強化すると発表した。

 代表取締役社長の中島潔氏は、「AI事業をネットワーク機器、半導体に続く3番目の柱としたい。すでにAI関連のチップ事業では30億円の売上があるが、これを5年後に10倍の300億円とすることを目指す。既存半導体事業に比べ付加価値の高いビジネスができる」と述べ、AI事業増大に自信を見せた。

代表取締役社長の中島潔氏

 2019年1月には、インドを本社とするCrowdANALYTIXを買収した。同社のエンジニアに加え、2万人が参加するデータサイエンティストコミュニティと連携体制を取ることが可能となったことから、AIビジネス拡大のネックとなっていたデータサイエンティスト不足が解消。製造業、自動車(自動運転)、流通業、ヘルスケア、電気分野にフォーカスし、AIビジネスを進めていくとしている。

AI領域における統合ブランド“macnica.ai”を立ち上げ

 macnica.aiでは、1月の買収で関係会社化したCrowdANALYTIX社、フォーカスする業種分野に実績や知見を持つエコパートナー、自社のサービスを組み合わせ、1)フルカスタマイズによるAIプラットフォームの提供、2)AIモデル開発とAIモデル開発組み込み、3)DIY型AIモデル開発ツール、といった3つのソリューションを提供する。

 さらに、マクニカ自身の商社機能と技術力を生かした半導体やモジュール、ボード、自社製エッジ端末「SENSPIDER」、先進的なセンサー技術を持ったセンサーチップなどを提供するとのこと。

macnica.aiの全体像

 常務執行役員 事業戦略室 室長 森重憲氏は、「コンサルティングだけ、製品だけ、サービスだけといった企業とは異なり、企画立案からニーズに合致した技術開発、実証から実稼働に至るまで、お客さまとトータルにビジネスを進めていく体制、製品、技術を持っていることが最大の強み」とアピールした。

常務執行役員 事業戦略室 室長 森重憲氏

 CrowdANALYTIX社は、細かいモジュラー型AIを提供しており、これを組み合わせることで自社にフィットしたフルカスタマイズAIソリューションを開発できる。ワイシャツを例にした場合、「襟の形」「柄」「ボタン」といったパーツを組み合わせて、シャツを作り上げていくイメージだ。

 この個々のモジュラー型AIを開発するのが、2万人のデータサイエンティスト。複数のモジュールを並行開発できるので、迅速な開発スピードを実現する。

 前述のように、ターゲット分野は、CrowdANALYTIX社が米国などで実績を持つ流通分野、すでにニーズがあるヘルスケア分野、電気分野、製造業、自動車(自動運転)に絞り込み、ビジネスを展開していく計画。

CrowdANALYTIXの特徴

 米国では流通業に導入され、AIによる高精度画像分類を活用した、カテゴリごとに異なる属性情報を記録。1時間に最大100万SKUを処理するAPIを活用し、製品管理情報の精度が向上したことで、返品率の低下、顧客獲得スピード向上などの成果が上がったという。

 この成果を受けて、日本でもすでに実証実験が始まっている。福岡県に本社を持つ、郊外型総合小売業を展開するトライアルカンパニーでは、キャンペーンプランニングの実証実験を実施。店舗ごとの商品ミックスの最適化、顧客来店頻度の向上、購入商品点数向上などで成果が出ているという。

 また介護事業を展開するユニマット リタイアメント・コミュニティでは、被介護者自立支援向上、被介護者向けサービス向上、介護士の負担軽減などを目的に実証実験を実施した。

 製造業向けでは、AI×IoT導入支援サービスとして、予知保全、異常検知、最適化、不良原因分析、物体検知、外観検査自動化など、製造業の課題解決のためのワンストップソリューションを提供する。

 「最先端のセンシング技術、最適AIアルゴリズム、AIを実装したハードウェアなどを有しており、お客さまの課題に対して最適な技術を結びつけられるテクノロジーフィッティング能力を持っていることが、われわれの最大の強み。お客さまの課題に合致したハードウェアがない場合には、新たにハードウェア開発を行うこともできる」(取締役 イノベーション戦略事業本部本部長 原一将氏)。

 すでに15件を超える顧客への導入実績があり、一番多いのは工作機械/産業機械分野で、次が建設/住宅設備分野となっている。

 事例としては、工作機械へAIを実装することで、異常検知・劣化予測、製造ラインでは不良原因分析/最適化、検査工程では外観検査の自動化などを実現したものがある。今後は、工場全体をスマートファクトリーとするためのソリューション開発を進める計画だ。

 さらに自動運転車分野では、AI構築をトータルにサポートし、データ収集からアノテーション、モデリング、評価活用などすべてのサービスを提供する。マクニカ自身がデータ取得のための自動運転車「macnicar」を開発し、テストも行っているとした。